Antaa DI

drug

ジプレキサ筋注用10mg

特徴

  • 等価換算量:リスペリドン1㎎=セレネース

専門医コメント

非定型抗精神病薬の中でも、陽性症状、陰性

用法・用量

通常、成人にはオランザピンとして1回10mgを筋肉内注射する。効果不十分な場合には、1回10mgまでを追加投与できるが、前回の投与から2時間以上あけること。また、投与回数は、追加投与を含め1日2回までとすること。年齢、症状に応じて減量を考慮すること。

禁忌

2.1. 昏睡状態の患者[昏睡状態を悪化させるおそれがある]。2.2. バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強される]。

2.3. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。

2.4. アドレナリン投与中<アナフィラキシー救急治療・歯科浸潤又は伝達麻酔除く>の患者〔10.1、13.2参照〕。

用法・用量に関連する注意

本剤の追加投与により、過鎮静等の副作用が発現するおそれがあるので、追加投与の必要性を慎重に判断し、追加投与後は患者の状態を十分に観察すること。経口抗精神病薬等による管理が可能になった場合には、速やかに本剤の投与を終了すること(国内外臨床試験において、3日間を超えて連用した経験はない)。

腎機能用量

腎機能正常者と同じ

適応

【内服】統合失調症、双極性障害における躁症状の改善、双極性障害におけるうつ症状の改善、抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)【注射】統合失調症における精神運動興奮

効果・効能

統合失調症における精神運動興奮。

効果・効能に関連する注意

急激な精神運動興奮等で緊急を要する場合に用いること。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

11.1. 重大な副作用

11.1.1. 高血糖(頻度不明)、糖尿病性ケトアシドーシス(頻度不明)、糖尿病性昏睡(頻度不明):高血糖があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡から死亡に至るなどの致命的経過をたどることがあるので、血糖値の測定や、口渇、多飲、多尿、頻尿等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、インスリン製剤の投与を行うなど、適切な処置を行うこと〔1.1、1.2、8.1、8.3、9.1.1参照〕。

11.1.2. 低血糖(頻度不明):脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと〔8.2、8.3参照〕。

11.1.3. 悪性症候群(Syndrome malin)(頻度不明):無動緘黙、強度筋強剛、脈拍変動及び血圧変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、水分補給、体冷却等の全身管理とともに、適切な処置を行うこと(本症発症時には、血清CK上昇や白血球増加がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能低下に注意すること)、なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎障害へと移行し、死亡した例が報告されている。11.1.4. 肝機能障害、黄疸(頻度不明):AST上昇、ALT上昇、γ−GTP上昇、Al−P上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。11.1.5. 痙攣(頻度不明):痙攣(強直間代性痙攣、部分発作、ミオクロヌス発作等)があらわれることがある。

11.1.6. 遅発性ジスキネジア(頻度不明):長期投与により、不随意運動(特に口周部不随意運動)があらわれ、投与中止後も持続することがある。11.1.7. 横紋筋融解症(頻度不明):筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。11.1.8. 麻痺性イレウス(頻度不明):腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部膨満あるいは腹部弛緩及び腸内容物うっ滞等の症状)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1.9. 無顆粒球症、白血球減少(頻度不明)。

11.1.10. 肺塞栓症、深部静脈血栓症(頻度不明):肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、観察を十分に行い、息切れ、胸痛、四肢疼痛、浮腫等が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと〔9.1.6参照〕。11.1.11. 薬剤性過敏症症候群(頻度不明):初期症状として発疹、発熱がみられ、更に肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと(なお、ヒトヘルペスウイルス6再活性化(HHV−6再活性化)等のウイルス再活性化を伴うことが多く、投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること)。

その他の副作用

11.2. その他の副作用

1). 精神神経系:(5%以上)傾眠、(1〜5%)浮動性めまい、(頻度不明)健忘、下肢静止不能症候群、吃音。

2). 錐体外路症状:(頻度不明)アカシジア。

3). 循環器:(1〜5%)起立性低血圧、(頻度不明)低血圧、頻脈、徐脈。4). 消化器:(1〜5%)口渇、(頻度不明)食欲亢進、便秘、膵炎、腹部膨満、流涎過多。

5). 血液:(頻度不明)白血球減少症、好中球減少症、血小板減少症、好酸球増加症。

6). 内分泌:(頻度不明)プロラクチン上昇。

7). 肝臓:(頻度不明)ALT上昇、AST上昇、Al−P上昇、総ビリルビン上昇、肝炎、γ−GTP上昇。

8). 泌尿器:(頻度不明)尿失禁、尿閉。

9). 過敏症:(頻度不明)発疹、光線過敏症、アレルギー反応。10). 代謝異常:(頻度不明)末梢性浮腫、尿糖、尿酸値上昇、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症。

11). その他:(頻度不明)体重増加、疲労、無力症、離脱反応、CK上昇、脱毛症、持続勃起症、関節痛、鼻出血、発熱。

警告

1.1. 著しい血糖値上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、投与前に血糖値の測定等を行い、糖尿病又はその既往のある患者あるいは糖尿病の危険因子を有する患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は投与しないこと。また、投与前に血糖値の測定等が困難な場合には、投与後に血糖値をモニタリングするなど観察を十分に行うこと〔11.1.1参照〕。

1.2. 投与にあたっては、可能な限り投与前に、前記副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明すること。また、口渇、多飲、多尿、頻尿等の異常に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに医師の診察を受けるよう、指導すること〔8.1、8.3、9.1.1、11.1.1参照〕。

重要な基本的な注意

8.1. オランザピンの投与により、著しい血糖値上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の致命的経過をたどることがあるので、口渇、多飲、多尿、頻尿等の高血糖症状に注意するとともに、血糖値をモニタリングするなど観察を十分に行うこと(特に、高血糖、肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者では、血糖値上昇し、代謝状態を急激に悪化させるおそれがあるので、注意すること)〔1.2、8.3、9.1.1、11.1.1参照〕。

8.2. オランザピンの投与により、低血糖があらわれることがあるので、脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状に注意するとともに、血糖値をモニタリングするなど観察を十分に行うこと〔8.3、11.1.2参照〕。8.3. 本剤の投与に際し、可能な限り投与前に、著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡及び低血糖の副作用が発現する場合があることを患者及びその家族に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)、低血糖症状(脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等)に注意し、このような症状があらわれた場合には、医師の診察を受けるよう、指導すること〔1.2、8.1、8.2、9.1.1、11.1.1、11.1.2参照〕。

8.4. 非経口ベンゾジアゼピン製剤との併用投与は、過鎮静や心肺機能抑制を来すおそれがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は併用しないこと(やむを得ず併用する場合には、本剤の投与と十分な間隔をあけ、患者の状態を十分に観察すること)本剤と非経口ベンゾジアゼピン製剤との併用投与後の死亡例が報告されている〔10.2参照〕。

8.5. めまい、起立性低血圧、徐脈、低換気が認められることがあるので、これらの徴候があらわれた場合には、横臥位にさせ、観察を十分に行うこと〔9.1.2、10.2参照〕。

8.6. 本剤投与後に抗精神病薬を投与する場合には、適切な投与間隔をあけ、投与後は患者の状態を十分に観察すること。

8.7. オランザピンの投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。8.8. オランザピンは制吐作用を有するため、他の薬剤に基づく中毒、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕在化することがあるので注意すること。8.9. 傾眠、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、高所での作業あるいは自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

特定の背景を有する患者に関する注意

合併症・既往歴等のある患者

9.1.1. 糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者、糖尿病の家族歴、高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者〔1.2、8.1、8.3、11.1.1参照〕。

9.1.2. 重篤な心血管疾患を有する患者:低血圧、徐脈、低換気が認められることがある〔8.5参照〕。

9.1.3. 尿閉、麻痺性イレウス、閉塞隅角緑内障のある患者:抗コリン作用により症状を悪化させることがある。

9.1.4. てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者:痙攣閾値を低下させることがある。

9.1.5. 本剤のクリアランスを低下させる要因を併せ持つ(非喫煙者、女性、高齢者)患者:本剤の血漿中濃度が増加することがある〔9.8高齢者の項参照〕。9.1.6. 不動状態、長期臥床、肥満、脱水状態等の危険因子を有する患者〔11.1.10参照〕。

肝機能障害患者

9.3.1. 肝障害のある患者又は肝毒性のある薬剤による治療中の患者:肝障害を悪化させることがある。

相互作用

本剤の代謝には肝薬物代謝酵素CYP1A2が関与している。また、CYP2D6も関与していると考えられている〔16.4.1参照〕。

10.1. 併用禁忌:

アドレナリン<アナフィラキシー救急治療・歯科浸潤又は伝達麻酔除く><ボスミン>〔2.4、13.2参照〕[アドレナリンの作用を逆転させ重篤な血圧降下を起こすことがある(アドレナリンはアドレナリン作動性α、β−受容体の刺激剤であり、本剤のα−受容体遮断作用によりβ−受容体刺激作用が優位となり、血圧降下作用が増強される)]。10.2. 併用注意:

1). 非経口ベンゾジアゼピン製剤(非経口フルニトラゼパム、非経口ジアゼパム、非経口ミダゾラム等)〔8.4参照〕[過鎮静や心肺機能抑制を来すおそれがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は併用しないこと(やむを得ず併用する場合には、本剤の投与と十分な間隔をあけ、患者の状態を十分に観察すること)(本剤及びこれらの薬剤は中枢神経抑制作用を有する)]。

2). 中枢神経抑制剤(バルビツール酸誘導体、経口ベンゾジアゼピン製剤等)[適切な投与間隔をあける、減量するなど注意すること(本剤及びこれらの薬剤は中枢神経抑制作用を有する)]。

3). 低血圧を引き起こす薬剤、徐脈を引き起こす薬剤、呼吸抑制を引き起こす薬剤、中枢神経抑制を引き起こす薬剤〔8.5参照〕[低血圧、徐脈、低換気が認められることがある(併用によりこれらの事象のリスクが増加するおそれがある)]。4). アルコール[相互に作用を増強することがある(アルコールは中枢神経抑制作用を有する)]。

5). 抗コリン作用を有する薬剤(抗コリン性抗パーキンソン剤、フェノチアジン系化合物、三環系抗うつ剤等)[腸管麻痺等の重篤な抗コリン性の毒性が強くあらわれることがある(本剤及びこれらの薬剤は抗コリン作用を有する)]。6). ドパミン作動薬、レボドパ製剤[これらの薬剤のドパミン作動性の作用が減弱することがある(ドパミン作動性神経において、本剤がこれらの薬剤の作用に拮抗することによる)]。

7). フルボキサミン〔16.7.1参照〕[本剤の血漿中濃度を増加させるので、本剤を減量するなど注意すること(これらの薬剤は肝薬物代謝酵素(CYP1A2)阻害作用を有するため本剤のクリアランスを低下させる)]。

8). シプロフロキサシン[本剤の血漿中濃度を増加させる可能性がある(これらの薬剤は肝薬物代謝酵素(CYP1A2)阻害作用を有するため本剤のクリアランスを低下させる)]。

9). カルバマゼピン〔16.7.2参照〕[本剤の血漿中濃度を低下させる(これらの薬剤は肝薬物代謝酵素(CYP1A2)を誘導するため本剤のクリアランスを増加させる)]。

10). オメプラゾール、リファンピシン[本剤の血漿中濃度を低下させる可能性がある(これらの薬剤は肝薬物代謝酵素(CYP1A2)を誘導するため本剤のクリアランスを増加させる)]。

11). 喫煙[本剤の血漿中濃度を低下させる(喫煙は肝薬物代謝酵素(CYP1A2)を誘導するため本剤のクリアランスを増加させる)]。

12). アドレナリン含有歯科麻酔剤(リドカイン・アドレナリン歯科麻酔剤)[重篤な血圧降下を起こすことがある(アドレナリンはアドレナリン作動性α、β−受容体の刺激剤であり、本剤のα−受容体遮断作用によりβ−受容体刺激作用が優位となり、血圧降下作用が増強されるおそれがある)]。

高齢者

2.5〜5mgの少量での投与等を検討し、投与以降は患者の状態を十分に観察すること。また、他の本剤のクリアランスを低下させる要因を併せ持つ高齢者(高齢者の非喫煙者、高齢者の女性等)では、特に注意すること。高齢者では、一般的に生理機能が低下しており、オランザピンのクリアランスが低下する可能性がある〔9.1.5参照〕。

妊婦・授妊婦

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状があらわれたとの報告がある。

授乳婦

授乳しないことが望ましい(ヒト母乳中への移行が報告されている)。

小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

過剰投与

13.1. 症状

オランザピンの過量投与時に、頻脈、激越/攻撃性、構語障害、種々の錐体外路症状、及び鎮静から昏睡に至る意識障害が一般的な症状(頻度10%以上)としてあらわれることが報告されており、また他の重大な症状として、譫妄、痙攣、悪性症候群様症状、呼吸抑制、誤嚥、高血圧あるいは低血圧、不整脈(頻度2%以下)及び心肺停止があらわれることがある。オランザピン経口剤において、450mg程度の急性過量投与による死亡例の報告があるが、2gの急性過量投与での生存例も報告されている。13.2. 処置

過量投与時、アドレナリン、ドパミン、あるいは他のβ−受容体アゴニスト活性を有する薬剤は低血圧を更に悪化させる可能性があるので使用してはならない〔2.4、10.1参照〕。

適用上の注意

14.1. 薬剤調製時の注意

14.1.1. 2.1mLの日局注射用水で溶解する。

14.1.2. 本剤溶解時、溶液は黄色澄明を呈する。

14.1.3. 溶解後、速やかに使用すること。

14.1.4. 溶解した残液は使用しないこと。

14.1.5. ジアゼパムの注射剤と混合すると沈殿が起こるため混合しないこと。14.1.6. ハロペリドールの注射剤と混合するとpHが低下し本剤が分解されるため混合しないこと。

14.1.7. 投与量を調整する場合は次の用量を参考にすること。1). 用量10.0mg:投与量バイアル内溶解液全量。2). 用量7.5mg:投与量1.5mL。

3). 用量5.0mg:投与量1.0mL。

4). 用量2.5mg:投与量0.5mL。

14.2. 薬剤投与時の注意

14.2.1. 投与前には異物がないか目視にて確認すること。14.2.2. 筋肉内注射にのみ使用し、静脈内投与又は皮下投与は行わないこと。(取扱い上の注意)

凍結しないこと。

その他の注意

15.1. 臨床使用に基づく情報

15.1.1. オランザピンによる治療中、原因不明の突然死が報告されている。15.1.2. 外国で実施された高齢認知症患者を対象とした17の臨床試験において、オランザピン経口剤を含む非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して死亡率が1.6〜1.7倍高かったとの報告がある。なお、オランザピン経口剤の5試験では、死亡及び脳血管障害(脳卒中、一過性脳虚血発作等)の発現頻度がプラセボと比較して高く、その死亡の危険因子として、年齢(80歳以上)、高齢で鎮静状態、高齢でベンゾジアゼピン系薬物の併用、高齢で呼吸器疾患が報告されている。脳血管障害を発現した患者においては、高齢で脳血管障害・高齢で一過性脳虚血発作・高齢で高血圧の既往又は合併、高齢で喫煙等の危険因子を有していたことが報告されている。また、外国での疫学調査において、定型抗精神病薬も非定型抗精神病薬と同様に死亡率上昇に関与するとの報告がある。

15.2. 非臨床試験に基づく情報

がん原性試験において、雌マウス(8mg/kg/日以上、21ヵ月)及び雌ラット(2.5/4mg/kg/日以上、21ヵ月、投与211日に増量)で乳腺腫瘍の発生頻度の上昇が報告されている。これらの所見は、プロラクチンに関連した変化として、げっ歯類ではよく知られている。臨床試験及び疫学的調査において、ヒトにおけるオランザピンあるいは類薬の長期投与と腫瘍発生との間に明確な関係は示唆されていない。

保管上の注意

室温保存。

組成・性状

3.1 組成

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販売名 ジプレキサ筋注用10mg

有効成分 1バイアル中オランザピンとして11.0mg注)

添加剤 乳糖水和物 55.0mg

酒石酸 3.85mg

pH調節剤 適量

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注)本剤は溶解した薬液の吸引時及び投与時の損失を考慮し、1バイアルから10mgを注射可能な量を確保するために過量充填されている。

3.2 製剤の性状

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販売名 ジプレキサ筋注用10mg

性状・剤形 黄色の塊又は粉末

(凍結乾燥製剤)(注射剤)

pH 5.3〜5.9

5mg/mL(注射用水)

浸透圧比(生理食塩液に対する比) 約0.3

5mg/mL(注射用水)

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薬効薬理

18.1 作用機序

オランザピンはチエノベンゾジアゼピン骨格を有する非定型抗精神病薬である。非臨床薬理試験において定型抗精神病薬とは異なる薬理学的特徴が明らかにされている。

オランザピンは多数の神経物質受容体に対する作用を介して統合失調症の陽性症状のみならず、陰性症状、認知障害、不安症状、うつ症状等に対する効果や錐体外路症状の軽減をもたらし(多元作用型:multi‐acting)、また、多くの受容体に対する作用が脳内作用部位への選択性につながる(受容体標的化:receptor‐targeting)と考えられる。オランザピンは、ドパミンD2タイプ(D2、D3、D4)、セロトニン5‐HT2A,2B,2C、5‐HT6、α1‐アドレナリン及びヒスタミンH1受容体へほぼ同じ濃度範囲で高い親和性を示すが、ドパミンD1タイプ(D1、D5)やセロトニン5‐HT3受容体へはやや低い親和性で結合する。また、ムスカリン(M1、M2、M3、M4、M5)受容体への親和性はin vitroと比較してin vivoでは弱い。オランザピンはこれらの受容体に対し拮抗薬として働く。更にオランザピンによる大脳皮質前頭前野でのドパミンとノルアドレナリンの遊離増加や、グルタミン酸神経系の伝達障害の回復も、オランザピンと複数の受容体との相互作用より引き起こされている可能性がある。

18.2 統合失調症諸症状の動物モデルでの選択的作用

オランザピンは、カタレプシー(錐体外路系副作用の指標)を惹起する用量よりも低い用量で、条件回避反応(陽性症状の指標)、プレパルスインヒビション(陰性症状及び認知障害の指標)、社会的接触減少(陰性症状の指標)、コンフリクト(陰性症状及び不安の指標)あるいは強制水泳(うつ症状の指標)等の統合失調症諸症状の動物モデルにおいて改善作用を示す。

18.3 中脳辺縁系及び大脳皮質前頭前野への選択性

オランザピンは、電気生理学的試験や組織学的試験において、錐体外路系副作用に関与している黒質線条体系よりも、抗精神病活性と関係する中脳辺縁系及び大脳皮質前頭前野への選択性を示す。

18.4 統合失調症に関わる不均衡な神経系との特異的相互作用

統合失調症では大脳皮質前頭前野でのドパミンD1系の機能低下やグルタミン神経系の伝達障害が仮説化されているが、オランザピンは大脳皮質前頭前野でドパミンとノルアドレナリンの遊離を増加させ、グルタミン酸神経系の伝達障害を回復させる。

薬物動態

16.1 血中濃度

16.1.1 血漿中濃度

(1)統合失調症患者に本剤10mgを単回筋肉内投与した。

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投与量  Tmaxa)(hr)      Cmax(ng/mL) t1/2b)(hr)      AUC0−∞(ng・hr/mL)

10mg 0.28(0.23−1.02) 29.8(41.5)  42.4(32.0−59.4) 660(51.5)

n=10、幾何平均値(変動係数%)

a)中央値(最小値−最大値)

b)幾何平均値(最小値−最大値)

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<<図省略>>

(2)健康成人を対象に本剤を筋肉内投与したとき、吸収は速やかで、投与後15〜45分で最高血漿中濃度に達した。また、患者を対象とした臨床試験において、2.5〜10mgの範囲で本剤投与後の薬物動態に線形性が確認された。

健康成人を対象とした薬物動態試験の結果から、オランザピンの5mgを経口投与したときと比較して、同一量の本剤を筋肉内投与したときのCmaxは約5倍高値を示した。AUCは同程度であった。また、経口投与と筋肉内投与では消失半減期も類似していた(外国人データ)。

16.3 分布

16.3.1 蛋白結合

約93%(in vitro、超遠心法)。特にアルブミンとα1‐酸性糖蛋白質に結合する。

16.4 代謝

16.4.1 主な代謝産物及び代謝経路

オランザピンの代謝に関与する酵素はグルクロン酸転移酵素、フラビン含有モノオキシゲナーゼ、チトクロームP450(CYP)である。オランザピンの代謝物10‐N‐グルクロン酸抱合体及び4’‐N‐グルクロン酸抱合体は、直接グルクロン酸抱合される。10‐N‐グルクロン酸抱合体が血漿中及び尿中における主要代謝物である。4’‐N‐オキシド体代謝物の生成はフラビン含有モノオキシゲナーゼが関与している。主な酸化代謝物である4’‐N‐デスメチル体はCYP1A2を介して生成される。比較的少ない代謝物である2‐ヒドロキシメチル体はCYP2D6を介して生成されるが、オランザピンの全般的なクリアランスに大きく影響することはない。in vivoの動物試験において、4’‐N‐デスメチル体及び2‐ヒドロキシメチル体の薬理活性はないか、又はオランザピンと比較して極めて低く、薬理活性の本体はオランザピンであることが確認されている。オランザピン経口剤の定常状態における未変化体、10‐N‐グルクロン酸抱合体及び4’‐N‐デスメチル体の血漿中濃度比は100:44:31であった。[10.参照]

16.5 排泄

16.5.1 排泄経路及び排泄率

健康成人に14Cオランザピンを経口投与したとき、21日間で全放射活性の約57%及び30%がそれぞれ尿中及び糞便中に排泄された(外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

16.6.1 腎機能障害患者

腎機能低下被験者10例にオランザピン経口剤を投与した検討によると、腎機能の低下はオランザピンの薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。

16.6.2 肝機能障害患者

肝機能障害はオランザピンのクリアランスを低下させることが予想されたが、肝機能低下患者8例にオランザピン経口剤を投与した検討によると、肝機能低下はオランザピンの薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。

16.6.3 高齢者

オランザピン経口剤の単回投与では65歳以上の被験者16例の消失半減期は非高齢者に比し53%延長した(高齢者:52時間、非高齢者:34時間)。14日間連続投与では、65歳以上の被験者8例の消失半減期は59時間であった(外国人データ)。

16.6.4 性別・喫煙

オランザピン経口剤を投与した検討によると、女性におけるオランザピンのクリアランスは男性よりも約30%低く、また喫煙者におけるオランザピンのクリアランスは非喫煙者よりも約40%高かったが、これらの要因のどれかひとつが存在することにより一般的に投与量を調節する必要はない。性別と喫煙を組み合わせた場合の平均クリアランス値は男性喫煙者で最も高く、次いで女性喫煙者、男性非喫煙者の順で、女性非喫煙者が最も低かった(外国人データ)。[16.7.5参照]

16.7 薬物相互作用

16.7.1 フルボキサミン

オランザピン経口剤とフルボキサミンとの併用により、オランザピンの血漿中濃度は高値を示した。相互作用は男性(すべて喫煙者)で大きく、Cmaxの増加率は男性(喫煙)で75%、女性(すべて非喫煙者)で52%であった。AUC0−24の増加率は男性(喫煙)で108%、女性(非喫煙)で52%であった。また、クリアランス(CLp/F)は男性(喫煙)で52%、女性(非喫煙)で37%低下した。これはフルボキサミンがCYP1A2の阻害作用を有するためと推定された(外国人データ)。[10.2参照]

16.7.2 カルバマゼピン

オランザピン経口剤とカルバマゼピンとの併用により、オランザピンの血漿中濃度は低値を示した。併用によりCmaxは24%、AUC0−∞は34%低下した。これはカルバマゼピンがCYP1A2の誘導作用を有するためと推定された(外国人データ)。[10.2参照]

16.7.3 フルオキセチン

オランザピン経口剤とフルオキセチン(国内未承認)との併用により、オランザピンの血漿中濃度はわずかに増加した。併用によりCmaxは16%増加、クリアランス(CLp/F)は16%低下した。これはフルオキセチンがCYP2D6の阻害作用を有するためと推定された(外国人データ)。

16.7.4 ロラゼパム

本剤5mg筋肉内投与の1時間後にロラゼパム筋注(国内未承認ベンゾジアゼピン製剤)2mgを投与した場合、ロラゼパム非抱合体及び総ロラゼパムの薬物動態に対する明らかな影響は認められなかった。しかしながら本剤とロラゼパム筋注を併用した場合、相加的な鎮静効果の増強が認められた。本剤と非経口ベンゾジアゼピン製剤の併用は推奨しない(外国人データ)。

16.7.5 その他

(1)日本人喫煙者にオランザピンを経口投与したときのクリアランス値は非喫煙者より約35%高かった。また、外国人に対して本剤を筋肉内投与したときの喫煙の影響に関する検討でも同様の傾向が認められた。これは喫煙がCYP1A2の誘導作用を有するためと推定された。[16.6.4参照]

(2)その他、イミプラミン、ワルファリン、シメチジン、制酸剤又はアルコールによるオランザピン経口剤の薬物動態に対する明らかな影響は認められなかった。また、オランザピン経口剤によるリチウム、バルプロ酸、イミプラミン、ワルファリン、ジアゼパム、ビペリデン、テオフィリン又はアルコールの薬物動態に対する明らかな影響は認められなかった(外国人データ)。