特徴
ケトプロフェン製剤。
専門医コメント
ケトプロフェンの筋注製剤。通常殿部筋肉内
用法・用量
ケトプロフェンとして、通常、成人には1回50〜75mgを1日1〜2回直腸内に挿入する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
禁忌
2.1. 消化性潰瘍のある患者[プロスタグランジン生合成抑制作用により、消化性潰瘍を悪化させることがある]〔9.1.1、9.1.2参照〕。2.2. 重篤な血液異常のある患者〔9.1.3参照〕。2.3. 重篤な肝機能障害のある患者〔9.3.1参照〕。2.4. 重篤な腎機能障害のある患者〔9.2.1参照〕。2.5. 重篤な心機能不全のある患者[腎のプロスタグランジン生合成抑制作用により浮腫、循環体液量の増加が起こり、心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させることがある]〔9.1.5参照〕。
2.6. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.7. アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[アスピリン喘息発作を誘発することがある]〔9.1.6参照〕。2.8. シプロフロキサシン投与中の患者〔10.1参照〕。2.9. 妊娠後期の女性〔9.5.1参照〕。
2.10. 直腸炎、直腸出血又は痔疾のある患者[直腸粘膜の刺激作用により、症状を悪化させるおそれがある]。
用法・用量に関連する注意
他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい。
腎機能用量
30≦CCr<60:高齢者、高血圧、糖尿病、心不全、利尿薬の併用されている症例など、腎障害のリスクの高い患者には漫然と投与しない
CCr<30:禁忌(腎機能を悪化させる恐れがある)
適応
【注射】術後、外傷、各種癌、痛風発作、症候性神経痛の鎮痛・荘園、緊急を要する解熱【坐剤】関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、頸肩腕症候群、症候性神経痛の鎮痛・消炎・解熱、外傷並びに手術後の鎮痛・消炎
効果・効能
1). 次記の疾患ならびに症状の鎮痛・消炎・解熱:関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、頸肩腕症候群、症候性神経痛。
2). 外傷後ならびに手術後の鎮痛・消炎。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック(0.1%未満)、アナフィラキシー(0.1%未満):ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難等)があらわれることがある。11.1.2. 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(0.1%未満)。
11.1.3. 急性腎障害(頻度不明)、ネフローゼ症候群(頻度不明)〔8.5参照〕。
11.1.4. 心筋梗塞(頻度不明)、脳血管障害(頻度不明):心筋梗塞、脳血管障害等の心血管系血栓塞栓性事象があらわれることがある。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(0.1%未満*)発疹、そう痒感。
2). 消化器:(0.1〜1%未満*)下痢、腹痛、直腸粘膜刺激症状、悪心・嘔吐、便秘、(0.1%未満*)消化性潰瘍、胃腸出血、食欲不振、口渇、消化不良、胃部不快感、口内炎。
3). 肝臓:(0.1%未満*)AST上昇、ALT上昇。4). 血液:(0.1%未満*)貧血、顆粒球減少、白血球減少、血小板減少、(頻度不明*)血小板機能低下(出血時間延長)[異常が認められた場合には直ちに投与を中止すること]。
5). 精神神経系:(0.1%未満*)めまい、頭痛、眠気、不眠。6). その他:(0.1%未満*)浮腫、倦怠感。
*)発現頻度は使用成績調査を含む。
慎重投与
1.消化性潰瘍の既往歴のある患者[消化性潰瘍を再発させることがある]。2.非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による消化性潰瘍のある患者で、本剤の長期投与が必要であり、かつミソプロストールによる治療が行われている患者[ミソプロストールは非ステロイド性消炎鎮痛剤により生じた消化性潰瘍を効能・効果としているが、ミソプロストールによる治療に抵抗性を示す消化性潰瘍もあるので、本剤を継続投与する場合には、十分経過を観察し、慎重に投与する]。
3.血液異常又はその既往歴のある患者[血液の異常を悪化又は再発させる恐れがある]。
4.出血傾向のある患者[血小板機能低下が起こることがあるので、出血傾向を助長することがある]。
5.肝障害又はその既往歴のある患者[肝障害を悪化又は再発させる恐れがある]。6.腎障害又はその既往歴のある患者[腎障害を悪化又は再発させる恐れがある]。7.心機能異常のある患者[心機能を悪化させる恐れがある]。8.過敏症の既往歴のある患者。
9.気管支喘息のある患者[アスピリン喘息を誘発することがある]。10.高齢者。
11.潰瘍性大腸炎の患者[症状が悪化する恐れがある]。12.クローン病の患者[症状が悪化する恐れがある]。
重要な基本的な注意
8.1. 消炎鎮痛剤による治療は原因療法ではなく対症療法であることに留意すること。
8.2. 慢性疾患(関節リウマチ、変形性関節症等)に対し本剤を用いる場合には、次の事項を考慮すること。
・ 慢性疾患(関節リウマチ、変形性関節症等)に対し本剤を長期投与する場合には定期的に尿検査、血液検査及び肝機能検査等を行うこと。
・ 慢性疾患(関節リウマチ、変形性関節症等)に対し本剤を用いる場合には、薬物療法以外の療法も考慮すること。
8.3. 外傷、術後等に対し本剤を用いる場合には、次の事項を考慮すること。・ 外傷、術後等に対し本剤を用いる場合には、炎症及び疼痛の程度を考慮し投与すること。
・ 外傷、術後等に対し本剤を用いる場合には、原則として同一の薬剤の長期投与を避けること。
8.4. 過度の体温下降、虚脱、四肢冷却等があらわれることがあるので、特に高熱を伴う小児及び高熱を伴う高齢者又は消耗性疾患の患者においては、投与後の患者の状態に十分注意すること。
8.5. 急性腎障害、ネフローゼ症候群があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと〔11.1.3参照〕。
8.6. 血液障害があらわれることがあるので、血液検査を行うなど観察を十分に行うこと。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 消化性潰瘍の既往歴のある患者:消化性潰瘍を再発させることがある〔2.1参照〕。
9.1.2. 非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による消化性潰瘍のある患者で、本剤の長期投与が必要であり、かつミソプロストールによる治療が行われている患者:本剤を継続投与する場合には、十分経過を観察し、慎重に投与すること(ミソプロストールは非ステロイド性消炎鎮痛剤により生じた消化性潰瘍を効能又は効果としているが、ミソプロストールによる治療に抵抗性を示す消化性潰瘍もある)〔2.1参照〕。9.1.3. 血液異常<重篤な血液異常を除く>又はその既往歴のある患者:血液の異常を悪化又は再発させるおそれがある〔2.2参照〕。
9.1.4. 出血傾向のある患者:血小板機能低下が起こることがあるので、出血傾向を助長することがある。
9.1.5. 心機能異常<重篤な心機能不全を除く>のある患者:心機能を悪化させるおそれがある〔2.5参照〕。
9.1.6. 気管支喘息<アスピリン喘息又はその既往歴を除く>のある患者:アスピリン喘息を誘発することがある〔2.7参照〕。
9.1.7. 潰瘍性大腸炎の患者:症状が悪化するおそれがある。9.1.8. クローン病の患者:症状が悪化するおそれがある。9.1.9. 感染症を合併している患者:必要に応じて適切な抗菌剤を併用し、観察を十分に行い慎重に投与すること(感染症を不顕性化するおそれがある)。(腎機能障害患者)
9.2.1. 重篤な腎機能障害のある患者:投与しないこと(プロスタグランジン生合成抑制作用による腎血流量の低下等により、腎機能障害を悪化させるおそれがある)〔2.4参照〕。
9.2.2. 腎機能障害<重篤な腎機能障害を除く>又はその既往歴のある患者:腎機能障害を悪化又は再発させるおそれがある。
肝機能障害患者
9.3.1. 重篤な肝機能障害のある患者:投与しないこと(肝機能障害を悪化させるおそれがある)〔2.3参照〕。
9.3.2. 肝機能障害<重篤な肝機能障害を除く>又はその既往歴のある患者:肝機能障害を悪化又は再発させるおそれがある。
相互作用
10.1. 併用禁忌:
シプロフロキサシン<シプロキサン>〔2.8参照〕[痙攣を起こすことがある(シプロフロキサシンのGABA受容体結合阻害作用が併用により増強され、中枢神経系の興奮性を増大すると考えられる)]。
10.2. 併用注意:
1). ニューキノロン系抗菌剤<シプロフロキサシンは併用禁忌>(エノキサシン水和物等)[痙攣を起こすおそれがある(ニューキノロン系抗菌剤のGABA受容体結合阻害作用が併用により増強され、中枢神経系の興奮性を増大すると考えられる)]。2). メトトレキサート[メトトレキサートの作用が増強されることがあるので、必要があれば減量すること(プロスタグランジン生合成阻害作用により腎血流が減少し、メトトレキサートの腎排泄を減少させ、メトトレキサートの血中濃度を上昇させると考えられる)]。
3). リチウム製剤(炭酸リチウム)[リチウム中毒を起こすおそれがあるので、必要があれば減量すること(プロスタグランジン生合成阻害作用によりリチウムの腎排泄を減少させ、リチウムの血中濃度を上昇させると考えられる)]。4). クマリン系抗凝血剤(ワルファリン)[抗凝血作用を増強することがあるため、必要があれば減量すること(プロスタグランジン生合成阻害作用により血小板凝集が抑制されるため、また、ワルファリンの蛋白結合と競合し、遊離型ワルファリンが増加するためと考えられる)]。
5). 血小板凝集抑制作用を有する薬剤(クロピドグレル)[出血傾向を助長するおそれがある(相互に作用を増強すると考えられる)]。
6). 選択的セロトニン再取り込み阻害剤<SSRI>(フルボキサミン、パロキセチン等)[消化管出血のおそれがある(相互に作用を増強すると考えられる)]。7). チアジド系利尿剤(トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド等)[利尿・降圧作用を減弱させるおそれがある(プロスタグランジン生合成阻害作用により、水、ナトリウムの体内貯留が生じ、利尿剤の水、ナトリウム排泄作用に拮抗するためと考えられる)]。
8). カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトン等)、エプレレノン[本剤との併用により、降圧作用の減弱、腎機能障害患者における重度の高カリウム血症が発現するおそれがある(本剤の腎におけるプロスタグランジン生合成阻害によるためと考えられている)]。
9). ACE阻害剤、A−2受容体拮抗剤[腎機能悪化している患者では、さらに腎機能が悪化するおそれがある(機序不明)]。
高齢者
高齢者:副作用の発現に特に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど必要最小限の使用にとどめ慎重に投与すること(一般に生理機能が低下している)。
妊婦・授妊婦
妊婦
9.5.1. 妊娠後期:投与しないこと(外国で妊娠後期の女性に投与したところ、胎児循環持続症(PFC)、胎児腎不全が起きたとの報告がある)。また、動物実験(ラット)で周産期投与による分娩遅延、妊娠末期投与による胎仔動脈管収縮が報告されている〔2.9参照〕。
9.5.2. 妊婦<妊娠後期を除く>又は妊娠している可能性のある女性:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(投与する際には、必要最小限にとどめ、羊水量、胎児の動脈管収縮を疑う所見を妊娠週数や投与日数を考慮して適宜確認するなど慎重に投与すること)。ケトプロフェンの外皮用剤を妊娠中期の女性に使用し、羊水過少症が起きたとの報告がある。また、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(経口剤、坐剤)を妊婦に使用し、胎児の腎機能障害及び尿量減少、それに伴う羊水過少症が起きたとの報告がある。シクロオキシゲナーゼ阻害剤(全身作用を期待する製剤)を妊娠中期の妊婦に使用し、胎児動脈管収縮が起きたとの報告がある。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている)。
小児等
副作用の発現に特に注意し、必要最小限の使用にとどめるなど慎重に投与すること(小児等を対象とした臨床試験は実施していない)。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
本剤はできるだけ排便後に投与すること。
取扱い上の注意
アルミピロー包装開封後は、遮光して保存すること。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
非ステロイド性消炎鎮痛剤を長期間投与されている女性において、一時的不妊が認められたとの報告がある。
保管上の注意
冷所保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 ケトプロフェン坐剤50mg「日新」
有効成分 1個中
日本薬局方ケトプロフェン
50mg
添加剤 ハードファット、軽質無水ケイ酸
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3.2 製剤の性状
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販売名 ケトプロフェン坐剤50mg「日新」
性状 白色〜淡黄色の紡すい形の坐剤で、わずかに脂肪臭を有する
溶融温度 35〜37℃
外形 <<図省略>>
大きさ 長さ:26mm
直径:8mm
重量 1.0g
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薬効薬理
18.1 作用機序
ケトプロフェンの抗炎症鎮痛作用の主な作用機序として、(1)ブラジキニン遊離抑制作用(ラット)、(2)プロスタグランジン合成抑制作用、(3)タンパク熱変性抑制作用及び溶血阻止作用、(4)血管透過性亢進抑制作用(ウサギ)、(5)白血球遊走阻止作用等が考えられている。
18.2 急性炎症に対する効果
ケトプロフェンは直腸内投与により、カラゲニン足蹠浮腫(ラット)、紫外線紅斑(モルモット)及び血管透過性亢進(マウス)のいずれにおいても経口投与時とほぼ同等の強い抑制作用を示した。
18.3 持続性炎症に対する作用
ケトプロフェンは直腸内投与により、マスタード足蹠浮腫(ラット)、肉芽増殖(ラット)に対して優れた抑制効果を示した。
18.4 鎮痛作用
ケトプロフェンは直腸内投与により、酢酸ストレッチング法(マウス)、Haffner変法(マウス)及びRandall & Selitto法(ラット)において、経口投与時とほぼ同等の鎮痛作用を示した。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 生物学的同等性試験
〈ケトプロフェン坐剤50mg「日新」〉
ケトプロフェン坐剤50mg「日新」とメナミン坐剤50を、クロスオーバー法によりそれぞれ1個(ケトプロフェンとして50mg)健康成人男子に絶食時単回直腸内投与して血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両製剤の生物学的同等性が確認された。
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判定パラメータ 参考パラメータ
AUC0−8(μg・hr/mL) Cmax(μg/mL) Tmax(hr) T1/2(hr)
ケトプロフェン坐剤50mg「日新」 9.15±2.64 3.71±0.59 1.11±0.29 1.61±0.22
メナミン坐剤50 9.17±1.74 3.57±0.57 1.07±0.18 1.55±0.21
(Mean±S.D.、n=14)
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<<図省略>>
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
〈ケトプロフェン坐剤75mg「日新」〉
ケトプロフェン坐剤75mg「日新」とメナミン坐剤75を、クロスオーバー法によりそれぞれ1個(ケトプロフェンとして75mg)健康成人男子に絶食時単回直腸内投与して血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両製剤の生物学的同等性が確認された。
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判定パラメータ 参考パラメータ
AUC0−8(μg・hr/mL) Cmax(μg/mL) Tmax(hr) T1/2(hr)
ケトプロフェン坐剤75mg「日新」 16.22±2.64 5.36±1.46 1.79±0.64 1.65±0.29
メナミン坐剤75 15.51±2.85 5.56±1.51 1.46±0.57 1.55±0.28
(Mean±S.D.、n=14)
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<<図省略>>
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.5 排泄
ケトプロフェンはそのほとんどがグルクロン酸抱合体として速やかに尿中に排泄される。尿中排泄率は12時間で60〜70%であった。