特徴
超長時間型。ピーク時間:0.8h。半減期
専門医コメント
半減期は、122時間と超長時間の抗不安薬
用法・用量
通常、成人には、ロフラゼプ酸エチルとして2mgを1日1〜2回に分割経口投与する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。
禁忌
2.1. ベンゾジアゼピン系薬剤に対して過敏症の既往歴のある患者。2.2. 急性閉塞隅角緑内障の患者[眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがある]。2.3. 重症筋無力症のある患者[筋弛緩作用により症状が悪化するおそれがある]。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
神経症・心身症の不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
効果・効能
1). 神経症における不安・神経症における緊張・神経症における抑うつ・神経症における睡眠障害。
2). 心身症(胃潰瘍・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 依存性(0.1%未満)、離脱症状(5%未満):連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、痙攣発作(0.1%未満)、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想(いずれも0.1〜5%未満)等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと〔8.2参照〕。
11.1.2. 刺激興奮、錯乱(いずれも頻度不明)。
11.1.3. 幻覚(頻度不明)。
11.1.4. 呼吸抑制(0.1%未満):呼吸機能が高度に低下している患者に投与した場合、呼吸抑制があらわれることがある〔9.1.4参照〕。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 精神神経系:(5%以上)眠気、(0.1〜5%未満)ふらつき、めまい、頭がボーッとする、頭痛、舌のもつれ、しびれ感、霧視、(0.1%未満)言語障害(構音障害等)、味覚倒錯、いらいら感、複視、耳鳴、不眠、(頻度不明)健忘。2). 消化器:(0.1〜5%未満)口渇、嘔気、便秘、食欲不振、腹痛、(0.1%未満)下痢、胃痛、口内炎、胸やけ、心窩部痛。
3). 肝臓:(0.1〜5%未満)ALT上昇、AST上昇、(頻度不明)肝機能障害、γ−GTP上昇、LDH上昇。
4). 血液:(0.1〜5%未満)好酸球増多、白血球減少、(頻度不明)貧血。5). 泌尿器:(0.1%未満)頻尿、残尿感。
6). 過敏症:(0.1〜5%未満)発疹、皮膚そう痒感。7). 骨格筋:(0.1〜5%未満)倦怠感、脱力感、易疲労感、筋弛緩。8). その他:(0.1〜5%未満)発赤、性欲減退、ウロビリノーゲン陽性、冷感、いびき。
慎重投与
1.心障害のある患者[症状が悪化する恐れがある]。
2.肝障害、腎障害のある患者[血中濃度が上昇する恐れがある]。3.脳器質的障害のある患者[作用が強く現れることがある]。4.高齢者。
5.乳児、幼児、小児。
6.衰弱患者[作用が強く現れる]。
7.中等度呼吸不全又は重篤な呼吸不全のある患者[症状が悪化する恐れがある]。
重要な基本的な注意
8.1. 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
8.2. 連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避ける(本剤の投与を継続する場合には、治療上の必要性を十分に検討する)〔11.1.1参照〕。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 心障害のある患者:症状が悪化するおそれがある。9.1.2. 脳器質的障害のある患者:作用が強くあらわれることがある。9.1.3. 衰弱患者:作用が強くあらわれる。
9.1.4. 中等度呼吸不全又は重篤な呼吸不全のある患者:症状が悪化するおそれがある〔11.1.4参照〕。
腎機能障害患者
腎機能障害患者:血中濃度が上昇するおそれがある。
肝機能障害患者
肝機能障害患者:血中濃度が上昇するおそれがある。
相互作用
本剤の活性代謝物の代謝には主に肝薬物代謝酵素CYP3A4が関与している〔16.4参照〕。
10.2. 併用注意:
1). 中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体(クロルプロマジン塩酸塩等)、バルビツール酸誘導体(フェノバルビタール等)等)[両剤の作用が増強されるおそれがある(中枢神経抑制剤のベンゾジアゼピン系薬剤は抑制性神経伝達物質であるGABA受容体への結合を増大し、GABAニューロンの機能を亢進させる;中枢神経抑制剤との併用で相加的な作用の増強を示す可能性がある)]。
2). モノアミン酸化酵素阻害剤[両剤の作用が増強されるおそれがある(不明)]。3). シメチジン[本剤の血中濃度が上昇するおそれがある(シメチジンが肝での代謝(酸化)を抑制して排泄を遅延させ、半減期を延長、血中濃度を上昇させるためと考えられている;この作用は特に肝で酸化されるベンゾジアゼピン系薬剤で起こりやすい)]。4). アルコール(飲酒)[本剤の作用が増強されることがある(エタノールとの併用で相加的な中枢抑制作用を示す;アルコールの血中濃度が高い場合は代謝が阻害され、クリアランスが低下し、半減期は延長する)]。
5). 四環系抗うつ剤(マプロチリン塩酸塩等)[併用中の本剤を急速に減量又は中止すると痙攣発作が起こるおそれがある(本剤の抗痙攣作用が、四環系抗うつ剤による痙攣発作の発現を抑えている可能性がある)]。
高齢者
少量から投与を開始するなど慎重に投与すること(運動失調等の副作用が発現しやすい)。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.5.1. 妊娠中に他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)の投与を受けた患者の中に、奇形を有する児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告がある。
9.5.2. 妊娠後期の女性にベンゾジアゼピン系薬剤を投与したとき、新生児に哺乳困難、嘔吐、活動低下、筋緊張低下、過緊張、嗜眠、傾眠、呼吸抑制・無呼吸、チアノーゼ、易刺激性、神経過敏、振戦、低体温、頻脈等を起こすことが報告されており、なお、これらの症状は、離脱症状あるいは新生児仮死として報告される場合もある(また、ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に黄疸増強を起こすことが報告されている)。9.5.3. 分娩前に連用した場合、出産後新生児に離脱症状があらわれることが、ベンゾジアゼピン系薬剤で報告されている。
授乳婦
授乳を避けさせること(ヒト母乳中へ移行し、新生児に嗜眠、体重減少等を起こすことがあり、また、黄疸増強する可能性がある)。
小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
過剰投与
13.1. 症状
本剤の過量投与時の主な症状は過度の傾眠で、昏睡を起こすことがある。13.2. 処置
本剤の過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には、使用前にフルマゼニルの使用上の注意を必ず読むこと。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
15.1.1. 投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニルを投与された(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)患者で、新たに本剤を投与する場合、本剤の鎮静・抗痙攣作用が変化、鎮静・抗痙攣作用が遅延するおそれがある。
15.1.2. 他のベンゾジアゼピン系薬剤で長期投与により耐性があらわれることが報告されている。
保管上の注意
室温保存。
保険給付上の注意・その他
本剤は厚生労働省告示第42号(平成30年3月5日付、平成18年厚生労働省告示第107号一部改正)に基づき、投薬量は1回30日分を限度とされている。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 有効成分(1錠中) 添加剤
メイラックス錠1mg 日局ロフラゼプ酸エチル1mg 乳糖水和物、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム
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3.2 製剤の性状
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販売名 剤形 色 外形
表 裏 側面
メイラックス錠1mg 素錠 白色 <<図省略>> <<図省略>> <<図省略>>
直径(mm) 厚さ(mm) 重量(g)
6.35 2.5 0.1
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薬効薬理
18.1 作用機序
本剤は消化管や肝で速やかに代謝され、活性代謝物であるM‐1及びM‐2がベンゾジアゼピン受容体に結合し、抑制性神経伝達物質GABAのシナプス伝達を増強する結果、抗不安作用等の中枢神経作用を発揮すると考えられる。
18.2 薬理作用
本剤はジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤に共通した中枢神経作用を有しているが、その作用強度や薬理学的プロフィールは他のベンゾジアゼピン系薬剤とは異なっている。鎮静作用、意識水準の低下、筋弛緩作用及び協調運動抑制作用は比較的弱い反面、抗痙攣作用や抗コンフリクト作用が強い。
18.2.1 ラット脳内ベンゾジアゼピン受容体への結合性
活性代謝物であるM‐1及びM‐2のベンゾジアゼピン受容体への結合能は、M‐1はジアゼパムの1/17であり、M‐2はジアゼパムとほぼ同等であった(in vitro、ラット)。
18.2.2 抗コンフリクト作用
抗コンフリクト作用は5mg/kgで認められ、その強度はジアゼパムの2倍、ロラゼパムの8倍であった(ラット)。
18.2.3 馴化静穏作用
嗅球摘出及び中脳縫線核破壊により誘発される攻撃行動(muricide)に対する抑制作用は、それぞれロラゼパムの1/6及び1/3で、ジアゼパムとほぼ同等であった(ラット)。
18.2.4 抗痙攣作用
抗ペンテトラゾール痙攣作用はロラゼパムと同等で、ジアゼパムの7倍であった(マウス)。
18.2.5 麻酔・睡眠増強作用
チオペンタール麻酔増強作用はロラゼパムの1/4で、ジアゼパムの1/2であった(マウス)。
ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬で特に強く発現するクロルプロチキセン睡眠増強作用は弱く、ニトラゼパムの1/14であった(マウス)。
18.2.6 筋弛緩作用・協調運動抑制作用
傾斜板法による筋弛緩作用はジアゼパムとほぼ同等であった(マウス)。回転棒法による協調運動抑制作用は極めて弱く、ロラゼパムの1/7で、ジアゼパムの1/4であった(マウス)。
18.2.7 運動系機能に及ぼす影響
脊髄多シナプス反射及び後根反射電位並びに除脳固縮による頸部筋放電に対する作用は、いずれもジアゼパムより弱かった(ネコ)。
薬物動態
16.1 血中濃度
健康成人(n=5)に本剤2mgを経口投与した時の薬物動態パラメータは表1のとおりであった。
表1 薬物動態パラメータ
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Tmax(hr) Cmax(ng/mL) T1/2(hr) AUC(ng・hr/mL)
0.8±0.3 182±21.5 122±58.0(59.2〜207) 4663±393
Mean±S.D.
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図 健康成人における平均血漿中濃度
<<図省略>>
連続投与時の血漿中濃度は1〜3週間程度で定常状態に到達すると考えられており、蓄積性は認められなかった。
16.2 吸収
16.2.1 生物学的利用度(吸収率)
健康成人(n=5)に本剤2mgを経口投与及び静脈内投与し、それらのAUC(M‐1注1)+M‐2注2))から求めた吸収率は69±8%であった(外国人データ)。
16.3 分布
16.3.1 蛋白結合
限外濾過法により測定したヒト血清蛋白との結合率は表2のとおりであった(in vitro)。
表2 蛋白結合率(ヒト血清)
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代謝物 濃度(ng/mL) 蛋白結合率(%)(平均±S.D.)
M‐1注1) 100 >99
500 96.0
M‐2注2) 100 98.6
500 94.3±6.7
M‐3注3) 100 96.7±0.8
注1)エチルエステル基が加水分解されたカルボン酸体
注2)M‐1の脱炭酸体
注3)M‐2の3位水酸化体
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16.4 代謝
本剤は経口投与後速やかに吸収され、消化管通過時や肝によって初回通過効果を受け、未変化体は血中から検出されず、活性代謝物M‐1注1)及びM‐2注2)として血中に存在した。M‐2注2)からM‐3注3)の代謝には、主にCYP3A4が関与している。[10.参照]
16.5 排泄
尿中には、投与後14日間で投与量の50%が排泄(同定)され、主要尿中代謝物はM‐3注3)の抱合体であった。
注1)エチルエステル基が加水分解されたカルボン酸体
注2)M‐1の脱炭酸体
注3)M‐2の3位水酸化体