特徴
チモロール(β遮断薬)とブリンゾラミド(
専門医コメント
点眼回数および種類が減るため、副作用の頻
用法・用量
1回1滴、1日2回点眼する。
禁忌
2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 気管支喘息又はその既往歴のある患者、気管支痙攣又は重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者[喘息発作の誘発・喘息発作増悪がみられるおそれがある]〔11.1.2参照〕。
2.3. コントロール不十分な心不全、洞性徐脈、房室ブロック<2・3度>又は心原性ショックのある患者[これらの症状を増悪させるおそれがある]〔11.1.3参照〕。
2.4. 重篤な腎障害のある患者〔9.2.1参照〕。
腎機能用量
CCr<30・透析:禁忌(重篤な腎障害のある患者では、ブリンゾラミド及びその代謝物は主に腎より排泄されるため、排泄遅延により副作用があらわれるおそれがある)
適応
緑内障、高眼圧症(他の緑内障治療薬が効果不十分な場合)
効果・効能
次の疾患で、他の緑内障治療薬が効果不十分な場合:緑内障、高眼圧症。
効果・効能に関連する注意
単剤での治療を優先すること。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 眼類天疱瘡(頻度不明):結膜充血、角膜上皮障害、乾性角結膜炎、結膜萎縮、睫毛内反、眼瞼眼球癒着等が発現することがある。11.1.2. 気管支痙攣、呼吸困難、呼吸不全(いずれも頻度不明):β−受容体遮断による気管支平滑筋収縮作用により、気管支痙攣、呼吸困難、呼吸不全があらわれることがある〔2.2参照〕。
11.1.3. 心ブロック、うっ血性心不全、心停止(いずれも頻度不明):β−受容体遮断による陰性変時・変力作用により、心ブロック、うっ血性心不全、心停止があらわれることがある〔2.3、9.1.1、9.1.2参照〕。11.1.4. 脳虚血、脳血管障害(いずれも頻度不明)。11.1.5. 全身性エリテマトーデス(頻度不明)。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 眼:(1〜5%未満)眼刺激、点状角膜炎、(0.1〜1%未満)霧視、角膜炎、結膜充血、眼痛、眼乾燥、眼そう痒症、羞明、(頻度不明)眼異物感、視力低下、視力障害、角膜びらん、角膜上皮障害、眼瞼炎(アレルギー性眼瞼炎を含む)、眼瞼下垂、眼脂、角膜知覚低下、*眼底黄斑部浮腫、*眼底黄斑部混濁[*:無水晶体眼又は眼底に病変のある患者等に長期連用した場合]、複視、結膜炎(アレルギー性結膜炎を含む)、結膜浮腫、眼瞼浮腫、眼不快感、疲れ目、眼瞼辺縁痂皮、眼べとつき感、流涙、前房フレア、眼充血、強膜充血、眼瞼紅斑、角膜浮腫。
2). 循環器:(頻度不明)動悸、徐脈等の不整脈、低血圧、失神、浮腫、レイノー現象、四肢冷感、血圧低下、血圧上昇。
3). 精神神経系:(頻度不明)頭痛、めまい、不眠症、うつ病、重症筋無力症増悪、悪夢、感覚異常。
4). 消化器:(頻度不明)悪心、口渇、下痢、消化不良、口内乾燥、上腹部痛、腹痛。
5). 皮膚:(頻度不明)発疹、脱毛症、皮膚炎、蕁麻疹、紅斑。6). その他:(1〜5%未満)味覚異常、(0.1〜1%未満)異常感、頭位性回転性めまい、咳嗽、けん怠感、血中乳酸脱水素酵素増加、血中カリウム増加、白血球数減少、(頻度不明)不快、胸部圧迫感、脱力感、耳鳴、鼻炎、胸痛、呼吸困難、咽頭炎、緊張亢進、腎疼痛、疲労、過敏症、筋肉痛、鼻出血、感覚鈍麻、赤血球数減少。
重要な基本的な注意
8.1. 本剤は点眼後、全身的に吸収されるため、スルホンアミド系薬剤全身投与時と同様の副作用又はβ−遮断剤全身投与時と同様の副作用があらわれるおそれがあるので注意すること。
8.2. 縮瞳剤からチモロールマレイン酸塩製剤に切り替えた場合、縮瞳作用の消失に伴い、屈折調整を必要とすることがあることから、本剤投与の際も注意すること。8.3. 本剤の点眼後、一時的に目がかすむことがあるので、機械類の操作や自動車等の運転には注意させること。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 肺高血圧による右心不全のある患者:肺高血圧症による右心不全の症状を増悪させるおそれがある〔11.1.3参照〕。
9.1.2. うっ血性心不全のある患者:うっ血性心不全の症状を増悪させるおそれがある〔11.1.3参照〕。
9.1.3. 糖尿病性ケトアシドーシス及び代謝性アシドーシスのある患者:アシドーシスによる心筋収縮力の抑制を増強するおそれがある。
9.1.4. コントロール不十分な糖尿病のある患者:血糖値に注意すること(低血糖症状をマスクすることがある)。
9.1.5. 角膜障害(角膜内皮細胞減少等)のある患者:安全性は確立していない(角膜内皮細胞数の減少により角膜浮腫の発現が増加する可能性がある)。9.1.6. 急性閉塞隅角緑内障の患者:本剤を用いる場合には、薬物治療以外に手術療法などを考慮すること。
腎機能障害患者
9.2.1. 重篤な腎障害のある患者:投与しないこと(ブリンゾラミド及びその代謝物は、主に腎より排泄されるため、排泄遅延により副作用があらわれるおそれがある)〔2.4参照〕。
肝機能障害患者
肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。
相互作用
本剤の配合成分であるブリンゾラミドは、主としてCYP3A4によって代謝され、またCYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9によっても代謝される。一方の配合成分であるチモロールは、主としてCYP2D6によって代謝される。10.2. 併用注意:
1). アドレナリン、ジピベフリン塩酸塩[散瞳作用が助長されたとの報告がある(機序不明)]。
2). カテコールアミン枯渇剤(レセルピン等)[交感神経系に対し過剰の抑制を来すことがあり、低血圧、徐脈を生じ、眩暈、失神、起立性低血圧を起こすことがある(β−遮断作用を相加的に増強する可能性がある)]。
3). β−遮断剤<全身投与>(アテノロール<全身投与>、プロプラノロール塩酸塩<全身投与>、メトプロロール<全身投与>)[眼圧下降あるいはβ−遮断剤の全身的な作用が増強されることがある(作用が相加的にあらわれることがある)]。4). カルシウム拮抗剤(ベラパミル塩酸塩、ジルチアゼム塩酸塩)[房室伝導障害、左室不全、低血圧を起こすおそれがある(相互に作用が増強される)]。5). ジギタリス製剤(ジゴキシン、ジギトキシン)[心刺激伝導障害<徐脈・房室ブロック等>があらわれるおそれがあるので、心機能に注意する(相加的に作用(心刺激伝導抑制作用)を増強させる)]。
6). CYP2D6阻害作用を有する薬剤(キニジン、選択的セロトニン再取り込み阻害剤)[β−遮断作用<例えば心拍数減少・徐脈>の増強が報告されている(チモロールの代謝酵素であるP450(CYP2D6)を阻害し、チモロールの血中濃度が上昇する可能性がある)]。
7). 炭酸脱水酵素阻害剤<全身投与>(アセタゾラミド<全身投与>等)[炭酸脱水酵素阻害剤の全身的な作用に対して相加的な作用を示す可能性があるので、異常が認められた場合には、投与を中止すること(作用が相加的にあらわれる可能性がある)]。8). アスピリン<大量投与>[本剤を大量のアスピリンと併用すると、双方又は一方の薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止すること(炭酸脱水酵素阻害剤の血漿蛋白結合と腎からの排泄を抑制し、炭酸脱水酵素阻害剤は血液のpHを低下させ、サリチル酸の血漿から組織への移行を高める可能性がある)]。
9). オミデネパグ イソプロピル[チモロールマレイン酸塩併用例で結膜充血等の眼炎症性副作用の発現頻度の上昇が認められた(機序不明)]。
高齢者
一般に生理機能が低下している。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(ブリンゾラミドでは、動物実験で胎盤を通過することが報告されている。また、チモロールマレイン酸塩では、動物実験で器官形成期のラットに500mg/kg/日を経口投与した場合に化骨遅延、マウスに1000mg/kg/日又はウサギに200mg/kg/日を経口投与した場合に死亡胎仔数増加が認められている)。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ブリンゾラミドでは、動物実験で乳汁中に移行することが報告されており、チモロールマレイン酸塩では、ヒト母乳中へ移行することがある)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
患者に対し次の点に注意するよう指導すること。
・ 使用時、キャップを閉じたままよく振ってからキャップを開けて点眼すること。・ 薬液汚染防止のため、点眼のとき、容器の先端が直接目に触れないように注意すること。
・ 患眼を開瞼して結膜嚢内に点眼し、1〜5分間閉瞼して涙嚢部を圧迫させた後、開瞼すること。
・ 他の点眼剤を併用する場合には、少なくとも10分以上間隔をあけてから点眼すること。
・ 本剤に含まれているベンザルコニウム塩化物は、ソフトコンタクトレンズに吸着されることがあるので、点眼時はコンタクトレンズをはずし、15分以上経過後装用すること。
取扱い上の注意
外箱開封後は遮光して保存すること。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 アゾルガ配合懸濁性点眼液
有効成分 ブリンゾラミド/日局チモロールマレイン酸塩
1mL中含量 ブリンゾラミド10mg/日局チモロールマレイン酸塩6.8mg(チモロールとして5mg)
添加剤 ベンザルコニウム塩化物液、カルボキシビニルポリマー、チロキサポール、エデト酸ナトリウム水和物、D‐マンニトール、塩化ナトリウム、pH調節剤2成分
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3.2 製剤の性状
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販売名 アゾルガ配合懸濁性点眼液
pH 6.7〜7.7
浸透圧比 0.9〜1.2(0.9%生理食塩液に対する比)
性状 白色〜微黄白色の無菌懸濁性点眼液
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薬効薬理
18.1 作用機序
〈ブリンゾラミド〉
炭酸脱水酵素(CA)は多くの全身組織に存在し、CO2の加水反応及び炭酸の脱水という可逆性の反応を触媒する。ヒトの眼には複数の炭酸脱水酵素アイソザイムが存在するが、ブリンゾラミドは最も活性の高いCA‐IIを選択的に阻害する。ブリンゾラミドは眼の毛様体中のCA‐IIを阻害し、HCO3−の生成速度を低下させ、それに伴い、Na+及び水の後房への輸送を抑えることにより房水の分泌を抑制し、その結果眼圧を下げると考えられている。
〈チモロールマレイン酸塩〉
サルにおけるチモロールマレイン酸塩の眼圧下降作用は主に房水産生の抑制によることが示唆されている。
18.2 薬理作用
〈ブリンゾラミド〉
18.2.1 眼圧下降作用
レーザー線維柱帯形成術によって高眼圧症を誘発された12匹のカニクイザルにおいて、ブリンゾラミド1%懸濁液を1日2回点眼したところ、投与1、3、6及び12時間後の眼圧は24.7%、35.8%、26.5%及び23.5%下降した。
18.2.2 炭酸脱水酵素阻害作用
本剤はII型炭酸脱水酵素(CA‐II)に親和性が高く、I型炭酸脱水酵素に比べ約95倍の結合能を示した。
〈チモロールマレイン酸塩〉
18.2.3 眼圧下降作用
ウサギにおけるα‐キモトリプシン惹起高眼圧及び水負荷による眼圧上昇試験において、チモロールマレイン酸塩の点眼は有意に眼圧上昇を抑制することが認められている。
18.2.4 β‐受容体遮断作用
ラット、イヌ、ネコにおいてイソプロテレノール(イソプレナリン)による心拍数、心筋収縮力及び心拍出量の増加はチモロールマレイン酸塩の静注、経口投与により著明に抑制され、その効果はプロプラノロールより3倍及び10倍強い。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 反復投与
(1)国内で実施された臨床試験(優越性試験)
日本人患者にチモロール0.5%点眼液を1日2回4週間点眼した後、本剤又はチモロール0.5%点眼液を1回1滴、1日2回8週間点眼したとき、点眼8週間後の血漿中チモロール濃度は本剤群(14例)で点眼前0.317ng/mL、点眼45分後1.23ng/mL、チモロール0.5%点眼液群(15例)で点眼前0.212ng/mL、点眼45分後1.03ng/mLであった。
(2)国内で実施された臨床試験(長期投与試験)
日本人患者(33例)に本剤を1回1滴、1日2回52週間点眼したとき、点眼52週間後の赤血球中ブリンゾラミド濃度(点眼前)は23.3μmol/Lであった。
また、点眼52週間後に主代謝物であるN‐デスエチルブリンゾラミド(点眼前)が33例中32例に検出され、その赤血球中濃度は3.20μmol/Lであった。
(3)海外で実施された臨床試験(薬物動態試験)
血漿中チモロール:
外国人健康被験者に本剤又はチモロール0.5%点眼液を1回1滴、1日2回13週間点眼したとき、点眼13週間後のCmaxは本剤群(23例)で0.824ng/mL、チモロール0.5%点眼液群(26例)で1.13ng/mLであった。
また、点眼13週間後のTmaxは本剤群(23例)で0.79時間、チモロール0.5%点眼液群(26例)で1.11時間であった。
血漿中チモロール濃度の推移
<<図省略>>
赤血球中ブリンゾラミド:
外国人健康被験者にブリンゾラミド1mgを2週間経口投与した後、本剤又はブリンゾラミド1%点眼液を1回1滴、1日2回13週間点眼したとき、点眼13週間後のブリンゾラミド濃度(点眼前)は本剤群(23例)で18.4μmol/L、ブリンゾラミド1%点眼液群(26例)で17.2μmol/Lであった。
また、赤血球中N‐デスエチルブリンゾラミド濃度(点眼前)は本剤群(23例)で1.57μmol/L、ブリンゾラミド1%点眼液群(26例)で1.63μmol/Lであった。
赤血球中ブリンゾラミド濃度の推移
<<図省略>>