特徴
弱オピオイド。ペンタゾシン製剤。
専門医コメント
オピオイド系の鎮痛注射薬。モルヒネよりは
用法・用量
〈鎮痛〉
通常、成人にはペンタゾシンとして1回15mgを筋肉内または皮下に注射し、その後必要に応じて、3〜4時間毎に反復注射する。なお、症状により適宜増減する。〈麻酔前投薬および麻酔補助〉
通常、ペンタゾシンとして30〜60mgを筋肉内、皮下または静脈内に注射するが、症例により適宜増減する。
禁忌
2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 頭部傷害がある患者又は頭蓋内圧上昇している患者[頭蓋内圧が上昇することがある]。
2.3. 重篤な呼吸抑制状態にある患者及び全身状態が著しく悪化している患者[呼吸抑制を増強することがある]。
2.4. ナルメフェン塩酸塩水和物投与中又はナルメフェン塩酸塩水和物投与中止後1週間以内の患者[オピオイド離脱症状<又はその悪化>があらわれるおそれがある]〔10.1参照〕。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
【内服15mg】各種癌・術後・心筋梗塞症における鎮痛【内服30mg】各種癌・術後・心筋梗塞症における鎮痛、麻酔補助【注射】各種癌・術後における鎮痛
効果・効能
1). 次記疾患並びに状態における鎮痛:各種癌、術後、心筋梗塞、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、腎結石・尿路結石、閉塞性動脈炎、胃検査器具使用時・尿管検査器具使用時・膀胱検査器具使用時。
2). 麻酔前投薬および麻酔補助。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):顔面蒼白、呼吸困難、チアノーゼ、血圧下降、頻脈、全身発赤、血管浮腫、蕁麻疹等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.2. 呼吸抑制(0.42%):酸素吸入(必要に応じて人工呼吸)か、又はドキサプラムの投与が有効であるが、麻薬拮抗剤(レバロルファン)は無効である。11.1.3. 依存性(頻度不明):連用により薬物依存を生ずることがある(特に薬物依存の既往歴のある患者には注意すること)。また、連用後、投与を急に中止すると、振戦、不安、興奮、悪心、動悸、冷感、不眠等の禁断症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には徐々に減量すること〔8.3、9.1.1参照〕。11.1.4. 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)。
11.1.5. 無顆粒球症(頻度不明)。
11.1.6. 神経原性筋障害(頻度不明):大量連用により、神経原性の四肢の筋萎縮が起こり、脱力、歩行困難があらわれることがある。
11.1.7. 痙攣(頻度不明):強直性痙攣又は間代性痙攣があらわれることがある。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 精神神経系:(1%〜5%未満)傾眠、めまい、ふらつき、発汗、(1%未満)*幻覚[*:特に静脈内注射する場合には注意すること]、しびれ感、多幸感、不安、頭痛、頭重、複視、振戦、(頻度不明)*錯乱[*:特に静脈内注射する場合には注意すること]、鎮静、意識障害、浮遊感、興奮、痙攣。
2). 循環器:(1%未満)血圧上昇、血圧低下、皮膚潮紅、熱感。3). 消化器:(1%〜5%未満)悪心、(1%未満)嘔吐、口渇、(頻度不明)便秘。
4). 過敏症:(頻度不明)顔面浮腫、発赤、発疹、多形紅斑。5). 血液:(頻度不明)白血球減少、貧血。
6). 肝臓:(頻度不明)肝機能異常。
7). 泌尿器:(頻度不明)排尿障害、尿閉。
8). その他:(1%未満)胸内苦悶、疲労感、不快感、悪寒、(頻度不明)発熱、脱力感、倦怠感。
慎重投与
1.薬物依存の既往歴のある患者。
2.麻薬依存患者[軽度の麻薬拮抗作用が認められているので、ときとして禁断症状を呈することがある]。
3.胆道疾患のある患者[大量投与した場合Oddi氏筋を収縮する]。4.心筋梗塞の患者[特に静脈内投与の場合、急性心筋梗塞患者の動脈圧上昇、血管抵抗を上昇させる]。
5.肝機能障害のある患者[本剤の作用が増強する恐れがある]。6.高齢者。
重要な基本的な注意
8.1. 外来患者に投与した場合には、十分に安静にした後、安全を確認し帰宅させること。
8.2. 眠気、めまい、ふらつき等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること。8.3. 連用により薬物依存を生ずることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること(特に薬物依存の既往歴のある患者には注意すること)〔11.1.3参照〕。(特定の背景を有する患者に関する注意)
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 薬物依存の既往歴のある患者〔11.1.3参照〕。9.1.2. 麻薬依存患者:軽度の麻薬拮抗作用が認められているので、ときとして禁断症状を呈することがある。
9.1.3. 胆道疾患のある患者:大量投与した場合Oddi氏筋を収縮する。9.1.4. 心筋梗塞の患者:特に静脈内投与の場合、急性心筋梗塞患者の動脈圧上昇、血管抵抗を上昇させる。
肝機能障害患者
肝機能障害患者:本剤の作用が増強するおそれがある。
相互作用
10.1. 併用禁忌:
ナルメフェン塩酸塩水和物<セリンクロ>〔2.4参照〕[本剤の離脱症状を起こすおそれがあり、また、本剤の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなるおそれがある(緊急の手術等によりやむを得ず本剤を投与する場合、患者毎に用量を漸増し、呼吸抑制等の中枢神経抑制症状を注意深く観察し、また、手術等において本剤を投与することが事前にわかる場合には、少なくとも1週間前にナルメフェン塩酸塩水和物の投与を中断すること)(μオピオイド受容体拮抗作用により、本剤の作用が競合的に阻害される)]。
10.2. 併用注意:
1). モルヒネ製剤[本剤の作用が増強されることがあるので、併用が必要な場合には、一方又は両方の投与量を必要に応じて減らすこと、また、本剤は高用量においてモルヒネの作用に拮抗することがあるので、通常、モルヒネとの併用は避けること(ペンタゾシンの作用は、脳内オピオイドレセプターの飽和濃度に左右される)]。2). 中枢性鎮痛剤(ブプレノルフィン塩酸塩、エプタゾシン臭化水素酸塩等)、ベンゾジアゼピン誘導体・その他の鎮静剤(ジアゼパム、ニトラゼパム、メダゼパム等)、中枢性薬剤(睡眠剤等)(バルビツール酸誘導体(フェノバルビタール等))、アルコール[本剤の作用が増強されることがあるので、併用が必要な場合には、一方又は両方の投与量を必要に応じて減らすこと(中枢神経系が抑制されることによると考えられる)]。3). セロトニン神経系賦活作用を有する抗うつ剤(アミトリプチリン塩酸塩等)[抗うつ剤の作用が増強され不安感・悪心・発汗・潮紅等が起こるおそれがあるので、併用が必要な場合には、一方又は両方の投与量を必要に応じて減らすこと(中枢のセロトニン作動活性を増強すると考えられ、外国において、セロトニン神経系賦活を作用機序とする抗うつ剤(フルオキセチン)投与患者でセロトニン神経系賦活作用の増強に由来すると考えられる症状(不安感、悪心、発汗、潮紅等)が認められたとの報告がある)]。4). メサドン塩酸塩[メサドン塩酸塩の鎮痛作用を減弱させることがあり、また、退薬症候を起こすおそれがある(本剤はメサドン塩酸塩の作用するμ受容体の部分アゴニストである)]。
動物実験(ウサギ)においてサリチルアミドとの併用によりペンタゾシンのCmaxが約2倍程度高くなり、サリチルアミドのCmaxは過剰のペンタゾシンを併用することにより約2.5倍となるとの報告があるので、併用しないことが望ましい(また、やむをえず併用する場合には本剤を減量するなど注意すること)。
高齢者
低用量から投与を開始するとともに、投与間隔を延長するなど慎重に投与すること(高い血中濃度が持続する傾向等が認められている)〔16.6.1参照〕。
妊婦・授妊婦
妊婦
9.5.1. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.5.2. 分娩時の投与により新生児に呼吸抑制があらわれることがある。9.5.3. 分娩前に投与した場合、出産後新生児に禁断症状(神経過敏、振戦、嘔吐等)があらわれることがある。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
小児等
小児等には投与しないことが望ましい(小児等を対象とした臨床試験は実施していない)。
過剰投与
13.1. 症状
過量投与時、傾眠、呼吸抑制、血圧低下等を起こすことがあり、重症の場合には、循環不全、昏睡、痙攣等を起こすことがある。
13.2. 処置
過量投与時、痙攣に対する治療は必須であり、中枢神経抑制作用に対してはナロキソン投与を行う。
適用上の注意
14.1. 薬剤調製時の注意
バルビタール系薬剤<注射液>と同じ注射筒で使用すると沈殿を生ずるので、同じ注射筒で混ぜないこと。
14.2. 薬剤投与時の注意
14.2.1. 皮下・筋肉内注射時:連続注射により、まれに注射部位潰瘍等の障害があらわれることがある。
14.2.2. 筋肉内注射時:筋肉内注射時、組織・神経等への影響を避けるため、次の点に配慮すること。
・ 筋肉内注射時神経走行部位を避けるよう注意して注射すること。・ 筋肉内注射時繰り返し注射する場合には同一注射部位を避けること。なお、筋肉内注射時、小児等には投与しないことが望ましい。
・ 注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き部位をかえて注射すること。
その他の注意
バルビタール系薬剤<注射液>と同じ注射筒で使用すると沈殿を生ずるので、同じ注射筒で混ぜない。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 ソセゴン注射液15mg
有効成分 1アンプル(1mL)中
日局ペンタゾシン15mg
添加剤 乳酸、等張化剤
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3.2 製剤の性状
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販売名 ソセゴン注射液15mg
性状 無色〜ほとんど無色澄明の液
剤形 注射剤(無色アンプル)
pH 3.5〜5.5
浸透圧比 約1(生理食塩液に対する比)
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薬効薬理
18.1 作用機序
中枢神経における刺激伝導系を抑制することにより、鎮痛効果を発現する。
18.2 鎮痛効果
術後患者を対象に、ペンタゾシンの鎮痛効果をモルヒネ、ペチジンと比較した成績によれば、ペンタゾシン30mgの非経口投与は、モルヒネ10mg、ペチジン75〜100mgにほぼ匹敵する鎮痛効果を有する。
皮下注、筋注では15〜20分で鎮痛効果が発現し、約3〜4時間持続する。
薬物動態
16.1 血中濃度
16〜63歳の整形外科もしくは婦人科の手術患者30名に、ペンタゾシン0.5mg/kg、1mg/kgを筋注(臀筋内)注)もしくは0.5mg/kgを静注注)した場合の最高血中濃度及び半減期、AUCは次のとおりである。
薬動力学的パラメータ
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投与経路 用量(mg/kg) Cmax※(μg/mL) Tmax(min) t1/2※(h) AUC※(μg・h/mL)
筋肉内投与 0.5 0.15±0.04 約10 1.28±0.71 0.23±0.13
1.0 0.28±0.09 30 2.02±0.50 0.87±0.47
静脈内投与 0.5 2.07±1.20 投与直後 0.73±0.60 0.28±0.16
※平均±標準偏差
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16.3 分布
16.3.1 血漿蛋白結合率
健康成人(20例)及び脳神経外科手術後の患者(22例)でのペンタゾシンの血漿蛋白結合率を検討した結果、それぞれ61.1%及び65.8%であった。
16.4 代謝
海外における検討によれば、ペンタゾシンを人に投与後の尿中には未変化体と代謝産物としてcis‐アルコール体及びtrans‐カルボン酸体とその抱合体が認められる。
16.5 排泄
健康成人男子にペンタゾシンを静注して、その生体内代謝を検討した成績によれば、投与後32時間尿中に投与量の8.4〜24.0%が未変化体で排泄されることが認められている。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 高齢者
若年(22〜48歳)の健康成人(8例)、術後患者(1例)及び高齢(60〜90歳)の術後患者(5例)、疼痛患者(3例)にペンタゾシンをそれぞれ30mg、80mg注)、45〜60mg、30mgを静脈内投与した時、高齢者では健康成人と比較して総クリアランスが約1/2に低下し、消失半減期は約1.6倍に延長した。
高齢者に本剤を投与する場合には、投与量、投与間隔の適切な調節が必要である。[9.8参照]
注)本剤の承認された用量は、「〈鎮痛〉通常、成人にはペンタゾシンとして1回15mgを筋肉内または皮下に注射し、その後必要に応じて、3〜4時間毎に反復注射する。なお、症状により適宜増減する。〈麻酔前投薬および麻酔補助〉通常、ペンタゾシンとして30〜60mgを筋肉内、皮下または静脈内に注射するが、症例により適宜増減する。」である。