特徴
力価:テトラミド60㎎≒ルジオミール75
専門医コメント
三環系抗うつ薬の抗コリン作用が問題となる
用法・用量
セチプチリンマレイン酸塩として、通常、成人1日3mgを初期用量とし、1日6mgまで漸増し、分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
禁忌
モノアミン酸化酵素<MAO>阻害剤投与中(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩、サフィナミドメシル酸塩)あるいはモノアミン酸化酵素<MAO>阻害剤投与中止後2週間以内の患者〔10.1参照〕。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
うつ病・うつ状態
効果・効能
うつ病・うつ状態。
効果・効能に関連する注意
抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること〔8.1−8.4、9.1.4、9.1.7、15.1.1参照〕。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. Syndrome malin(悪性症候群)(頻度不明):無動緘黙、強度筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合には、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと(本症発症時には、白血球増加や血清CK上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能低下がみられることがある)、なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎障害へと移行し、死亡した例が報告されている。11.1.2. 無顆粒球症(頻度不明):異常(前駆症状として発熱、咽頭痛、インフルエンザ様症状等があらわれる場合もある)が認められた場合には投与を中止すること〔8.8参照〕。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 循環器:(0.1〜5%未満)血圧降下、(0.1%未満)心悸亢進、頻脈等。2). 精神神経系:(0.1〜5%未満)眠気、めまい・ふらつき・立ちくらみ、倦怠感・脱力感、頭痛・頭重、不眠、不安・焦躁、構音障害、視調節障害、振戦、躁転、(0.1%未満)運動失調、苦悶、アカシジア、せん妄、幻覚等、(頻度不明)興奮。3). 過敏症:(0.1〜5%未満)発疹等。
4). 血液:(0.1〜5%未満)白血球減少、(0.1%未満)血小板減少、貧血等。
5). 消化器:(0.1〜5%未満)口渇、便秘、悪心・嘔吐、食欲不振、下痢等。6). 肝臓:(0.1〜5%未満)AST上昇・ALT上昇・γ−GTP上昇・Al−P上昇等。
7). その他:(0.1〜5%未満)排尿障害、浮腫。
発現頻度は、使用成績調査を含む。
重要な基本的な注意
8.1. うつ症状を呈する患者は希死念慮があり、自殺企図のおそれがあるので、このような患者は投与開始早期並びに投与量を変更する際には患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること〔5.効能又は効果に関連する注意の項、8.2−8.4、9.1.4、9.1.7、15.1.1参照〕。
8.2. 不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されているので、患者の状態及び病態の変化を注意深く観察するとともに、不安増悪、焦燥増悪、興奮増悪、パニック発作増悪、不眠増悪、易刺激性増悪、敵意増悪、攻撃性増悪、衝動性増悪、アカシジア増悪/精神運動不穏増悪、軽躁増悪、躁病増悪等が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行うこと〔5.効能又は効果に関連する注意の項、8.1、8.3、8.4、9.1.4−9.1.7、15.1.1参照〕。8.3. 自殺目的での過量服用を防ぐため、自殺傾向が認められる患者に処方する場合には、1回分の処方日数を最小限にとどめること〔5.効能又は効果に関連する注意の項、8.1、8.2、8.4、9.1.4、9.1.7、15.1.1参照〕。8.4. 家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること〔5.効能又は効果に関連する注意の項、8.1−8.3、9.1.4−9.1.7、15.1.1参照〕。
8.5. 投与量の急激な減少ないし投与の中止により、嘔気、頭痛、倦怠感、易刺激性、情動不安、睡眠障害等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。
8.6. 本剤を緑内障患者に投与する場合には、緑内障発作あるいはその前駆症状の有無についての問診を行い、さらに、眼圧の測定などにより、眼圧が亢進していないことなどを十分確認すること(また、投与中は定期的に眼圧の測定などを行うことが望ましい)〔9.1.1参照〕。
8.7. 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.8. 無顆粒球症があらわれることがあるので、定期的に血液検査を行うことが望ましい〔11.1.2参照〕。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 緑内障、排尿困難又は眼内圧亢進等のある患者:本剤は抗コリン作用を若干有するため、これらに影響を与える可能性がある〔8.6参照〕。9.1.2. 心疾患のある患者:心機能に影響を及ぼすことがある。9.1.3. てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者:痙攣を起こすことがある。
9.1.4. 躁うつ病患者:躁転、自殺企図があらわれることがある〔5.効能又は効果に関連する注意の項、8.1−8.4、9.1.7、15.1.1参照〕。9.1.5. 脳器質障害又は統合失調症素因のある患者:精神症状を増悪させることがある〔8.2、8.4、9.1.6参照〕。
9.1.6. 衝動性が高い併存障害を有する患者:精神症状を増悪させることがある〔8.2、8.4、9.1.5参照〕。
9.1.7. 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者:自殺念慮、自殺企図があらわれることがある〔5.効能又は効果に関連する注意の項、8.1−8.4、9.1.4、15.1.1参照〕。
腎機能障害患者
腎機能障害患者:代謝、排泄能の低下により、本剤の作用が増強することがある。(肝機能障害患者)
肝機能障害患者:代謝、排泄能の低下により、本剤の作用が増強することがある。
相互作用
10.1. 併用禁忌:
モノアミン酸化酵素<MAO>阻害剤(セレギリン塩酸塩<エフピー>、ラサギリンメシル酸塩<アジレクト>、サフィナミドメシル酸塩<エクフィナ>)〔2.禁忌の項参照〕[発汗、不穏、全身痙攣、異常高熱、昏睡等があらわれるおそれがあるので、MAO阻害剤の投与を受けた患者にセチプチリンマレイン酸塩を投与する場合には、少なくとも2週間の間隔をおき、また、セチプチリンマレイン酸塩からMAO阻害剤に切り替えるときは、2〜3日間の間隔をおくことが望ましい(三環系抗うつ剤では、MAO阻害剤による抗うつ剤の代謝阻害及び抗うつ剤のモノアミン取込み阻害作用によるアドレナリン受容体感受性の増大等によりこれらの症状が発現すると考えられている)]。10.2. 併用注意:
1). 中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等)[眠気、脱力感、倦怠感、ふらつき等があらわれやすい(相互に中枢神経抑制作用を増強する)]。2). アルコール[眠気、脱力感、倦怠感、ふらつき等があらわれやすい(アルコールは中枢神経抑制作用を有する)]。
3). 降圧剤(クロニジン塩酸塩、グアンファシン塩酸塩、グアナベンズ酢酸塩等)[降圧作用を減弱することがある(セチプチリンマレイン酸塩はα2−アドレナリン受容体遮断作用を有するため、α2−アドレナリン受容体に作用して降圧作用を示す薬剤と拮抗し、作用を減弱することがある)]。
高齢者
高齢者:少量から投与を開始するとともに、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に起立性低血圧、ふらつき等があらわれやすい)。9.8.1. 80歳以上の患者:血中濃度が高い傾向が報告されている。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物実験(ラット)において、乳汁中に移行することが認められている)。
小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
過剰投与
13.1. 症状
本剤の過量服用により、血圧低下、不整脈、精神障害、痙攣及び呼吸抑制等が発現するおそれがある。
13.2. 処置
過量投与時、特異的な解毒剤は知られていない(なお、強制利尿及び人工透析の有用性は確立していない)。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
15.1.1. 海外で実施された大うつ病性障害等の精神疾患を有する患者を対象とした、複数の抗うつ剤の短期プラセボ対照臨床試験の検討結果において、24歳以下の患者では、自殺念慮や自殺企図の発現のリスクが抗うつ剤投与群でプラセボ群と比較して高かった。なお、25歳以上の患者における自殺念慮や自殺企図の発現のリスクの上昇は認められず、65歳以上においてはそのリスクが減少した〔5.効能又は効果に関連する注意の項、8.1−8.4、9.1.4、9.1.7参照〕。
15.1.2. 主に50歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において、選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ剤を含む抗うつ剤を投与された患者で、骨折のリスクが上昇したとの報告がある。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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有効成分 1錠中 セチプチリンマレイン酸塩 1mg
添加剤 乳糖水和物、カルメロースカルシウム、ステアリン酸マグネシウム
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3.2 製剤の性状
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性状 白色の素錠
外形(mm) <<図省略>> <<図省略>> <<図省略>>
重量(mg) 90
識別コード MO130
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薬効薬理
18.1 作用機序
セチプチリンマレイン酸塩のうつ病・うつ状態に対する作用機序は、主に、シナプス前のα2‐アドレナリン受容体を遮断することによりシナプス間隙へのノルアドレナリン遊離を促進するとともに、脳内ノルアドレナリンの代謝回転を亢進させることにより中枢ノルアドレナリン作働性神経の活動度を増強することと考えられている。
18.2 脳内モノアミンの代謝回転亢進作用
ラットでのモノアミン合成阻害剤を用いた実験で、ノルアドレナリンの代謝回転を亢進することが示唆されている。
18.3 クロニジン拮抗作用
ラット大脳皮質膜分画及びモルモット摘出回腸標本を用いたin vitro実験並びにマウスを用いた実験においてクロニジン拮抗作用が認められ、シナプス前のα2‐アドレナリン受容体を遮断することが示唆されている。
18.4 モノアミン取込みに対する作用
ラットにおいて、脳内モノアミン取込み阻害作用を示さないことが、また、in vitro実験でも弱いノルアドレナリン取込み阻害作用しか示さないことが認められている。
18.5 レセルピン拮抗作用
マウスにおいて、レセルピン投与時に認められる眼瞼下垂に対しては拮抗作用を示したが、低体温には拮抗しないことが認められている。
18.6 抗セロトニン作用
ラットにおいて、セロトニンの前駆体である5‐ハイドロキシトリプトファン投与後の中枢作用並びにモルフィン禁断時の身体症状に拮抗する作用が認められている。
18.7 抗コリン作用
マウスにおいて、トレモリンに対し極めて弱い拮抗作用しか示さないことが、また、ウサギにおいて、フィゾスチグミン覚醒反応に対する影響も軽度である等、抗コリン作用は弱いことが認められている。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性6例に本剤1mgを単回経口投与した結果、投与1〜3時間後に最高血漿中濃度を示し、以後、二相性で低下した。この時のα相及びβ相の消失半減期は約2時間及び約24時間であった。
16.1.2 反復投与
健康成人男性6例に本剤1mgを単回経口投与したときの薬物動態パラメータを用い、本剤1mg×3回/日を反復経口投与したときの血漿中濃度をシミュレーションした。その結果、血漿中濃度が定常状態に到達する日数は6〜9日であると推定された。
16.5 排泄
健康成人男性6例に本剤3mgを単回経口投与した結果、投与後48時間までの尿中排泄率は約21%であり、未変化体(約11%)の他、主要代謝物は水酸化体、N‐オキシド体及び脱メチル化体であった。なお、未変化体のほとんどは抱合型であった。