特徴
β1非選択性、ISA(内因性交感神経刺激
専門医コメント
メインテートやアーチストが大規模臨床試験
用法・用量
1.洞性頻脈に使用する場合:通常成人にはピンドロールとして1回1〜5mgを1日3回投与する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減する。
2.本態性高血圧症(軽症〜中等症)に使用する場合:通常成人にはピンドロールとして1回5mgを1日3回投与する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減する。3.狭心症に使用する場合:通常成人にはピンドロールとして1回5mgを1日3回投与する。効果が不十分な場合には1日量30mgまで増量する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減する。
禁忌
1.本剤の成分及び他のβ−遮断剤に対し過敏症の既往歴のある患者。2.気管支喘息、気管支痙攣の恐れのある患者[喘息等の症状を誘発・悪化させる恐れがある]。
3.糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスのある患者[本症でみられる心筋収縮力抑制を増強する恐れがある]。
4.高度徐脈(著しい洞性徐脈)、房室ブロック<2〜3度>、洞房ブロック、洞不全症候群のある患者[心刺激伝導系を抑制し、症状を悪化させる恐れがある]。5.心原性ショック、肺高血圧による右心不全、うっ血性心不全の患者[心筋収縮力を抑制し、症状を悪化させる恐れがある]。
6.異型狭心症の患者[症状を悪化させる恐れがある]。
7.低血圧症の患者[降圧作用により症状を悪化させる恐れがある]。8.重症末梢循環障害(壊疽等)のある患者[症状を悪化させる恐れがある]。9.未治療の褐色細胞腫の患者。
10.チオリダジン投与中の患者[不整脈、QT延長等が現れることがある]。11.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人。
用法・用量に関連する注意
<用法・用量に関連する使用上の注意>
褐色細胞腫の患者では、本剤の単独投与により急激に血圧が上昇することがあるので、α−遮断剤で初期治療を行った後に本剤を投与し、常にα−遮断剤を併用する。
腎機能用量
15≦CCr<60:腎機能正常者と同じ
CCr<15:1日5〜10mg。洞性頻脈ではさらに減量
適応
洞性頻脈、本態性高血圧症(軽症〜中等症)、狭心症
効果・効能
1.洞性頻脈。
2.本態性高血圧症<軽症〜中等症>。
3.狭心症。
副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
重大な副作用
1.重大な副作用(頻度不明):次のような副作用が現れることがある。これらの副作用を疑わせる臨床検査所見及び症状が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。1).心不全の誘発・心不全悪化、心胸比増大。
2).喘息症状の誘発・喘息症状悪化。
その他の副作用
2.その他の副作用(頻度不明)
1).過敏症:発疹[このような場合には投与を中止し、適切な処置を行う]。2).循環器:動悸、胸痛、浮腫、徐脈、低血圧。
3).精神神経系:眩暈、ふらつき、頭痛、不眠、脳貧血様症状、眠気、振戦、多汗、*精神症状(*抑うつ、*幻覚)、*悪夢[*:このような場合には投与を中止し、適切な処置を行う]。
4).消化器:悪心・嘔吐、下痢、心窩部不快感、腹痛、食欲不振、口渇。5).肝臓:AST上昇(GOT上昇)・ALT上昇(GPT上昇)・Al−P上昇。6).眼:涙液分泌減少、霧視[このような場合には投与を中止し、適切な処置を行う]。
7).その他:脱力感、倦怠感、手足のしびれ感、熱感、*腓腸筋痙直(*こむらがえり)、*その他の筋肉痛[*:このような場合には投与を中止し、適切な処置を行う]、CK上昇(CPK上昇)・LDH上昇・血清尿酸値上昇。
慎重投与
1.うっ血性心不全の恐れのある患者[心筋収縮力を抑制し、症状を誘発する恐れがあるので、観察を十分に行い、ジギタリス製剤を併用するなど慎重に投与する]。2.低血糖症、コントロール不十分な糖尿病、長期間絶食状態の患者[低血糖症状を起こしやすく、かつ低血糖の前駆症状である頻脈等の症状をマスクしやすいので血糖値に注意する]。
3.重篤な肝障害・重篤な腎障害のある患者[代謝又は排泄が遅延する恐れがある]。4.徐脈、房室ブロック<1度>のある患者[心刺激伝導系を抑制し、症状を悪化させる恐れがあるので心機能に注意する]。
5.甲状腺中毒症の患者[頻脈等の中毒症状をマスクすることがある]。6.末梢循環障害(レイノー症候群、間欠性跛行症等)のある患者[症状を悪化させる恐れがある]。
7.高齢者。
8.小児等。
重要な基本的な注意
1.長期投与の場合は、心機能検査(脈拍・血圧・心電図・X線等)を定期的に行う。特に徐脈になったとき及び低血圧を起こした場合には減量又は中止する(また、必要に応じアトロピンを投与するなど対症療法を行う)。なお、肝機能、腎機能、血液像等に注意する。
2.類似化合物(プロプラノロール塩酸塩)使用中の狭心症の患者で急に投与を中止したとき、症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されているので、休薬を要する場合には徐々に減量し、観察を十分に行い、また、患者に医師の指示なしに服薬を中止しないよう注意する。狭心症以外の適用で投与する場合でも、特に高齢者においては同様の注意をする。
3.甲状腺中毒症の患者では急に投与を中止すると、症状を悪化させることがあるので、休薬を要する場合には徐々に減量し、観察を十分に行う。
4.手術前24時間は投与しないことが望ましい。
5.眩暈、ふらつきが現れることがあるので、本剤投与中の患者(特に投与初期)には、自動車の運転等危険を伴う機械の作業に注意させる。
相互作用
1.併用禁忌:チオリダジン<メレリル>[不整脈、QT延長等が現れることがある(本剤はチオリダジンの肝における酸化的な代謝を阻害し、血中濃度を上昇させると考えられる)]。
2.併用注意:
1).交感神経系に対し抑制的に作用する他の薬剤(レセルピン等)[過剰の交感神経抑制を来し徐脈・血圧低下等が現れる恐れがあるので、用量に注意する(共に交感神経抑制作用を有するため)]。
2).レセルピン[脈拍の増加等が現れることがあるので、用量に注意する(レセルピンによりカテコラミンが枯渇した状態においては本剤の内因性交感神経刺激作用が顕在化することがある)]。
3).血糖降下剤(インスリン、グリベンクラミド等)[血糖降下作用を増強することがあり、また、低血糖症状<頻脈等>をマスクすることがあるので、血糖値に注意する(本剤のβ−遮断作用により、低血糖からの回復が遅れることがあり、また、低血糖に伴う交感神経系の症状をマスクする)]。
4).カルシウム拮抗剤(ベラパミル、ジルチアゼム等)[相互に作用が増強され過度の降圧又は心機能抑制が現れる恐れがあるので、用量に注意する(共に陰性変時・変力作用、降圧作用を有するため)]。
5).クロニジン[クロニジンの投与中止後のリバウンド現象<血圧上昇>を増強する恐れがあるので、クロニジンの投与を中止する場合には、本剤を数日前に中止し、経過を観察してから行う(クロニジンの投与中止により血中ノルエピネフリンが増加した場合、本剤のβ−遮断作用によりα−刺激作用(血管収縮作用)が優位となるため)]。6).Class1抗不整脈剤(ジソピラミド、プロカインアミド、アジマリン等)、アミオダロン[過度の心機能抑制が現れることがあるので、用量に注意する(共に心機能抑制作用を有するため)]。
7).麻酔剤(エーテル等)[過剰の交感神経の抑制を起こす恐れがあるので、心機能等に注意する(共に交感神経抑制作用を有するため)]。
8).ジギタリス製剤[房室伝導時間が延長し徐脈・房室ブロック等が現れる恐れがあるので、心機能に注意する(共に刺激伝導速度の抑制作用を有するため)]。9).非ステロイド性抗炎症剤(インドメタシン等)[本剤の降圧作用が減弱することがあるので、用量に注意する(非ステロイド性抗炎症剤は、血管拡張作用を有する腎プロスタグランジンの合成・遊離を阻害し血圧を上昇させることがある)]。10).降圧作用を有する他の薬剤(ニトログリセリン等)[過度の降圧を来す恐れがあるので、用量に注意する(共に降圧作用を有するため)]。11).交感神経刺激剤(アドレナリン等)[昇圧反応を引き起こすことがあるので、血圧値に注意する(本剤のβ−遮断作用により交感神経刺激剤のα−刺激作用が優位となるため)]。
高齢者
高齢者への投与
高齢者には、次の点に注意し、少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与する。
1.高齢者では一般に過度の降圧は好ましくないとされている[脳梗塞等が起こる恐れがある]。
2.休薬を要する場合は、徐々に減量する。
妊婦・授妊婦
妊婦・産婦・授乳婦等への投与
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しない[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない]。
2.授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させる[母乳中へ移行することが報告されている]。
小児等
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。
過剰投与
過量投与時には通常次のような処置が行われる。
過量投与による過度の徐脈にはアトロピン硫酸塩水和物を静注し、効果不十分な場合にはβ−刺激剤(イソプレナリン塩酸塩、オルシプレナリン硫酸塩等)を徐々に静注。過量投与による低血圧には昇圧剤(アドレナリン、ドパミン等)を投与。過量投与による心不全にはジギタリス製剤、利尿剤を投与(なお、グルカゴンの静注が有効な場合もある)。過量投与による気管支痙攣にはβ2−刺激剤(サルブタモール硫酸塩等)を静注又はアミノフィリン水和物を静注。
これらの処置の間は患者を常に観察下におく。
適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導する(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている)。
取扱い上の注意
安定性試験:最終包装製品を用いた長期保存試験(室温、4年)の結果、ピンドロール錠5mg「ツルハラ」は通常の市場流通下において4年間安定であることが確認された。
その他の注意
β−遮断剤服用中の患者では、他の薬剤によるアナフィラキシー反応がより重篤になることがあり、また、通常用量のアドレナリンによる治療に抵抗するとの報告がある。
保管上の注意
開封後防湿・遮光。
組成・性状
組成
ピンドロール錠5mg「ツルハラ」は1錠中ピンドロール5mgおよび添加物として乳糖水和物、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウムを含有する。
製剤の性状
ピンドロール錠5mg「ツルハラ」は白色で片面割線を有する錠剤である。識別記号はTSU584である。
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<<図省略>> <<図省略>> <<図省略>> 直径:約6.5mm
厚さ:約2.4mm
質量:約100mg
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薬効薬理
1.抗不整脈作用
交感神経系の興奮によって放出されるカテコールアミンは心臓においては収縮期、不応期を短縮させ、心拍数を増加させると共に、異所性刺激の発生を増加させる。ピンドロールはモルモットでイソプロテレノールによる心拍数、心収縮力の増加を抑制する。
2.降圧作用
ピンドロールはプロプラノロールとは異なり、血漿レニン活性を低下させる作用は弱いといわれており、全末梢抵抗の減少、心係数減少によると考えられ、また中枢性の降圧作用が関与している可能性もある。ピンドロールの降圧作用は緩和で、軽・中等度の本態性高血圧に対しレセルピンと同程度の作用を示すといわれている。
薬物動態
溶出挙動
ピンドロール錠5mg「ツルハラ」は、日本薬局方外医薬品規格第3部に定められたピンドロール5mg錠の溶出規格に適合していることが確認されている。