Antaa DI

drug

レクサプロ錠10mg

エスシタロプラムシュウ酸塩錠

SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬) >>

特徴

  • 既存のSSRIに比べてセロトニンにより選

専門医コメント

治療効果が得られるまでの期間が短く、嘔気

用法・用量

通常、成人にはエスシタロプラムとして10mgを1日1回夕食後に経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行い、1日最高用量は20mgを超えないこととする。

禁忌

2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。

2.2. モノアミン酸化酵素<MAO>阻害剤投与中あるいは投与中止後14日間以内(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩、サフィナミドメシル酸塩)の患者〔10.1、11.1.3参照〕。

2.3. ピモジド投与中の患者〔10.1、11.1.4、16.7.2参照〕。2.4. QT延長のある患者(先天性QT延長症候群等)[心室頻拍(torsade de pointesを含む)、心電図QT間隔の過度な延長を起こすことがある]〔8.7、11.1.4参照〕。

用法・用量に関連する注意

7.1. 本剤の投与量は必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら投与すること。

7.2. 肝機能障害患者、高齢者、遺伝的にCYP2C19の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では、本剤の血中濃度が上昇し、QT延長等の副作用が発現しやすいおそれがあるため、10mgを上限とすることが望ましく、また、投与に際しては患者の状態を注意深く観察し、慎重に投与すること〔8.7、9.1.1、9.1.2、9.3肝機能障害患者、9.8高齢者の項、11.1.4、16.1.1、16.1.2、16.5、16.6.2−16.6.4参照〕。

腎機能用量

15≦CCr<60:腎機能正常者と同じ

CCr<15・透析:1日1回10mgまで

適応

うつ病・うつ状態、社会不安障害

効果・効能

うつ病・うつ状態、社会不安障害。

効果・効能に関連する注意

5.1. 〈効能共通〉抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること〔8.1−8.4、9.1.3、9.1.4、15.1.1参照〕。5.2. 〈うつ病・うつ状態〉本剤を12歳未満の大うつ病性障害患者に投与する際には適応を慎重に検討すること〔9.7.2参照〕。

5.3. 〈社会不安障害〉社会不安障害の診断は、DSM*等の適切な診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。

*)DSM:American Psychiatric Association(米国精神医学会)のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神疾患の診断・統計マニュアル)。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

11.1. 重大な副作用

11.1.1. 痙攣(0.1%)〔9.1.7参照〕。

11.1.2. 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)(頻度不明):低ナトリウム血症、頭痛、集中力欠如、記憶障害、錯乱、幻覚、痙攣、失神等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等適切な処置を行うこと。11.1.3. セロトニン症候群(頻度不明):不安、焦燥、興奮、振戦、ミオクローヌス、高熱等のセロトニン症候群があらわれることがあり、セロトニン作用薬との併用時に発現する可能性が高くなるため、特に注意すること(異常が認められた場合には投与を中止し、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと)〔2.2、10.1、10.2参照〕。

11.1.4. QT延長(頻度不明)、心室頻拍(torsade de pointesを含む)(頻度不明)〔2.3、2.4、7.2、8.7、9.1.1、10.1、10.2参照〕。

その他の副作用

11.2. その他の副作用

1). 全身症状:(5%以上)倦怠感、(1〜5%未満)異常感、(1%未満)無力症、浮腫、熱感、発熱、悪寒、疲労、体重増加、体重減少。

2). 過敏症:(1%未満)発疹、湿疹、蕁麻疹、そう痒、(頻度不明)アナフィラキシー反応、血管浮腫。

3). 精神神経系:(5%以上)傾眠(22.6%)、浮動性めまい、頭痛、(1〜5%未満)あくび、不眠症、体位性めまい、感覚鈍麻、易刺激性(いらいら感、焦燥)、(1%未満)アカシジア、睡眠障害、異常夢(悪夢を含む)、激越、不安、錯乱状態、躁病、落ち着きのなさ、錯感覚(ピリピリ感等)、振戦、リビドー減退、歯ぎしり、(頻度不明)パニック発作、精神運動不穏、失神、幻覚、神経過敏、離人症、ジスキネジー、運動障害、無オルガズム症。

4). 消化器:(5%以上)悪心(20.7%)、口渇、(1〜5%未満)腹部不快感、下痢、食欲減退、腹痛、嘔吐、便秘、(1%未満)腹部膨満、胃炎、食欲亢進、消化不良。

5). 循環器:(1〜5%未満)動悸、(1%未満)起立性低血圧、QT延長、(頻度不明)頻脈、徐脈。

6). 血液:(1%未満)赤血球減少、ヘマトクリット減少、ヘモグロビン減少、白血球増加、血小板増加、血小板減少、鼻出血、(頻度不明)出血傾向(斑状出血、消化管出血等)。

7). 肝臓:(1〜5%未満)AST上昇・ALT上昇・Al−P上昇・γ−GTP上昇・ビリルビン上昇等の肝機能検査値異常、(頻度不明)肝炎。8). 筋骨格系:(1%未満)関節痛、筋肉痛、肩こり、こわばり。9). 泌尿器・生殖器:(1〜5%未満)排尿困難、尿蛋白陽性、射精障害、(1%未満)頻尿、尿閉、不正出血、勃起不全、射精遅延、(頻度不明)持続勃起症、月経過多。10). その他:(1〜5%未満)回転性めまい、耳鳴、多汗症、(1%未満)副鼻腔炎、味覚異常、脱毛、コレステロール上昇、血中ナトリウム低下、乳汁漏出、胸部不快感、寝汗、羞明、霧視、過換気、尿糖陽性、(頻度不明)視覚異常、散瞳、高プロラクチン血症。

重要な基本的な注意

8.1. うつ症状を呈する患者は希死念慮があり、自殺企図のおそれがあるので、このような患者は投与開始早期ならびに投与量を変更する際には患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること〔5.1、8.2−8.4、9.1.3、9.1.4、15.1.1参照〕。

8.2. 不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されているので、患者の状態及び病態の変化を注意深く観察するとともに、不安増悪、焦燥増悪、興奮増悪、パニック発作増悪、不眠増悪、易刺激性増悪、敵意増悪、攻撃性増悪、衝動性増悪、アカシジア増悪/精神運動不穏増悪、軽躁増悪、躁病増悪等が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行うこと〔5.1、8.1、8.3、8.4、9.1.3−9.1.6、15.1.1参照〕。

8.3. 自殺目的での過量服用を防ぐため、自殺傾向が認められる患者に処方する場合には、1回分の処方日数を最小限にとどめること〔5.1、8.1、8.2、8.4、9.1.3、9.1.4、15.1.1参照〕。

8.4. 家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること〔5.1、8.1−8.3、9.1.3−9.1.6、15.1.1参照〕。

8.5. 眠気、めまい等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。8.6. 投与中止(突然の中止)により、不安、焦燥、興奮、浮動性めまい、錯感覚、頭痛及び悪心等があらわれることが報告されているので、投与を中止する場合には、突然の中止を避ける(患者の状態を観察しながら徐々に減量すること)。8.7. 本剤投与によりQT延長がみられていることから、心血管系障害を有する患者に対しては、本剤の投与を開始する前に心血管系の状態に注意を払うこと〔2.4、7.2、9.1.1、11.1.4参照〕。

特定の背景を有する患者に関する注意

合併症・既往歴等のある患者

9.1.1. QT延長を起こすリスクのある患者〔7.2、8.7、10.2、11.1.4参照〕。

(1). 著明な徐脈等の不整脈又はその既往歴のある患者。(2). うっ血性心不全の患者。

(3). 低カリウム血症の患者。

9.1.2. CYP2C19の活性が遺伝的に欠損している患者〔7.2、16.1.1、16.1.2、16.5、16.6.4参照〕。

9.1.3. 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者:自殺念慮、自殺企図があらわれることがある〔5.1、8.1−8.4、9.1.4、15.1.1参照〕。

9.1.4. 躁うつ病患者:躁転、自殺企図があらわれることがある〔5.1、8.1−8.4、9.1.3、15.1.1参照〕。

9.1.5. 脳器質的障害又は統合失調症素因のある患者:精神症状が増悪することがある〔8.2、8.4、9.1.6参照〕。

9.1.6. 衝動性が高い併存障害を有する患者:精神症状が増悪することがある〔8.2、8.4、9.1.5参照〕。

9.1.7. てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者:痙攣発作を起こすことがある〔11.1.1参照〕。

9.1.8. 出血の危険性を高める薬剤を併用している患者、出血傾向又は出血性素因のある患者:出血傾向が増強するおそれがある〔10.2参照〕。9.1.9. 閉塞隅角緑内障の患者:眼圧上昇を起こし、症状が悪化するおそれがある。

腎機能障害患者

9.2.1. 高度腎機能障害のある患者:本剤のクリアランスが低下し、血中濃度が上昇するおそれがある〔16.6.1参照〕。

肝機能障害患者

肝機能障害患者:本剤のクリアランスが低下し、血中濃度が上昇するおそれがある〔7.2、16.6.2参照〕。

相互作用

本剤は主にCYP2C19で代謝され、CYP2D6及びCYP3A4も代謝に関与している〔16.4.1参照〕。

10.1. 併用禁忌:

1). モノアミン酸化酵素<MAO>阻害剤<リネゾリド・メチルチオニニウム以外>(セレギリン塩酸塩<エフピー>、ラサギリンメシル酸塩<アジレクト>、サフィナミドメシル酸塩<エクフィナ>)〔2.2、11.1.3参照〕[セロトニン症候群があらわれることがあるので、MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後14日間以内の患者には投与しないこと(また、本剤投与後にMAO阻害剤を投与する場合には、14日間以上の間隔をあけること)(セロトニンの分解が阻害され、脳内セロトニン濃度が高まると考えられる)]。

2). ピモジド〔2.3、11.1.4、16.7.2参照〕[本剤のラセミ体であるシタロプラムとピモジドとの併用により、QT延長が発現したとの報告がある(機序は不明である)]。

10.2. 併用注意:

1). セロトニン作用薬(トリプタン系薬剤(スマトリプタンコハク酸塩等)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン前駆物質含有製剤(L−トリプトファン含有製剤)又はセロトニン前駆物質含有食品(L−トリプトファン含有食品)等、トラマドール塩酸塩、リネゾリド、炭酸リチウム、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品(St.John’s Wort)等)〔11.1.3参照〕[セロトニン症候群等のセロトニン作用による症状があらわれることがあるので、これらの薬物を併用する際には観察を十分に行うこと(本剤はセロトニン再取り込み阻害作用を有するため、併用により、セロトニン作用が増強することがある)]。

2). メチルチオニニウム塩化物水和物<メチレンブルー>〔11.1.3参照〕[セロトニン症候群等のセロトニン作用による症状があらわれることがあるので、これらの薬物を併用する際には観察を十分に行うこと(メチルチオニニウム塩化物水和物はMAO阻害作用を有するため、セロトニン作用が増強される)]。

3). 三環系抗うつ剤(イミプラミン塩酸塩、クロミプラミン塩酸塩、ノルトリプチリン塩酸塩等)、フェノチアジン系抗精神病剤、リスペリドン、ブチロフェノン系抗精神病剤(ハロペリドール)、抗不整脈剤(フレカイニド酢酸塩、プロパフェノン塩酸塩)〔16.7.1参照〕[これらの薬剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、これらの薬剤を減量するなど注意すること(本剤がこれらの薬剤の代謝酵素であるCYP2D6を阻害することによると考えられる)]。

4). β遮断剤(メトプロロール酒石酸塩)〔16.7.1参照〕[メトプロロールの血中濃度が上昇するおそれがあるので、メトプロロールを減量するなど注意すること(本剤がこれらの薬剤の代謝酵素であるCYP2D6を阻害することによると考えられる)]。

5). シメチジン〔16.7.1参照〕[本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤を減量するなど注意すること(シメチジンが本剤の代謝酵素を阻害することによると考えられる)]。

6). オメプラゾール、ランソプラゾール、チクロピジン塩酸塩〔16.7.1参照〕[本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤を減量するなど注意すること(これらの薬剤が本剤の代謝酵素であるCYP2C19を阻害することによると考えられる)]。

7). ワルファリンカリウム〔16.7.2参照〕[本剤のラセミ体であるシタロプラムとワルファリンとの併用により、ワルファリンのプロトロンビン時間が軽度延長<約5%>したとの報告があるので、本剤の投与を開始もしくは中止する場合は、プロトロンビン時間を慎重にモニターすること(機序は不明である)]。8). 出血傾向が増強する薬剤(非定型抗精神病剤、フェノチアジン系抗精神病剤、三環系抗うつ剤、アスピリン等の非ステロイド系抗炎症剤、ワルファリンカリウム等)〔9.1.8参照〕[出血傾向が増強することがある(SSRIの投与により血小板凝集能が阻害され、これらの薬剤との併用により出血傾向が増強することがある)]。9). アルコール(飲酒)[本剤服用中は飲酒を避けることが望ましい(他の抗うつ剤で作用の増強が報告されている)]。

10). QT延長を起こすことが知られている薬剤〔9.1.1、11.1.4参照〕[QT延長を起こすおそれがある(併用によりQT延長作用が相加的に増強するおそれがある)]。

高齢者

用量に留意して、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること(高齢者での薬物動態試験で、血中濃度が高い傾向が認められている)〔7.2、16.6.3参照〕。

妊婦・授妊婦

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

9.5.1. 生殖発生毒性試験(ラット)において、臨床曝露量を超える高い曝露により胎仔毒性(胎仔体重減少、胎仔骨化遅延)及び出生仔死亡率増加が認められた。なお、動物実験(ラット)において、催奇形作用は認められていない。9.5.2. 本剤のラセミ体であるシタロプラムの生殖発生毒性試験(ラット)において、心血管系異常を有する胎仔数増加が認められたが、再試験においては認められなかった。

9.5.3. 妊娠末期に本剤あるいは他のSSRI、SNRIを投与された妊婦から出生した新生児において、入院期間の延長・呼吸補助・経管栄養を必要とする離脱症状と同様の症状が出産直後にあらわれたとの報告がある(臨床所見としては、呼吸窮迫、チアノーゼ、無呼吸、発作、体温調節障害、哺乳障害、嘔吐、低血糖症、筋緊張低下、筋緊張亢進、反射亢進、振戦、ぴくつき、易刺激性、持続性の泣きが報告されている)。9.5.4. 海外の疫学調査において、妊娠中に本剤のラセミ体であるシタロプラムを含む他のSSRIを投与された妊婦から出生した新生児において、新生児遷延性肺高血圧症のリスクが増加したとの報告がある。このうち1つの調査では、妊娠34週以降に生まれた新生児における新生児遷延性肺高血圧症発生のリスク比は、妊娠早期の投与では2.4(95%信頼区間1.2−4.3)、妊娠早期及び後期の投与では3.6(95%信頼区間1.2−8.3)であった。

授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ヒト母乳中へ移行することが報告されている)。

小児等

9.7.1. 小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.7.2. 海外で実施された6〜17歳の大うつ病性障害(DSM−4における分類)患者を対象としたプラセボ対照の臨床試験において、6〜11歳の大うつ病性障害患者で有効性が確認できなかったとの報告がある〔5.2参照〕。

過剰投与

13.1. 症状

海外において、本剤1000mgを超える過量投与が報告されている。また、本剤を過量投与した患者において、死亡例が海外で報告されている(主な症状として、中枢神経障害(めまい、振戦、不安、焦燥、興奮、セロトニン症候群、痙攣、昏睡)、胃腸障害(悪心・嘔吐等)、心血管障害(低血圧、頻脈、QT延長、不整脈)、電解質及び水分バランス異常(低カリウム血症、低ナトリウム血症)等が報告されている)。13.2. 処置

過量投与時、特異的な解毒剤は知られていない。

適用上の注意

14.1. 薬剤交付時の注意

PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。

その他の注意

15.1. 臨床使用に基づく情報

15.1.1. 海外で実施された大うつ病性障害等の精神疾患を有する患者を対象とした、本剤を含む複数の抗うつ剤の短期プラセボ対照臨床試験の検討結果において、24歳以下の患者では、自殺念慮や自殺企図の発現のリスクが抗うつ剤投与群でプラセボ群と比較して高かった。なお、25歳以上の患者における自殺念慮や自殺企図の発現のリスクの上昇は認められず、65歳以上においてはそのリスクが減少した〔5.1、8.1−8.4、9.1.3、9.1.4参照〕。

15.1.2. 主に50歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において、選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ剤を含む抗うつ剤を投与された患者で、骨折のリスクが上昇したとの報告がある。

15.1.3. 海外で実施された臨床試験において、本剤を含む選択的セロトニン再取り込み阻害剤が精子特性を変化させ、受精率に影響を与える可能性が報告されている。15.2. 非臨床試験に基づく情報

15.2.1. ラット反復投与毒性試験において、本剤投与後に、心毒性(心筋炎に基づくうっ血性心不全)による死亡が認められている。心毒性は本剤のCmaxに依存して発現するものと考えられ、発現の閾値におけるラット及びヒト曝露量の乖離は約8倍と推察されている。

15.2.2. ラット反復投与毒性試験において、本剤投与後に、肺リン脂質症、精巣上体リン脂質症及び副腎リン脂質症に関連する所見(光顕的に認められる泡沫状肺胞マクロファージの集簇及び細胞空胞化)が認められ、これらの所見はヒトにおける曝露量よりも低い曝露量より認められた(休薬により、リン脂質症に関連する所見は回復した)。

保管上の注意

室温保存。

組成・性状

3.1 組成

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販売名 レクサプロ錠10mg

有効成分 1錠中 エスシタロプラムシュウ酸塩 12.77mg

(エスシタロプラムとして10mg)

添加剤 タルク、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース・軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール400、酸化チタン

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3.2 製剤の性状

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販売名 レクサプロ錠10mg

性状 白色でだ円形の割線のあるフィルムコーティング錠

外形(mm) <<図省略>> <<図省略>>

<<図省略>>

重量(mg) 約128

識別コード MO183

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薬効薬理

18.1 作用機序

エスシタロプラムは選択的なセロトニン(5‐HT)再取り込み阻害作用を示し、脳内での細胞外5‐HT濃度を持続的に上昇させることにより5‐HT神経系を賦活化し抗うつ作用を示すと考えられる。

18.2 抗うつ作用

18.2.1 マウス強制水泳試験において無動時間を短縮した。

18.2.2 ラット慢性緩和ストレスモデルにおいて、ストレス負荷により減少したショ糖溶液摂取量をストレス非負荷動物と同程度に回復させた。

18.2.3 ラット社会的ストレスモデルにおいて、居住ラットの侵入ラットに対する攻撃行動を単回投与では減少させ、逆に反復投与では増加させた。

18.3 セロトニン再取り込み阻害作用

18.3.1 ラット脳シナプトソームを用いたin vitro実験において5‐HT取り込みを阻害し(50%抑制濃度は2.1nmol/L)、in vivoにおいてもラット前頭皮質中の細胞外5‐HT濃度を上昇させた。

18.3.2 ヒトモノアミントランスポータ発現細胞において、エスシタロプラムの5‐HTトランスポータに対する選択性(結合親和性定数の比率)はノルアドレナリントランスポータ及びドパミントランスポータと比較して各々7100倍及び24000倍であった(in vitro)。

18.3.3 脳内5‐HT神経系の賦活化により惹起されるマウスの行動変化を増強したが、ノルアドレナリン神経系及びドパミン神経系の賦活化により惹起される行動変化には影響を及ぼさなかった。

18.3.4 ヒト及び各種動物由来の受容体、イオンチャネル及びトランスポータ(計144種類)を用いた実験において、エスシタロプラムは高濃度でσ1受容体に対する結合性が認められたが、その他の各種神経伝達物質の受容体に対してほとんど結合性を示さなかった(in vitro)。

薬物動態

16.1 血中濃度

16.1.1 単回投与

健康成人(CYP2C19のPM(Poor Metabolizer)及びEM(Extensive Metabolizer)各6例)に絶食下で本剤5mg、10mg、20mgを単回経口投与した。CYP2C19EM群では投与後3.8〜4.3時間で最高血漿中濃度(Cmax)に達し、消失半減期(t1/2)は24.6〜27.7時間であり、Cmax及び血中濃度−時間曲線下面積(AUC)は投与量にほぼ比例して増加した。CYP2C19PM群における最高血漿中濃度到達時間及びCmaxはCYP2C19EM群と同程度であったが、AUC及びt1/2はCYP2C19EM群の約2倍であった。[7.2、9.1.2、16.6.4参照]

<<図省略>>

単回投与時の薬物動態パラメータ

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CYP2C19遺伝子型注1) 投与量(mg) Cmax(ng/mL) tmax(hr) AUC0−∞(ng・hr/mL) t1/2(hr)

EM             5       5.7±0.8     3.8±1.3  183±70           24.6±9.9

               10      10.8±2.1    3.8±0.4  418±153          27.7±7.5

               20      23.0±4.3    4.3±1.4  807±282          27.4±7.2

PM             5       5.5±0.6     4.2±1.5  384±109          55.8±16.4

               10      12.9±2.3    4.8±1.8  885±384          51.2±16.9

               20      24.7±4.7    5.2±1.8  1595±356         55.3±8.7

(Mean±S.D.、n=6)

注1)EM:CYP2C19*1/*1、CYP2C19*1/*2、CYP2C19*1/*3

PM:CYP2C19*2/*2、CYP2C19*2/*3、CYP2C19*3/*3

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16.1.2 反復投与

健康成人(CYP2C19のPM及びEM各5例)に本剤10mgを1日1回21日間反復経口投与した。CYP2C19EM群、CYP2C19PM群のいずれにおいても血漿中濃度は投与回数に従い徐々に上昇し、CYP2C19EM群では投与15日目までに、CYP2C19PM群では投与19日目までにほぼ定常状態に達した。CYP2C19PM群の21日間反復投与後におけるCmax、AUC及びt1/2のいずれも、CYP2C19EM群と比較して約2倍高値であった。[7.2、9.1.2、16.6.4参照]

反復投与時の薬物動態パラメータ(投与21日目)

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CYP2C19遺伝子型注2) Cmax(ng/mL) tmax(hr) AUC0−24(ng・hr/mL) t1/2(hr)

EM             26.8±6.1    3.0±1.0  506±132           37.7±7.5

PM             53.9±12.9   6.4±3.3  1094±266          57.8±14.7

(Mean±S.D.、n=5)

注2)EM:CYP2C19*1/*1、CYP2C19*1/*2、CYP2C19*1/*3

PM:CYP2C19*2/*2、CYP2C19*2/*3、CYP2C19*3/*3

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16.2 吸収

16.2.1 食事の影響

健康成人(17例)に絶食下又は高脂肪食摂取後に本剤20mgを単回経口投与したとき、Cmax及びAUCは両群で統計学的有意差は認められず、食事の影響は認められなかった(外国人データ)。

16.2.2 生物学的利用率

本剤のラセミ体であるシタロプラム40mgを健康成人12例に単回経口投与したときの生物学的利用率は79.5%であった(外国人データ)。

16.3 分布

16.3.1 分布容積

健康成人(CYP2C19のPM及びEM各6例)に本剤5mg、10mg、20mgを単回経口投与したときのみかけの分布容積(Vz/F)は872〜1053Lであった。

16.3.2 血漿蛋白結合率

ヒト血漿にエスシタロプラム(20〜100ng/mL)を添加したとき、検討した濃度範囲における血漿蛋白結合率はほぼ一定であり、その平均値は55.4%であった(in vitro、外国人データ)。

16.4 代謝

16.4.1 エスシタロプラムは主にCYP2C19によりデメチル化体へ代謝され、また、デメチル化体への代謝には、CYP2D6及びCYP3A4が関与する。デメチル化体はCYP2D6によりジデメチル化体へ代謝される。また、エスシタロプラムの一部はCYP2D6あるいはモノアミンオキシダーゼ並びにアルデヒド酸化酵素により酸化されN‐オキサイド体あるいはプロピオン酸体に代謝されることが報告されている。エスシタロプラムは、肝臓でこれら代謝物に変換された後、そのまま、あるいはグルクロン酸抱合体として尿中に排泄されると考えられる。[10.参照]

16.4.2 健康成人に本剤を単回あるいは反復経口投与したときのCmax及びAUCは、エスシタロプラム、デメチル化体、ジデメチル化体の順に高かった。また、ジデメチル化体の尿中排泄率は、エスシタロプラムあるいはデメチル化体に比較して低かった。

16.5 排泄

健康成人(CYP2C19のPM及びEM各6例)に本剤5mg、10mg、20mgを単回経口投与したとき、投与後168時間後までのエスシタロプラムの尿中排泄率は、CYP2C19EM群では投与量の12.9〜13.2%、CYP2C19PM群では21.2〜21.9%であった。また、健康成人(CYP2C19のPM及びEM各5例)に本剤10mgを1日1回21日間反復経口投与したとき、最終回投与後24時間までのエスシタロプラムの尿中排泄率は、CYP2C19EM群では投与量の17.4%、CYP2C19PM群では30.7%であった。[7.2、9.1.2、16.6.4参照]

16.6 特定の背景を有する患者

16.6.1 腎機能障害患者

本剤のラセミ体であるシタロプラム20mgを腎機能が低下(糸球体濾過量:10〜53mL/min)した患者7例に単回経口投与したとき、健康成人と比較してt1/2は1.35倍延長し、AUC(投与量で補正)は1.24倍に上昇したが、Cmax(投与量で補正)、tmax及びVz/Fはほぼ同程度であった(外国人データ)。[9.2.1参照]

16.6.2 肝機能障害患者

本剤20mgを軽度〜中等度(Child‐Pugh分類のA又はB)の肝機能低下患者8例に単回経口投与したとき、肝機能障害の程度に応じてAUCが上昇し、軽度、中等度の肝機能低下患者におけるAUCは、健康成人のそれぞれ1.37倍、1.61倍であった(外国人データ)。[7.2、9.3参照]

16.6.3 高齢者

本剤10mg、20mg及び30mg注3)を絶食下単回経口投与したときの高齢者(14例、65〜73歳)におけるCmaxは非高齢者(15例、19〜35歳)と同程度であったが、AUC及びt1/2は非高齢者と比較してそれぞれ1.29〜1.35倍、1.48〜1.53倍上昇あるいは延長した。また、本剤10mgを1日1回21日間反復経口投与したときの高齢者(18例、64〜80歳)におけるエスシタロプラムのCmax及びAUCは、非高齢者(18例、23〜35歳)のそれぞれ1.34倍、1.50倍に上昇した(外国人データ)。[7.2、9.8参照]

16.6.4 薬物代謝酵素の活性が遺伝的に欠損している者

(1)CYP2C19

[7.2、9.1.2、16.1.1、16.1.2、16.5参照]

(2)CYP2D6

本剤を健康成人に経口投与あるいは静脈内投与注3)したとき、CYP2D6PMにおけるCmax及びAUCは、8例中1例でCYP2D6EMにおける値のそれぞれ1.2倍及び1.3倍であったが、他の7例ではCYP2D6EMと同程度であった(外国人データ)。

注3)本剤の承認用法及び用量は、1日1回20mgまでの経口投与である。

16.7 薬物相互作用

16.7.1 本剤を用いた試験の成績

(1)オメプラゾール

健康成人(16例)にオメプラゾール30mgを1日1回6日間反復経口投与し、5日目に本剤20mgを併用経口投与したとき、本剤のCmaxには影響は認められなかったが、AUCが1.51倍に上昇した(外国人データ)。[10.2参照]

(2)シメチジン

健康成人(16例)にシメチジン400mgを1日2回5日間反復経口投与し、4日目に本剤20mgを併用経口投与したとき、本剤のCmaxには影響は認められなかったが、AUCが1.72倍に上昇した(外国人データ)。[10.2参照]

(3)メトプロロール

健康成人(15例)に本剤を反復経口投与(10mg/日を1週間、引き続き20mg/日を3週間)し、最終投与日(28日)にメトプロロール100mgを併用経口投与したとき、メトプロロールのCmax及びAUCがそれぞれ1.75倍、2.27倍に上昇した(外国人データ)。[10.2参照]

(4)デシプラミン

健康成人(20例)に本剤を反復経口投与(10mg/日を1週間、引き続き20mg/日を3週間)し、最終投与日(28日)にデシプラミン50mg(国内販売中止)を併用経口投与したとき、デシプラミンのCmax及びAUCがそれぞれ1.41倍、2.07倍に上昇した(外国人データ)。[10.2参照]

(5)リトナビル

健康成人(18例)に本剤20mgとリトナビル600mgを併用経口投与したとき、本剤及びリトナビルの薬物動態に影響は認められなかった(外国人データ)。

16.7.2 本剤のラセミ体であるシタロプラム(国内未発売)を用いた試験の成績

(1)レボメプロマジン

健康成人(8例)にシタロプラム40mgを1日1回10日間反復経口投与し、7日目にレボメプロマジン50mgを併用経口投与したとき、シタロプラム及びレボメプロマジンの薬物動態に影響は認められなかった(外国人データ)。

(2)トリアゾラム

健康成人(17例)にシタロプラムを反復経口投与(20mg/日を7日間、引き続き40mg/日を23日間)し、最終投与日(30日)にトリアゾラム0.25mgを併用経口投与したとき、シタロプラム及びトリアゾラムの薬物動態に影響は認められなかった(外国人データ)。

(3)カルバマゼピン

健康成人(12例)にカルバマゼピンを反復経口投与(100mgを2回/日を3日間、引き続き200mgを2回/日を3日間、400mg/日を29日間)し、22日目よりシタロプラム40mgを1日1回14日間反復併用経口投与したとき、カルバマゼピンの薬物動態に影響は認められなかった(外国人データ)。

(4)ピモジド

健康成人(26例)にシタロプラム40mgを1日1回11日間反復経口投与し、最終投与日(11日)にピモジド2mgを併用経口投与したとき、ピモジドの薬物動態に影響は認められなかった。一方、併用時のQTcはピモジド単独投与時と比べ有意に延長した(QTcのベースラインからの変化量:併用時9.6〜14.1msec、単独投与時2.1〜2.3msec)(外国人データ)。[2.3、10.1参照]

(5)ケトコナゾール

健康成人(17例)にシタロプラム40mg及びケトコナゾール(経口剤は国内未発売)200mgを併用経口投与したとき、シタロプラムの薬物動態に影響は認められなかった。また、ケトコナゾール単独投与時と比べ、ケトコナゾールのtmaxは遅延(併用時2.4時間、単独投与時1.9時間)し、Cmaxが0.79倍に低下したが、AUC及びt1/2は同程度であった(外国人データ)。

(6)ワルファリン

健康成人(12例)にシタロプラム40mgを1日1回21日間反復経口投与し、15日目にワルファリン25mgを併用経口投与したとき、S‐ワルファリン及びR‐ワルファリンの薬物動態に影響は認められなかった。また、併用時のプロトロンビン時間の最大値(Rmax)及びプロトロンビン時間−時間曲線下面積(AUCPT)はワルファリン単独投与時に比べ有意に増加したがその増加の程度は軽度であった(Rmax及びAUCPT:併用時26.7sec及び3260sec・hr、単独投与時25.1sec及び3098sec・hr)(外国人データ)。[10.2参照]

(7)ジゴキシン

健康成人(11例)にシタロプラム40mgを1日1回29日間反復経口投与し、22日目にジゴキシン1mgを併用経口投与したとき、シタロプラム及びジゴキシンの薬物動態に影響は認められなかった(外国人データ)。

(8)リチウム

健康成人(8例)にシタロプラム40mgを1日1回10日間反復経口投与し、3日目から7日目までリチウム30mmolを1日1回5日間反復併用経口投与したとき、シタロプラム及びリチウムの薬物動態に影響は認められなかった(外国人データ)。