特徴
多くの網膜疾患に関与するVEGF-AとA
専門医コメント
Ang-2を標的とする新薬であり、その投
用法・用量
〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉
ファリシマブ(遺伝子組換え)として6.0mg(0.05mL)を4週ごとに1回、通常、連続4回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後の維持期においては、通常、16週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。
〈糖尿病黄斑浮腫〉
ファリシマブ(遺伝子組換え)として6.0mg(0.05mL)を4週ごとに1回、通常、連続4回硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後は、投与間隔を徐々に延長し、通常、16週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、4週以上あけること。
〈網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫〉
ファリシマブ(遺伝子組換え)として1回あたり6.0mg(0.05mL)を硝子体内投与する。投与間隔は、4週以上あけること。
禁忌
2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 眼に感染又は眼周囲に感染のある患者、あるいは感染の疑いのある患者[眼内炎等の重篤な副作用が発現するおそれがある]。
2.3. 眼内に重度炎症のある患者[炎症が悪化するおそれがある]。
用法・用量に関連する注意
7.1. 〈効能共通〉臨床試験においては、両眼治療は行われていない。両眼に治療対象となる病変がある場合は、両眼同時治療の有益性と危険性を慎重に評価した上で本剤を投与する(なお、初回治療における両眼同日投与は避け、片眼での安全性を十分に評価した上で対側眼の治療を行う)。
7.2. 〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉導入期における投与回数については、疾患活動性の評価に基づき連続3回とすることも考慮すること。また、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性の場合、維持期においては、定期的に疾患活動性を評価し、疾患活動性を示唆する所見が認められた場合は、投与間隔を8週又は12週とすること等を考慮すること〔17.1.1、17.1.2参照〕。7.3. 〈糖尿病黄斑浮腫〉投与開始後、投与回数にかかわらず治療反応性に応じて投与間隔を徐々に延長することを考慮すること(その後は、定期的に疾患活動性を評価し、疾患活動性を示唆する所見が認められた場合は、投与間隔を4週、8週又は12週とすること等を考慮すること)〔17.1.3、17.1.4参照〕。7.4. 〈網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫〉4週ごとに1回投与で開始した後、治療反応性に応じて投与間隔を徐々に延長することを考慮すること(その後は、定期的に疾患活動性を評価し、疾患活動性を示唆する所見が認められた場合は、投与間隔を短縮すること等を考慮すること)〔17.1.5、17.1.6参照〕。
適応
中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫
効果・効能
1). 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性。
2). 糖尿病黄斑浮腫。
3). 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫。
効果・効能に関連する注意
5.1. 〈効能共通〉本剤による治療を開始するに際し、視力等の予後を考慮し、本剤投与の要否を判断すること。
5.2. 〈網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫〉不可逆的な虚血性視機能喪失の臨床的徴候が認められる網膜静脈閉塞症患者への投与は、避けることが望ましい。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 眼障害:眼内炎症(ぶどう膜炎、硝子体炎等)(1.2%)、網膜色素上皮裂孔(0.2%)、眼内炎(頻度不明)、裂孔原性網膜剥離及び網膜裂孔(頻度不明)があらわれることがある。本剤投与により眼内炎症があらわれた患者に対して再投与した場合に、眼内炎症が再発した症例が報告されている〔8.3.5参照〕。11.1.2. 脳卒中(0.3%)〔9.1.2、15.1.1参照〕。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
眼障害:(1%未満)眼圧上昇、硝子体浮遊物、高眼圧症、角膜擦過傷、眼痛、眼部不快感、結膜出血、白内障、硝子体剥離、眼充血、霧視、視力低下。
重要な基本的な注意
8.1. 網膜疾患に関する専門知識を有し、硝子体内注射の投与手技に関する十分な知識・経験のある眼科医のみが本剤を投与すること。
8.2. 硝子体内注射に際し使用される薬剤(消毒薬、麻酔薬、抗菌点眼薬及び散瞳薬等)への過敏症の既往歴について事前に十分な問診を行うこと。8.3. 硝子体内注射の際には、次記の点に注意しながら行うとともに、投与手技に起因する有害事象として結膜出血、眼圧上昇、眼痛、眼異物感、硝子体浮遊物が報告されているので注意すること。
8.3.1. 硝子体内注射は、無菌条件下で行うこと(手術用手指消毒を行い、滅菌手袋、ヨウ素系洗眼殺菌剤、滅菌ドレープ及び滅菌開瞼器等を使用すること)。8.3.2. 本剤投与前に、適切な麻酔と眼周囲の皮膚、眼瞼及び眼表面を消毒するための広域局所抗菌薬を投与すること。
8.3.3. 添付の専用フィルター付き採液針は、硝子体内注射には絶対に使用しないこと。
8.3.4. 過量投与を防ぐため、投与量が0.05mLであることを投与前に確認すること。
8.3.5. 眼内炎、眼内炎症、裂孔原性網膜剥離、網膜裂孔等が発現することがあるので、これらの事象を示唆する症状が認められた場合には、直ちに連絡するよう患者に指導すること〔11.1.1参照〕。
8.4. 硝子体内注射により眼圧を一過性に上昇させるおそれがあるので、本剤投与後、眼圧及び視神経乳頭血流を適切に観察及び管理すること〔9.1.1参照〕。8.5. 本剤の硝子体内注射後、一時的に視覚障害があらわれることがあるため、視機能が十分に回復するまで機械類の操作や自動車等の運転には従事させないよう注意すること。
8.6. 定期的に有効性を評価し、視力予後の改善が期待できない場合には漫然と投与を継続しないこと。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 緑内障、高眼圧症の患者〔8.4参照〕。
9.1.2. 脳卒中又は一過性脳虚血発作の既往歴等の脳卒中の危険因子のある患者〔11.1.2、15.1.1参照〕。
生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性:妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後少なくとも3カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること〔9.5妊婦の項参照〕。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(本剤は、そのVEGF阻害作用及びAng−2阻害作用から潜在的に催奇形性並びに胚毒性・胎児毒性を有する可能性が否定できない。カニクイザルを用いた胚・胎仔発生に関する試験(1又は3mg/kgを器官形成期に週1回、計5回、静脈内投与)において、母動物及び催奇形性を含む胚・胎仔への毒性は認められなかった)〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ヒト母乳中への移行は不明である)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
過剰投与
13.1. 症状
本剤の過量投与により、眼圧上昇するおそれがある。
13.2. 処置
過量投与が起こった際には眼圧を測定し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
適用上の注意
14.1. 薬剤調製時の注意
14.1.1. 本剤は投与前に外箱のまま室温に戻し、室温で保存した時間が24時間を超えないように使用すること。
14.1.2. 振とうしないこと。
14.1.3. バイアル中に変色や濁り、粒子が認められた場合は使用しないこと。14.2. 薬剤投与時の注意
14.2.1. 本剤は硝子体内にのみ投与すること。
14.2.2. 30ゲージ程度の眼科用針を使用すること。14.2.3. 1バイアルは1回(片眼)のみの使用とすること。(取扱い上の注意)
外箱開封後は遮光して保存すること。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
15.1.1. 動脈血栓塞栓事象:本剤投与により、全身のVEGF阻害に起因する動脈血栓塞栓事象が発現する可能性がある。新生血管を伴う加齢黄斑変性患者を対象とした第3相試験(各2試験の統合解析)における動脈血栓塞栓事象の発現率は本剤投与群全体で2.6%、糖尿病黄斑浮腫患者を対象とした第3相試験(各2試験の統合解析)における動脈血栓塞栓事象の発現率は本剤投与群全体で5.2%及び網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫患者を対象とした第3相試験(各2試験の統合解析)における動脈血栓塞栓事象の発現率は本剤投与群全体で3.8%であった〔9.1.2、11.1.2参照〕。15.1.2. 抗ファリシマブ抗体:新生血管を伴う加齢黄斑変性患者を対象とした第3相試験(TENAYA試験及びLUCERNE試験)において、本剤の52週間投与後までの薬剤誘発性抗ファリシマブ抗体陽性患者の割合は11.0%(77/697例)であり、眼内炎症の発現割合は、抗ファリシマブ抗体陽性<投与前の陽性例を含む>患者では10.7%(9/84例)、抗体陰性患者では1.3%(8/613例)であった。糖尿病黄斑浮腫患者を対象とした第3相試験(YOSEMITE試験及びRHINE試験)において、本剤の56週間投与後までの薬剤誘発性の抗ファリシマブ抗体陽性患者の割合は8.4%(105/1243例)であり、眼内炎症の発現割合は、抗ファリシマブ抗体陽性(投与前の陽性例を含む)患者では10.6%(12/113例)、抗体陰性患者では0.5%(6/1130例)であった。網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫患者を対象とした第3相試験(BALATON試験及びCOMINO試験)において、本剤の72週時までの薬剤誘発性の抗ファリシマブ抗体陽性患者の割合は10.9%(136/1244例)であり、眼内炎症の発現割合は、抗ファリシマブ抗体陽性(投与前の陽性例を含む)患者では7.6%(11/145例)、抗体陰性患者では1.5%(16/1099例)であった。
保管上の注意
2〜8℃保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 バビースモ硝子体内注射液120mg/mL
有効成分 1バイアル注1)(0.24mL)中
ファリシマブ(遺伝子組換え)注2) 28.8mg
1回投与量(0.05mL)中
ファリシマブ(遺伝子組換え)注2) 6.00mg
添加剤 1バイアル(0.24mL)中
L‐ヒスチジン 744μg
塩化ナトリウム 351μg
精製白糖 13.2mg
L‐メチオニン 251μg
ポリソルベート20 96μg
注射用水 適量
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注1)本剤は、過量充填している。
注2)本剤は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。
3.2 製剤の性状
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販売名 バビースモ硝子体内注射液120mg/mL
剤形 注射剤(バイアル)
性状 無色〜帯褐黄色の液
pH 5.4〜5.7
浸透圧比 0.9〜1.3(生理食塩水に対する比)
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薬効薬理
18.1 作用機序
ファリシマブは、VEGF‐A及びAng‐2に対するヒト化二重特異性モノクローナルIgG1抗体であり、眼疾患における血管新生や血管漏出に重要な役割を果たすVEGF‐A及びAng‐2を同時に阻害することで、新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫及び網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対して治療効果を発揮すると考えられている。
18.2 標的抗原に対する結合作用及び細胞アッセイによる中和活性
ファリシマブは、in vitroにおいて、VEGF‐A及びAng‐2に対して特異的に結合し、解離定数がそれぞれ3及び22nmol/Lの高親和性を示した。また、細胞アッセイにおいて、組換えヒトVEGF‐165によるヒト臍帯静脈内皮細胞増殖及びAng‐2によるTie‐2受容体リン酸化を、それぞれ濃度依存的に抑制したことから、VEGF‐A及びAng‐2を中和することが確認された。
18.3 動物モデルにおける作用
ファリシマブは、カニクイザルのレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを用いたin vivo試験において、血管新生及び血管透過性の亢進を抑制した。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
外国人の新生血管を伴う加齢黄斑変性患者に本剤0.5、1.5、3.0及び6.0mg注1)を単回硝子体内投与したとき、血漿中ファリシマブの薬物動態パラメータは次のとおりであった。
本剤単回硝子体内投与時の血漿中ファリシマブの薬物動態パラメータ
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投与量 Cmax(μg/mL) AUCinf(μg・day/mL) t1/2(day)
0.5mg(n=3) 〔0.0162〕<0.0215(81)[0.00746−0.0409]> 〔0.366、0.438〕<0.401(12)[0.366−0.438]> 〔7.29、15.4〕<11.3(51)[7.29−15.4]>
1.5mg(n=3) 〔0.0600〕<0.0539(37)[0.0316−0.0701]> 〔0.746〕<0.788(16)[0.683−0.929]> 〔6.02〕<7.89(52)[5.06−12.6]>
3.0mg(n=3) 〔0.160〕<0.135(40)[0.0725−0.171]> 〔2.13〕<2.20(21)[1.78−2.71]> 〔7.41〕<8.46(35)[6.16−11.8]>
6.0mg(n=2) 〔0.126注2)、0.248〕<0.187(46)[0.126−0.248]> 〔1.82、2.70〕<2.26(28)[1.82−2.70]> 〔6.76、7.71〕<7.24(9.3)[6.76−7.71]>
n:例数 〔 〕:中央値。ただし、個別データが記載されている場合は、n=2である。 < >:平均値(変動係数、%)[範囲]
注2)投与後初回の測定時点について欠測であった。
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注1)本剤の承認用量は6.0mgである。
16.1.2 反復投与
日本人の新生血管を伴う加齢黄斑変性患者(2例)及び糖尿病黄斑浮腫患者(4例)に本剤1.5及び6.0mg注1)を4週ごとに3回硝子体内投与したとき、血漿中ファリシマブ濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりであった。また、蓄積率の平均値は1.06〜1.65であった。
本剤反復硝子体内投与時の血漿中ファリシマブ濃度(平均値±標準偏差)
<<図省略>>
本剤反復硝子体内投与時の血漿中ファリシマブの薬物動態パラメータ
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投与量 Cmax(μg/mL) AUC0−28d(μg・day/mL) AUCinf(μg・day/mL) t1/2(day)
初回投与後
1.5mg n=6 0.196(0.138) n=6 1.94(0.823) n=5 2.23(0.883) n=5 6.40(2.48)
6.0mg n=6 0.225(0.0745) n=6 3.10(1.07) n=4 3.53(0.944) n=4 8.03(3.75)
3回目投与後
1.5mg n=6 0.0830(0.0341) n=6 1.03(0.341) n=3 1.37(0.253) n=3 9.92(2.42)
6.0mg n=6 0.195(0.0462) n=6 3.15(0.936) n=4 4.68(1.17) n=4 9.96(3.25)
n:例数 平均値(標準偏差)
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16.2 吸収
16.2.1 房水中濃度
新生血管を伴う加齢黄斑変性患者334例(日本部分集団26例を含む)に、本剤6.0mgを4週ごとに4回反復硝子体内投与したときの房水中ファリシマブ濃度(平均値±標準偏差)注3)は、4回目投与4週後において23.0±16.9μg/mL(31例)、8週後において2.04±2.30μg/mL(33例)、12週後において1.14±4.49μg/mL(29例)、16週後において0.0464±0.0497μg/mL(18例)であった。
糖尿病黄斑浮腫患者628例(日本部分集団40例を含む)に、本剤6.0mgを4週ごとに4回反復硝子体内投与したときの房水中ファリシマブ濃度(平均値±標準偏差)注3)は、4回目投与4週後において12.2±10.4μg/mL(固定投与群、26例)及び15.7±12.4μg/mL[personalized treatment interval(PTI)投与群、29例]であり、4回目投与8週後において2.12±2.49μg/mL(PTI投与群、15例)であった。
注3)房水サンプルは追加で同意を取得した患者から採取した。