Antaa DI

drug

ウプトラビ錠0.2mg

特徴

  • プロスタサイクリン受容体に作用し血管拡張

専門医コメント

特発性肺動脈性肺高血圧症の病状悪化および

用法・用量

通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。なお、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。

禁忌

2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。

2.2. 重度肝障害患者〔9.3.1、16.6.2参照〕。2.3. 肺静脈閉塞性疾患を有する肺高血圧症の患者[本剤の血管拡張作用により、肺水腫を誘発するおそれがある]。

用法・用量に関連する注意

7.1. 投与初期に頭痛、下痢等の副作用が多く報告されているため、患者の状態を十分観察しながら慎重に用量の漸増を行うこと。

7.2. 忍容性に問題があり減量する場合は、原則として1回0.2mgずつ漸減すること(減量後に再増量する場合は、再増量までに8日以上の間隔をあけ、忍容性を確認しながら漸増すること)。

7.3. 3日以上投与を中断した場合、再開時には中断前より低い用量からの投与を考慮すること。

7.4. 投与を中止する場合は、症状の増悪に留意しながら投与量を漸減すること。7.5. 中等度肝障害患者には、1日1回に減量して投与を開始し、投与間隔や増量間隔の延長、最高用量の減量を考慮すること〔9.3.2、16.6.2参照〕。

腎機能用量

30≦CCr<60:腎機能正常者と同じ

CCr<30:慎重投与

透析患者の使用経験はない

適応

肺動脈性肺高血圧症

効果・効能

1). 肺動脈性肺高血圧症。

2). 外科的治療不適応の慢性血栓塞栓性肺高血圧症又は外科的治療後に残存した慢性血栓塞栓性肺高血圧症・外科的治療後に再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症。

効果・効能に関連する注意

5.1. 〈効能共通〉本剤の使用にあたっては、最新の治療ガイドラインを参考に投与の要否を検討すること。

5.2. 〈外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症〉慢性血栓塞栓性肺高血圧症のWHO機能分類クラス1及び慢性血栓塞栓性肺高血圧症のWHO機能分類クラス4における有効性及び安全性は確立していない。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

11.1. 重大な副作用

11.1.1. 低血圧:過度の血圧低下[低血圧(3.1%)、起立性低血圧(0.7%)等]があらわれることがある。

11.1.2. 出血:出血[鼻出血(1.6%)、網膜出血(0.3%)等]があらわれることがある。

11.1.3. 甲状腺機能異常:甲状腺機能異常[甲状腺機能亢進症(0.6%)、甲状腺機能低下症(0.4%)等]があらわれることがある〔8.4参照〕。

その他の副作用

11.2. その他の副作用

1). 血液:(0.5〜5%未満)貧血、(0.5%未満)鉄欠乏性貧血、血小板数減少、(頻度不明)ヘモグロビン減少。

2). 代謝異常:(0.5〜5%未満)食欲減退、体液貯留、(0.5%未満)低カリウム血症、脱水。

3). 精神神経系:(5%以上)頭痛(60.8%)、浮動性めまい、(0.5〜5%未満)失神、体位性めまい、頭部不快感、傾眠、不眠症、灼熱感、感覚鈍麻、(0.5%未満)嗜眠、錯感覚、味覚消失、片頭痛。

4). 眼:(0.5〜5%未満)眼痛、(0.5%未満)羞明、霧視、眼瞼浮腫、流涙増加。

5). 耳:(0.5〜5%未満)回転性めまい、(0.5%未満)耳鳴。6). 循環器:(5%以上)潮紅(12.5%)、(0.5〜5%未満)ほてり、動悸、(0.5%未満)心房細動、心不全、右室不全、頻脈、心室性期外収縮、紅痛症(四肢熱感・四肢発赤・四肢の痛みを伴う四肢の腫れ)。

7). 呼吸器:(0.5〜5%未満)呼吸困難、鼻閉、咳嗽、(0.5%未満)低酸素症、口腔咽頭不快感。

8). 消化器:(5%以上)下痢(38.9%)、悪心(27.6%)、嘔吐(13.4%)、腹痛、(0.5〜5%未満)腹部不快感、消化不良、胃食道逆流性疾患、腹部膨満、便秘、排便回数増加、胃炎、(0.5%未満)口内乾燥、胃拡張、消化性潰瘍。9). 肝臓:(0.5〜5%未満)肝酵素上昇、肝機能異常、(0.5%未満)血中ビリルビン増加。

10). 皮膚:(0.5〜5%未満)紅斑、発疹、皮膚そう痒症、(0.5%未満)光線過敏性反応、脱毛症、多汗症、(頻度不明)蕁麻疹、血管浮腫。11). 筋骨格系:(5%以上)顎痛(25.1%)、筋肉痛(14.0%)、四肢痛(12.8%)、関節痛、(0.5〜5%未満)背部痛、筋骨格痛、頚部痛、顎関節症候群、筋痙縮、骨痛、四肢不快感、関節腫脹、筋骨格硬直、(0.5%未満)筋力低下、開口障害、筋肉疲労、脊椎痛。

12). 腎臓:(0.5〜5%未満)腎機能障害、(0.5%未満)頻尿。13). その他:(0.5〜5%未満)倦怠感、浮腫(末梢性浮腫、顔面浮腫等)、疲労、疼痛、無力症、胸部不快感、体重減少、胸痛、(0.5%未満)異常感、発熱、胃腸炎、上咽頭炎、副鼻腔炎、インフルエンザ様疾患、転倒、月経過多、(頻度不明)血中甲状腺刺激ホルモン減少、過敏症。

重要な基本的な注意

8.1. 本剤は、肺動脈性肺高血圧症又は慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療に十分な知識及び経験を有する医師のもとで使用すること。

8.2. 本剤の投与により肺水腫の徴候がみられた場合は肺静脈閉塞性疾患の可能性を考慮し、肺静脈閉塞性疾患が疑われた場合には、本剤の投与を中止すること。8.3. 本剤は血管拡張作用を有するため、本剤の投与に際しては、血管拡張作用により患者が有害な影響を受ける可能性がある状態(降圧剤投与中、安静時低血圧、血液量減少、重度の左室流出路閉塞、自律神経機能障害等)にあるのかを十分検討すること。8.4. 甲状腺機能異常があらわれることがあるので、本剤投与中は必要に応じて甲状腺機能検査を実施するなど観察を十分に行うこと〔11.1.3参照〕。8.5. 意識障害等があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分に説明すること。(特定の背景を有する患者に関する注意)

合併症・既往歴等のある患者

9.1.1. 低血圧の患者:血圧を更に低下させるおそれがある(本剤は血管拡張作用を有する)。

9.1.2. 出血傾向並びに出血傾向素因のある患者:出血傾向を助長するおそれがある(本剤は血小板凝集抑制作用を有する)〔10.2参照〕。(腎機能障害患者)

9.2.1. 重度腎障害(糸球体濾過率:15〜29mL/min/1.73u)のある患者(透析中の患者を含む):本剤の血中濃度が上昇することが認められている(また、透析中の患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない)〔16.6.1参照〕。

肝機能障害患者

9.3.1. 重度肝障害<Child−Pughスコア:10〜15>患者:投与しないこと(本剤の血中濃度が著しく上昇するおそれがある)〔2.2、16.6.2参照〕。

9.3.2. 軽度又は中等度肝障害<Child−Pughスコア:5〜9>患者:本剤の血中濃度が上昇する〔7.5、16.6.2参照〕。

相互作用

本剤及び本剤の活性代謝物である脱メチルスルホニルアミド体(MRE−269)はCYP2C8とCYP3A4により代謝される。また、MRE−269はUGT1A3とUGT2B7によりグルクロン酸抱合される〔16.4参照〕。10.2. 併用注意:

1). 降圧作用を有する薬剤(カルシウム拮抗剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン2受容体拮抗剤、利尿剤、プロスタグランジンE1誘導体製剤、プロスタグランジンE2誘導体製剤、プロスタグランジンI2誘導体製剤等)[過度の血圧低下が起こるおそれがあるので、併用薬もしくは本剤を増量する場合は血圧を十分観察すること(相互に降圧作用を増強することが考えられる)]。

2). 抗凝血剤(ワルファリン等)、血栓溶解剤(ウロキナーゼ等)、血小板凝集抑制作用を有する薬剤(アスピリン、チクロピジン、プロスタグランジンE1誘導体製剤、プロスタグランジンE2誘導体製剤、プロスタグランジンI2誘導体製剤、非ステロイド性抗炎症剤等)〔9.1.2参照〕[出血の危険性が増大するおそれがあるので、定期的にプロトロンビン時間等の血液検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること(本剤はin vitroで血小板凝集抑制作用を有するため、相互に抗凝血作用を増強することが考えられる)]。

3). CYP2C8の阻害作用を有する薬剤(クロピドグレル含有製剤、デフェラシロクス等)〔16.7.2参照〕[クロピドグレルとの併用で、本剤の活性代謝物のCmax及びAUCが増加したとの報告があるので、本剤の投与中にこれらの薬剤を開始する場合には、本剤の減量を考慮し、これらの薬剤の投与中に本剤を開始する場合には、本剤を1日1回に減量して投与を開始すること(CYP2C8を阻害することにより、本剤の活性代謝物の代謝が抑制されると考えられる)]。

4). ロピナビル・リトナビル〔16.7.5参照〕[本剤の血中濃度が上昇したとの報告があり、本剤の副作用が発現するおそれがある(本剤の代謝酵素であるCYP3A4や、本剤が基質となるOATP1B1、OATP1B3及びP糖タンパクを阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇すると考えられる)]。

5). CYP2C8の誘導作用を有する薬剤(リファンピシン等)〔16.7.6参照〕[本剤の活性代謝物のAUCが低下するおそれがある(CYP2C8を誘導することにより、本剤及び活性代謝物の代謝が促進されると考えられる)]。

高齢者

一般に、生理機能が低下していることが多い〔16.6.3参照〕。

妊婦・授妊婦

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物試験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている)。

小児等

小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

過剰投与

13.1. 症状

海外において、本剤を1回3.2mg投与された患者に一過性悪心が発現したとの報告がある。

13.2. 処置

過量投与時、特異的な解毒薬はない(本剤はタンパク結合率が高いため、透析が有効である可能性は低い)。

適用上の注意

14.1. 薬剤交付時の注意

PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。

取扱い上の注意

アルミピローの開封後は湿気を避けて保管すること。

保管上の注意

室温保存。

組成・性状

3.1 組成

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販売名 ウプトラビ錠0.2mg

有効成分 1錠中

セレキシパグ0.2mg

添加剤 黄色三二酸化鉄、カルナウバロウ、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、プロピレングリコール、D‐マンニトール

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3.2 製剤の性状

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販売名 ウプトラビ錠0.2mg

製剤の色 黄色

形状 円形のフィルムコーティング錠

識別コード ◇261

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薬効薬理

18.1 作用機序

18.1.1 セレキシパグはヒトプロスタサイクリン受容体に選択的な結合能を有し、cyclic AMP生成量を濃度依存的に増加させ、アゴニスト作用を示した。

18.1.2 セレキシパグは、プロスタグランジンF2αによる摘出ラット肺葉内動脈標本の収縮を濃度依存的に抑制した。

18.1.3 主代謝物であるMRE‐269も前記18.1.1及び18.1.2の作用を示し、その効力(EC50又はIC50)はセレキシパグと比較して18.1.1では15〜33倍、18.1.2では約4倍高かった。

18.2 肺高血圧モデルラットに対する作用

18.2.1 トロンボキサンA2受容体アゴニストであるU46619誘発肺高血圧モデルラットにおいて、セレキシパグの投与は右心室圧の上昇を抑制した。

18.2.2 モノクロタリン誘発肺高血圧モデルラットにおいて、セレキシパグの投与は右心肥大を抑制した。

18.2.3 モノクロタリン誘発肺高血圧モデルラットにおいて、セレキシパグの投与は肺動脈圧を低下させた。反復投与による肺動脈圧低下効果の減弱は認められなかった。

薬物動態

16.1 血中濃度

16.1.1 単回投与

健康成人男性6例にセレキシパグ0.2及び0.4mgを食後に単回経口投与したとき、セレキシパグ及び活性代謝物MRE‐269の薬物動態パラメータは次表のとおりであった。セレキシパグ及びMRE‐269のCmax及びAUC0−∞は、いずれも用量とともに増加した。

セレキシパグ0.2及び0.4mgを単回経口投与後のセレキシパグ及びMRE‐269の血漿中濃度推移

□:0.2mg、●:0.4mg(平均値±標準偏差、n=6)

<<図省略>>

セレキシパグ0.2及び0.4mgを単回経口投与したときの薬物動態パラメータ

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      Cmax(ng/mL) tmax(hr)        t1/2(hr)    AUC0−∞(ng・hr/mL)

セレキシパグ

0.2mg 3.30±0.81   1.75(1.00、2.50) 0.849±0.133 8.59±2.64

0.4mg 8.55±1.33   1.50(1.50、2.00) 1.03±0.26   18.8±2.9

MRE‐269

0.2mg 4.06±0.94   4.50(2.50、5.00) 10.5±4.0    24.0±5.5

0.4mg 7.40±1.23   3.50(2.00、5.00) 7.84±2.43   45.7±8.9

n=6、平均値±標準偏差、tmaxは中央値(最小値、最大値)

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16.1.2 反復投与

健康成人男性6例にセレキシパグ0.2〜0.6mgを1日2回食後反復経口投与したとき、セレキシパグ及びMRE‐269の定常状態における薬物動態パラメータは次表のとおりであった。セレキシパグ及びMRE‐269の血漿中濃度は投与3日目にほぼ定常状態に達した。

セレキシパグ0.2〜0.6mgを1日2回反復経口投与したときの定常状態における薬物動態パラメータ

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1回投与量 Cmax(ng/mL) tmax(hr)        t1/2(hr)    AUC0−12hr(ng・hr/mL)

セレキシパグ

0.2mg 2.98±0.85   1.50(1.00、3.00) 0.855±0.204 6.53±2.36

0.4mg 8.71±0.79   1.50(1.00、1.50) 1.38±0.62   17.5±3.5

0.6mg 10.7±3.0    1.50(1.50、2.50) 1.89±0.53   24.8±3.7

MRE‐269

0.2mg 4.24±0.81   3.00(2.50、4.00) 10.7±3.7    22.8±5.8

0.4mg 10.2±1.6    2.75(2.00、4.00) 11.2±4.0    60.5±8.0

0.6mg 12.4±2.0    3.00(2.50、5.00) 7.89±2.36   69.7±12.3

n=6、平均値±標準偏差、tmaxは中央値(最小値、最大値)

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16.2 吸収

16.2.1 バイオアベイラビリティ

健康成人男性15例にセレキシパグ0.2mgを空腹時に単回静脈内投与したとき、セレキシパグの全身クリアランス及び定常状態の分布容積の幾何平均値はそれぞれ17.9L/hr及び11.7Lであった。また、セレキシパグ0.4mgを空腹時に単回経口投与したとき、セレキシパグの絶対バイオアベイラビリティは49.4%であった(外国人によるデータ)。

16.2.2 食事の影響

(1)標準食

健康成人男性4例にセレキシパグ0.4mgを空腹時及び食後30分に単回経口投与したとき、空腹時と比較してセレキシパグのCmaxは32%、AUC0−∞は15%低下した。MRE‐269のCmaxは7%、AUC0−∞は12%低下した。

(2)高脂肪食

健康成人男性12例にセレキシパグ0.4mgを空腹時及び食後に単回経口投与したとき、空腹時と比較してセレキシパグのCmaxは35%低下し、AUC0−∞は10%増大した。MRE‐269のCmaxは48%、AUC0−∞は27%低下した(外国人によるデータ)。

16.3 分布

14C‐セレキシパグ及び14C‐MRE‐269の血清タンパクに対する結合率は、0.1〜1μg/mLの範囲でいずれも98〜99%であった。

16.4 代謝

セレキシパグは、主に生体内でカルボン酸アミド部位が加水分解され、活性代謝物MRE‐269を生成した。MRE‐269はその後複数種の酸化的代謝物やアシルグルクロン酸抱合体に代謝された。

加水分解にはカルボキシルエステラーゼ1が、酸化的代謝にはCYP2C8及びCYP3A4が、グルクロン酸抱合にはUGT1A3及びUGT2B7が主に関与していた。[10.参照]

16.5 排泄

健康成人男性6例にセレキシパグ0.2〜0.6mgを空腹時に単回経口投与したとき、投与後48時間までに尿中には未変化体は検出されず、MRE‐269及びそのグルクロン酸抱合体として、投与量の0.22〜0.27%が排泄された。

健康成人男性6例に14C‐セレキシパグ0.4mgを単回経口投与した場合、投与後168時間までに投与された放射能の12%が尿中に、93%が糞中に排泄された(外国人によるデータ)。

16.6 特定の背景を有する患者

16.6.1 腎障害患者

重度の腎障害患者8例(糸球体濾過率:15〜29mL/min/1.73m2)及び健康成人8例にセレキシパグ0.4mgを単回経口投与したとき、重度の腎障害患者では、健康成人と比較してセレキシパグのCmax及びAUC0−∞は1.7倍に、MRE‐269のCmaxは1.4倍、AUC0−∞は1.6倍に増加した。また、セレキシパグ及びMRE‐269の血漿中非結合型分率に大きな相違はなかった(外国人によるデータ)。[9.2.1参照]

16.6.2 肝障害患者

軽度の肝障害患者8例(Child‐Pughスコア:5〜6)、中等度の肝障害患者8例(Child‐Pughスコア:7〜9)及び重度の肝障害患者2例(Child‐Pughスコア:10〜15)並びに健康成人8例にセレキシパグ0.2〜0.4mgを単回経口投与した。軽度の肝障害患者は健康成人と比較して、セレキシパグのCmax及びAUC0−∞が2倍に増加し、MRE‐269のCmax及びAUC0−∞に大きな相違はなかった。また、セレキシパグ及びMRE‐269の血漿中非結合型分率にも大きな相違はなかった。中等度の肝障害患者では健康成人と比較して、セレキシパグのCmaxは2倍以上、AUC0−∞は4倍以上に増加した。MRE‐269のCmaxに大きな相違はなく、AUC0−∞は2倍以上に増加した。また、セレキシパグ及びMRE‐269の血漿中非結合型分率は1.3倍に増加した。重度の肝障害患者は、中等度の肝障害患者と同様の血漿中濃度推移の傾向を示したが、セレキシパグ及びMRE‐269の血漿中非結合型分率は2倍に増加した(外国人によるデータ)。[2.2、7.5、9.3.1、9.3.2参照]

16.6.3 高齢者

健康高齢男性6例(65〜74歳)にセレキシパグ0.2mgを空腹時に単回経口投与したとき、健康非高齢者6例(20〜26歳)と比較してセレキシパグ及びMRE‐269のCmax及びAUC0−∞が低下する傾向が認められた。健康高齢男性6例(67〜74歳)にセレキシパグ0.4mgを1日2回10日間食後経口投与したとき、血漿中セレキシパグ及びMRE‐269の薬物動態パラメータは健康非高齢者6例(21〜29歳)と類似した値を示した。[9.8参照]

16.7 薬物相互作用

16.7.1 In vitro試験

セレキシパグ及びMRE‐269は、OATP1B1及びOATP1B3の基質であることが示された。また、セレキシパグはP糖タンパク、MRE‐269はBCRPの基質であることが示された。

16.7.2 クロピドグレル

健康成人男性22例にセレキシパグ0.2mgを1日2回10日間経口投与し、CYP2C8の阻害作用を有するクロピドグレルを投与4日目に300mg(n=21)、投与5日目から10日目に75mg(n=20)を経口投与したとき、単独投与と比較して、セレキシパグのCmax及びAUC0−12は、投与4日目では1.3倍及び1.4倍に増加し、投与10日目では0.98倍及び1.1倍であった。同様に、MRE‐269のCmax及びAUC0−12は、投与4日目では1.7倍及び2.2倍、投与10日目では1.9倍及び2.7倍に増加した(外国人によるデータ)。[10.2参照]

16.7.3 ゲムフィブロジル

健康成人男性20例に強いCYP2C8の阻害剤であるゲムフィブロジル(国内未承認)600mgを1日2回9日間経口投与し、投与4日目にセレキシパグ0.4mgを単回経口投与したとき、単独投与と比較して、セレキシパグのCmaxは1.4倍、AUC0−∞は2.0倍に増加した。MRE‐269のCmaxは3.6倍、AUC0−∞は11倍に増加した(外国人によるデータ)。

16.7.4 ワルファリン

健康成人男性17例にセレキシパグ0.4mgを1日2回12日間経口投与し、投与8日目にワルファリン20mgを経口投与したとき、セレキシパグ及びMRE‐269の薬物動態に及ぼすワルファリンの影響は認められなかった。ワルファリンの薬物動態に及ぼすセレキシパグの影響は認められなかった(外国人によるデータ)。

16.7.5 ロピナビル・リトナビル

健康成人男性20例にロピナビル・リトナビル配合錠400mg/100mgを1日2回12日間経口投与し、投与10日目にセレキシパグ0.4mgを単回経口投与したとき、単独投与と比較して、セレキシパグのCmaxは2.07倍、AUC0−∞は2.24倍に増加した。MRE‐269のCmaxは1.33倍、AUC0−∞は1.08倍に増加した(外国人によるデータ)。[10.2参照]

16.7.6 リファンピシン

健康成人男性19例にCYP2C8の誘導剤であるリファンピシン600mgを1日1回9日間経口投与し、投与7日目にセレキシパグ0.4mgを単回経口投与したとき、単独投与と比較して、セレキシパグのCmaxは1.8倍、AUC0−∞は1.3倍に増加した。MRE‐269のCmaxは1.3倍に増加し、AUC0−∞は0.52倍に減少した(外国人によるデータ)。[10.2参照]