特徴
α1受容体のサブタイプなし。
専門医コメント
前立腺肥大症への適応があるαブロッカー。
用法・用量
〈本態性高血圧症、腎性高血圧症、褐色細胞腫による高血圧症〉テラゾシンとして通常、成人1日0.5mg(1回0.25mg1日2回)より投与を始め、効果が不十分な場合は1日1〜4mgに漸増し、1日2回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は8mgまでとする。〈前立腺肥大症に伴う排尿障害〉
テラゾシンとして通常、成人1日1mg(1回0.5mg1日2回)より投与を始め、1日2mgに漸増し、1日2回に分割経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。
禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
本態性高血圧症、腎性高血圧症、褐色細胞腫による高血圧症、前立腺肥大症に伴う排尿障害
効果・効能
1). 本態性高血圧症。
2). 腎性高血圧症。
3). 褐色細胞腫による高血圧症。
4). 前立腺肥大症に伴う排尿障害。
効果・効能に関連する注意
〈前立腺肥大症に伴う排尿障害〉本剤による治療は原因療法ではなく、対症療法であることに留意し、本剤投与により期待する効果が得られない場合には手術療法等、他の適切な処置を考慮すること。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 意識喪失(頻度不明):血圧低下に伴う一過性意識喪失等があらわれることがある。
11.1.2. 肝機能障害(0.1%未満)、黄疸(頻度不明):AST上昇、ALT上昇、ALP上昇、LDH上昇等を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがある。発現頻度は、再審査結果を含む。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(0.1〜5%未満)発疹、(0.1%未満)そう痒、(頻度不明)血管浮腫。
2). 精神神経系:(0.1〜5%未満)めまい、頭痛、倦怠感、脱力感、発汗、不眠、冷感、肩こり、(0.1%未満)眠気、口渇、しびれ。
3). 循環器:(0.1〜5%未満)立ちくらみ、動悸、浮腫、不整脈(期外収縮、心房細動等)、胸痛、(0.1%未満)低血圧、起立性低血圧、頻脈。4). 肝臓:(0.1〜5%未満)ALT上昇、AST上昇、ALP上昇、LDH上昇、総ビリルビン上昇。
5). 消化器:(0.1〜5%未満)腹痛、下痢、便秘、悪心、嘔吐、(0.1%未満)食欲不振、消化不良。
6). 泌尿器:(0.1〜5%未満)頻尿、(0.1%未満)尿失禁。7). 腎臓:(0.1〜5%未満)BUN上昇、(0.1%未満)血中クレアチニン上昇。
8). その他:(0.1〜5%未満)ほてり、鼻閉、息切れ、目違和感、抗核抗体陽性、(0.1%未満)貧血、(頻度不明)インポテンス、羞明。
慎重投与
1.重篤な肝機能障害・重篤な腎機能障害のある患者[血中濃度が上昇する恐れがある]。
2.ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤<PDE5阻害剤>服用中の患者。3.高齢者。
重要な基本的な注意
8.1. 起立性低血圧があらわれることがあるので、臥位のみならず立位又は坐位で血圧測定を行い、体位変換による血圧変化を考慮し、坐位にて血圧をコントロールすること。
8.2. 投与初期又は用量の急増時等に、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛等があらわれることがあるので、その際は仰臥位をとらせるなどの適切な措置を講ずること(また、必要に応じて対症療法を行うこと)。
8.3. 降圧作用に基づくめまい等があらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. アレルギー体質の患者:副作用発現率が高くなる傾向がある。(腎機能障害患者)
9.2.1. 重篤な腎機能障害のある患者:血中濃度が上昇するおそれがある。(肝機能障害患者)
9.3.1. 重篤な肝機能障害のある患者:血中濃度が上昇するおそれがある。
相互作用
10.2. 併用注意:
1). 降圧作用を有する他の薬剤[降圧作用が増強することがあるので、減量するなど適切な処置を行うこと(相加的に降圧作用を増強させる)]。2). ホスホジエステラーゼ5阻害剤<PDE5阻害剤>(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)[症候性低血圧があらわれるおそれがあるので、本剤を低用量から投与開始すること(血管拡張作用を有するので、併用により降圧作用を増強させるおそれがある)]。
高齢者
低用量(例えば1回0.25mg、1日2回)から投与を開始するなど、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に、過度の降圧は好ましくないとされている(脳梗塞等が起こるおそれがある))。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ラット、ウサギ)で母動物に体重増加抑制等の一般状態の悪化が認められる実験条件では、胚致死など胎仔への影響も確認されている)。
授乳婦
授乳しないことが望ましい(動物実験(ラット)で母動物の血中濃度よりも高濃度で本剤の乳汁移行が認められている)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
過剰投与
13.1. 症状
過量投与時、過度の血圧低下を起こす可能性がある。
13.2. 処置
過量投与時、血液透析は本剤の除去に有効ではない。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
類似化合物(プラゾシン塩酸塩)で腎及びその他の動脈狭窄のある高血圧症、脚部及びその他の動脈瘤のある高血圧症等の血管障害のある高血圧症患者で、急性熱性多発性関節炎がみられた1例の報告がある。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
ラットに250mg/kg/日(臨床最大用量の約1800倍に相当)を2年間経口投与した試験で、雄のみに良性副腎髄質腫瘍の発生頻度が対照群に比し高いとの報告がある。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 バソメット錠1mg
有効成分(1錠中) テラゾシン塩酸塩水和物(テラゾシンとして1mg)
添加剤 ポビドン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、乳糖水和物
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3.2 製剤の性状
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販売名 バソメット錠1mg
性状・剤形 白色・素錠(割線入り)
外形 <<図省略>> <<図省略>>
<<図省略>>
識別コード MCI 063
サイズ 直径(mm)7.0
厚さ(mm)2.9
重量(mg)150
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薬効薬理
18.1 作用機序
シナプス後α1受容体を選択的に遮断し、末梢血管抵抗、尿道抵抗を減少することにより降圧作用、排尿障害改善作用を示す。
18.2 α1受容体遮断作用
イヌ大動脈、脳を用いたin vitro受容体結合実験において、本剤はα1受容体を選択的に遮断し、シナプス前のα2受容体遮断作用は著しく弱かった。このことから、シナプス前のα2受容体を介するノルアドレナリン放出のネガティブフィードバック機構を阻害することなく、末梢血管を拡張させ、ノルアドレナリンの過剰放出を起こしにくいと考えられた。
また、ヒト摘出前立腺を用いたin vitro結合実験においても選択的にα1受容体を遮断することが報告されている。
18.3 降圧作用
18.3.1 高血圧自然発症ラット、副腎性(DOC‐salt)高血圧ラット、腎性高血圧ラット、腎性高血圧イヌのいずれにおいても、単回経口投与により明らかな降圧作用を示し、その作用は持続的であった。
18.3.2 高血圧自然発症ラット、腎性高血圧イヌにおいて、長期反復経口投与により本剤は安定した降圧作用を示し、作用に耐性がないことが認められた。
18.4 前立腺収縮抑制作用
ヒト摘出前立腺を用いたノルアドレナリンによる収縮反応を抑制するin vitro実験において、本剤はこの収縮反応に対し競合的に拮抗することが認められた。
18.5 その他
18.5.1 高血圧自然発症ラット、腎性高血圧イヌ及び本態性高血圧症患者において、全末梢血管抵抗の減少による降圧作用が認められた。また、心拍出量や脈拍数に与える影響は少なかった。
18.5.2 本態性高血圧症患者において体位変換による血圧の変化に対し影響を及ぼさなかった。
薬物動態
16.1 血中濃度
健康成人(6例)にテラゾシン塩酸塩水和物として0.5〜2mgを単回経口投与したときの血中濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりである。
<<図省略>>
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パラメータ\投与量 0.5mg(n=6) 1.0mg(n=6) 2.0mg(n=6)
tmax(h) 0.83±0.26 1.00±0.32 1.00±0.63
Cmax(ng/mL) 17.3±3.4 40.4±9.8 67.1±22.9
t1/2 α相(h) 2.01±0.43 2.74±0.32 1.80±1.09
t1/2 β相(h) 12.76±5.43 18.70±10.60 10.11±2.67
AUC(ng・h/mL) 137.1±26.3 404.1±131.3 580.3±106.1
平均値±S.D.
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16.3 分布
血漿蛋白結合率は79〜94%であった(in vitro、限外ろ過法)。
16.4 代謝
健康成人(12例)にテラゾシン塩酸塩水和物2mgを経口投与したとき、尿中代謝物としてテラゾシンのN‐グルクロン酸抱合体、PAD、HG‐PAD、DD及び6H‐TRZが検出された。
16.5 排泄
健康成人(12例)にテラゾシン塩酸塩水和物2mgを経口投与したとき、尿中には投与後24時間までに未変化体として約12.9%、N‐グルクロン酸抱合体等の代謝物として約12.4%が排泄された。また、健康成人(6例)にテラゾシン塩酸塩水和物0.5〜2mgを経口投与したとき、投与72時間後までの尿中未変化体排泄率は投与量の13.5〜20.5%であった。
外国人のデータでは、ヒトに14C‐テラゾシン塩酸塩水和物1mgを経口投与したとき、投与後168時間までに94.4%が排泄され、うち尿中へは38.8%、糞中へは55.6%が排泄された。