特徴
抱水クロラール製剤で、理学検査時の催眠や
専門医コメント
坐剤であるため小児にも使いやすいが、最近
用法・用量
抱水クロラールとして、通常小児では30〜50mg/kgを標準とし、直腸内に注入する。
なお、年齢・症状・目的に応じ適宜増減する。
総量1.5gを越えないようにする。
禁忌
2.1. 本剤の成分又はトリクロホスナトリウムに対して過敏症の既往歴のある患者[抱水クロラール及びトリクロホスナトリウムは、生体内でトリクロロエタノールとなる]〔18.1参照〕。
2.2. 急性間けつ性ポルフィリン症の患者[ポルフィリン症の症状を悪化させる]。
適応
理学検査時における鎮静・催眠、静注が困難な痙攣重積状態
効果・効能
1). 理学検査時における鎮静・催眠。
2). 静脈注射が困難なけいれん重積状態。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 無呼吸、呼吸抑制(いずれも頻度不明):心肺停止に至った症例が報告されている〔8.1、9.7小児等の項参照〕。
11.1.2. ショック(頻度不明):呼吸困難、チアノーゼ、血圧低下、浮腫、全身発赤等があらわれた場合には、投与を中止すること。
11.1.3. 依存性(頻度不明):連用により薬物依存を生じることがあるので観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること。また、連用中の投与量の急激な減少ないし投与の中止により、まれに痙れん発作、せん妄、振戦、不安等の離脱症状があらわれることがあるので投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(頻度不明)発疹、紅斑、そう痒感。
2). 血液:(頻度不明)好酸球増多、白血球減少。
3). 消化器:(0.1〜5%未満)下痢、(0.1%未満)食欲不振。4). 精神神経系:(頻度不明)頭痛、めまい、ふらつき、運動失調、興奮、抑うつ、構音障害。
5). 循環器:(0.1%未満)徐脈。
慎重投与
1.肝障害、腎障害のある患者[抱水クロラールは肝臓において加水分解され、トリクロロエタノールとなり、また腎臓より排泄されるため、これらの患者では血中濃度の持続・上昇により副作用を増強する恐れがある]。
2.虚弱者[呼吸抑制を起こす恐れがある]。
3.呼吸機能低下している患者[呼吸抑制を起こす恐れがある]。4.重篤な心疾患又は不整脈のある患者[心機能抑制により症状を悪化させる恐れがある]。
重要な基本的な注意
8.1. 呼吸抑制等が起こることがあるので患者の状態を十分観察すること(特に小児では呼吸数、心拍数、経皮的動脈血酸素飽和度等をモニタリングするなど、十分に注意すること)〔9.7小児等の項、11.1.1参照〕。
8.2. トリクロホスナトリウムは、本剤と同様に生体内で活性代謝物であるトリクロロエタノールとなるため、併用により過量投与になるおそれがあるので注意すること〔13.1参照〕。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 虚弱者:呼吸抑制を起こすおそれがある。
9.1.2. 呼吸機能低下している患者:呼吸抑制を起こすおそれがある。9.1.3. 重篤な心疾患又は不整脈のある患者:心機能抑制により症状を悪化させるおそれがある。
腎機能障害患者
腎機能障害患者:抱水クロラールは腎臓より排泄されるため、これらの患者では血中濃度の持続・上昇により副作用を増強するおそれがある。
肝機能障害患者
肝機能障害患者:抱水クロラールは肝臓において加水分解され、トリクロロエタノールとなるため、これらの患者では血中濃度の持続・上昇により副作用を増強するおそれがある。
相互作用
10.2. 併用注意:
1). 中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等)、モノアミン酸化酵素阻害剤[これらの作用を増強することがあるので、やむを得ず投与する場合には減量するなど慎重に投与すること(相加的に中枢抑制作用が増強するものと考えられる)]。
2). アルコール[これらの作用を増強することがあるので、やむを得ず投与する場合には減量するなど慎重に投与すること(アルコール脱水素酵素を競合的に阻害し、アルコールの血中濃度を上昇させる)]。
3). クマリン系抗凝血剤(ワルファリン等)[これらの作用を増強することがあるので併用する場合には、通常より頻回にプロトロンビン値の測定を行うなど慎重に投与すること(主代謝物であるトリクロル酢酸がワルファリンと蛋白結合部位で置換し、遊離のワルファリンを増加させる)]。
妊婦・授妊婦
妊婦
投与しないことが望ましい。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
小児等
特に慎重に投与及び観察をすること(無呼吸、呼吸抑制を起こすおそれがある)〔8.1、11.1.1参照〕。
過剰投与
13.1. 症状
過量投与時、呼吸抑制、徐脈、血圧低下が認められることがある〔8.2参照〕。13.2. 処置
過量投与時、呼吸、脈拍、血圧、経皮的動脈血酸素飽和度の監視を行うとともに、気道の確保等の適切な処置を行うこと(血液透析、血液灌流が有効であったとの報告もある)。
適用上の注意
14.1. 薬剤投与時の注意
14.1.1. 直腸内投与にのみ使用すること。
14.1.2. 注入に際し、直腸粘膜損傷することがあるので、慎重にバレルの先端を挿入すること。
14.1.3. 開封後は速やかに使用し、使用後の残液は使用しないこと。また、使用後のキャップ、バレル及びプランジャーは廃棄すること。
保管上の注意
室温保存。
保険給付上の注意・その他
参考情報
【操作方法】
@. プランジャーを押し易くするために、キャップがはずれないようにキャップを押えながら、ガスケットが動く程度に軽くプランジャーを押す。A. バレル先端のキャップをはずす。
B. 投与量を調節する場合は、バレル先端を斜め上方に向け、目盛を目安にプランジャーを押して余分な薬剤を排出する。その際、プランジャーの1目盛は、抱水クロラール100mgに相当するので、「6.用法及び用量」を確認のうえ、次を参考に適切な目盛数の薬剤を残す。
1). 目盛数1:抱水クロラールの量100mg。
2). 目盛数2:抱水クロラールの量200mg。
3). 目盛数3:抱水クロラールの量300mg。
4). 目盛数4:抱水クロラールの量400mg。
5). 目盛数5:抱水クロラールの量500mg。
C. 必要に応じてバレル先端(挿入部分)に本剤又はゼリー様の油性物質を塗り広げ、滑りをよくする。
D. 肛門内にストッパーの部分まで深く挿入した後、プランジャーをゆっくり押し薬剤を注入する。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 エスクレ注腸用キット「500」
有効成分 1キット・1340mg中
日局抱水クロラール
500mg
添加剤 グリセリン、マクロゴール400
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3.2 製剤の性状
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販売名 エスクレ注腸用キット「500」
剤形・性状 無色澄明液を含有するキット製剤
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薬効薬理
18.1 作用機序
抱水クロラールは中枢神経系(大脳皮質)に作用し、中枢抑制・催眠作用ならびに抗けいれん作用をあらわす。抱水クロラールは、生体内でトリクロロエタノールに変化し、これが活性物質として中枢抑制作用を示すが、抱水クロラール自身にも中枢抑制作用があり、投与直後の作用は抱水クロラールによるもので、その後の作用はトリクロロエタノールによるものとされている。しかしながら、本剤の薬物動態検討結果及び薬効強度比の文献値(抱水クロラール:トリクロロエタノール=1:1.18)より、本剤の薬効発現本体はトリクロロエタノールと考えられた。[2.1参照]
18.2 中枢抑制・催眠作用
18.2.1 イヌに抱水クロラール500mg/kgを直腸投与し、脳波を測定したところ、投与後20〜200分にわたり、麻酔第1〜3期の麻酔深度を示す自発脳波の変化がみられた。
18.2.2 ウサギに抱水クロラール200〜250mg/kg又は500〜600mg/kg直腸投与により、I〜IV度(坂本の方法による麻酔深度)の麻酔効果が認められた。
18.2.3 マウス又はラットを用い、抱水クロラール500mg/kgを直腸投与し、一般症状を観察したところ、数分以内に運動量の減少、眼瞼下垂、歩行失調及び正向反射の消失がみられた。
18.3 抗けいれん作用
マウス又はラットに抱水クロラールを直腸内前投与することにより、各種の実験的けいれん発現(電気ショック、ペンテトラゾール、ストリキニーネ、ニコチン)に対する抑制効果が認められた。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男子6例に本剤500mgを投与したとき、血中未変化体濃度は投与後2〜3時間以降、定量限界付近で推移し、正確な消失相の把握ができなかった。一方、活性代謝物であるトリクロロエタノールの血中濃度は、未変化体濃度に比べ投与直後から高い値で推移し、そのCmaxは5.07μg/mL、AUC0−24は47.91μg・hr/mLであった。Cmaxを比較するとトリクロロエタノールは未変化体の約17倍、AUC0−24は約96倍であった。また、本剤投与時の血中トリクロロエタノールのCmax及びAUC0−24は、抱水クロラール500mg坐剤投与時と同等であった。
健康成人男子に投与時の未変化体及びトリクロロエタノールの薬物動態パラメータ
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Cmax(μg/mL) Tmax(hr) t1/2(hr) AUC0−24(μg・hr/mL)
未変化体 0.30±0.19 0.18±0.03 − 0.50±0.24
トリクロロエタノール 5.07±0.41 0.65±0.23 11.8±1.8 47.91±9.58
(平均値±標準偏差、n=6)
−:算出できず
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