特徴
中程度の持続性、降圧作用緩徐、副作用比較
専門医コメント
降圧作用も緩やかであり、特徴が少なく使用
用法・用量
〈高血圧症、腎実質性高血圧症〉
ニトレンジピンとして、通常、成人1回5〜10mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減する。
〈狭心症〉
ニトレンジピンとして、通常、成人1回10mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減する。
禁忌
2.1. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
高血圧症、腎実質性高血圧症、狭心症
効果・効能
1). 高血圧症、腎実質性高血圧症。
2). 狭心症。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 過度の血圧低下による意識消失、呼吸減弱、顔面蒼白等のショック様症状(いずれも頻度不明)〔9.1.1参照〕。
11.1.2. 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明):AST上昇、ALT上昇、γ−GTP上昇等を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがある。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 腎臓:(0.1%未満)クレアチニン上昇、尿酸上昇、(頻度不明)BUN上昇。
2). 循環器:(0.1〜5%未満)頭重・頭痛、顔面潮紅、動悸、血圧低下、ほてり、めまい、熱感、浮腫、ふらつき、立ちくらみ、のぼせ、(0.1%未満)胸部痛、耳鳴、頻脈、発赤。
3). 消化器:(0.1〜5%未満)悪心、(0.1%未満)食欲不振、口渇、嘔吐、消化不良、腹痛、胃部不快感、便秘、下痢。
4). 過敏症:(0.1〜5%未満)発疹、(0.1%未満)光線過敏症、そう痒感。5). 口腔:(頻度不明)歯肉肥厚。
6). その他:(0.1〜5%未満)倦怠感、(0.1%未満)ふるえ、脱力感、しびれ、眠気、不眠、頻尿、(頻度不明)女性化乳房、CK上昇、血清カリウム上昇、総コレステロール上昇、血糖値上昇。
発現頻度は製造販売後調査結果を含む。
重要な基本的な注意
8.1. Ca拮抗剤の投与を急に中止したとき、症状が悪化した症例が報告されているので、本剤の休薬を要する場合は徐々に減量し、観察を十分に行うこと。また、患者に医師の指示なしに服薬を中止しないように注意すること。
8.2. 降圧作用に基づくめまい等があらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う作業に注意させること。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 過度に血圧の低い患者〔11.1.1参照〕。(腎機能障害患者)
9.2.1. 重篤な腎機能障害のある患者:腎機能が悪化することがある〔16.6.1参照〕。
肝機能障害患者
9.3.1. 重篤な肝機能障害のある患者:肝硬変患者で血中濃度の増加が報告されている。
相互作用
本剤は、主として肝代謝酵素CYP3A4で代謝される〔16.4.2参照〕。10.2. 併用注意:
1). β−遮断剤[過剰な心筋収縮力低下や血圧降下が起こるおそれがある(両薬剤の相加・相乗作用によると考えられている)]。
2). 他の降圧剤[過度の血圧低下が起こることがある(薬理学的な相加・相乗作用によるものと考えられている)]。
3). ジゴキシン[ジゴキシン中毒<不整脈・嘔気・嘔吐・視覚障害・めまい等>があらわれるおそれがある(ジギタリス製剤の腎及び腎外クリアランスを減少させ、ジギタリス製剤の血中濃度を上昇させると考えられている)]。
4). シメチジン、ラニチジン[血圧が過度に低下するおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること(これらの薬剤は本剤の肝での酸化的代謝を阻害し、また、胃酸分泌を抑制して、吸収を高めることにより本剤の血中濃度を上昇させることが考えられる)]。
5). HIVプロテアーゼ阻害剤(サキナビル、リトナビル等)[血圧が過度に低下する可能性がある(本剤は主に肝チトクロームP450(CYP3A)で代謝されるので、リトナビル、サキナビル等との併用により、代謝が阻害され、血中濃度が上昇する可能性がある)]。
6). リファンピシン[本剤の作用を減弱させることがある(リファンピシンが肝の薬物代謝酵素を誘導し、本剤の代謝を促進して血中濃度を低下させると考えられている)]。
7). グレープフルーツジュース[本剤の血中濃度が上昇し作用が増強されることがあるので、患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合には、本剤を減量するなど適切な処置を行い、また、グレープフルーツジュースとの同時服用をしないように注意する(発現機序の詳細は不明であるが、グレープフルーツジュースに含まれる成分が本剤の肝代謝酵素(チトクロームP450)を抑制し、クリアランスを低下させるためと考えられている)]。
高齢者
低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に過度の降圧は好ましくないとされており、脳梗塞等が起こることがある)。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験で催奇形作用(ラットで外表異常及び骨変異、サルで外表及び骨格異常)、胎仔致死作用(ラットで胚死亡率増加・胎仔死亡率増加)が報告されている)〔2.1参照〕。(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ヒトの母乳中へ移行することが報告されている)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
過剰投与
13.1. 症状
過量投与に関する情報は少ないが、主要な臨床症状として過度の血圧低下等が引き起こされる可能性がある。また過量投与時、肝機能障害があると症状が遷延することがある。13.2. 処置
過量投与時、蛋白結合率が高いので、強制利尿、血液透析等は本剤の除去にそれほど有用でないと考えられる。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
取扱い上の注意
アルミピロー開封後は、光を避けるため、PTPシートのまま保存すること。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 バイロテンシン錠10mg
有効成分(1錠中) 日局 ニトレンジピン
10mg
添加剤 乳糖水和物、トウモロコシデンプン、セルロース、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール6000、酸化チタン、タルク、三二酸化鉄
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3.2 製剤の性状
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販売名 バイロテンシン錠10mg
性状・剤形 淡黄色・フィルムコーティング錠
外形 <<図省略>> <<図省略>> <<図省略>>
識別コード Y‐BL10
サイズ 直径(mm) 厚さ(mm) 重量(mg)
6.2 3.1 89
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薬効薬理
18.1 作用機序
細胞膜の膜電位依存性カルシウムチャンネルに特異的に結合し、細胞内へのカルシウムの流入を減少させて冠血管や末梢血管の平滑筋を選択的に弛緩させる。
18.2 ヒトでの作用
18.2.1 降圧作用
本態性高血圧症患者(成人男性3例)に、本剤を1日1回10〜20mg投与し、観血的に24時間血圧を測定したところ、夜間の過度な降圧や早朝の急速な血圧上昇は認められず、血圧の日内リズムを変えることなく、安定した降圧効果を示した。
18.2.2 抗狭心症作用
労作性狭心症患者(成人男性10例、成人女性7例)に、本剤を1日1回10mg投与し、トレッドミル多段階運動負荷試験を行ったところ、運動耐容時間、0.1mV ST下降開始時間及び狭心痛発現時間を有意に延長した。また、労作性狭心症患者(成人男性12例、成人女性4例)に、本剤を1日1回10mg、2週間連続投与し、同様に運動耐容能改善効果が認められた。
18.3 動物での作用
18.3.1 降圧作用
各種高血圧病態モデル(高血圧自然発症ラット、デオキシコルチコステロン誘発高血圧ラット、腎性高血圧ラット・イヌ)において、持続的で有意な降圧作用を示し、5週間の連続投与によっても耐薬性を生じない。
18.3.2 高血圧に伴う心血管障害への作用
高血圧自然発症ラット及び食塩感受性ラットに3週間以上連続投与することにより、心肥大を有意に抑制する。
高血圧自然発症ラットに18ヵ月間連続投与することにより、大動脈や腸間膜動脈のカルシウムの過剰な沈着を著明に抑制するとともに、眼底血管の動脈瘤状の変化も抑制する。
脳卒中易発症ラットに9週間連続投与することにより、血圧の上昇を抑制し、死亡率を減少させる。
18.3.3 腎機能への影響
食塩感受性ダールラットに10週間連続投与しても腎機能に対し影響はなく、糸球体硬化の軽減が認められた。
18.3.4 抗狭心症作用
麻酔下イヌの冠血流量、冠静脈洞流出血液量を増加させるほか、冠動静脈酸素較差を減少させて心臓への酸素供給量を増加させる。また、イヌ血液灌流心臓標本で冠血流量を選択的に増加させるが、心筋収縮力などの他の心機能への影響は少ない。
ヒト冠血管のプロスタグランジンF2αによる周期的収縮並びに、イヌ冠血管の3,4‐ジアミノピリジンによる周期的収縮を抑制する(in vitro)。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人22例に本剤10mgを単回経口投与したときの血漿中未変化体濃度は、投与後2〜3時間で最高濃度に達し、その後の消失は2相性を示し、t1/2βは約10時間であった。
健康成人にニトレンジピンを経口投与した時の血漿中未変化体濃度
<<図省略>>
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tmax(h) Cmax(ng/mL) t1/2β(h) AUC(ng・h/mL)
2〜3 7 10 37
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16.2 吸収
16.2.1 バイオアベイラビリティ
健康成人6例に13C‐ニトレンジピンを20mg経口投与した時のシステミックバイオアベイラビリティは約20%と推定された(外国人のデータ)。
16.2.2 食事の影響
ヒトに本剤10mgを1日1回食後及び空腹条件下で経口投与した時の血漿中未変化体濃度について、tmax、Cmax及びAUCをt検定により比較した。吸収の指標となり得るいずれのパラメータにおいても、食後投与と空腹時投与との間に有意差は認められなかった。
16.3 分布
蛋白結合率は約98%(5〜100ng/mL濃度時)であった(in vitro)。
16.4 代謝
16.4.1 健康成人に本剤10mgを経口投与したとき、主な代謝経路は、ジヒドロピリジン環の酸化、エステル結合の開裂及びメチル基の酸化と、これらに引き続くグルクロン酸抱合であった。これらの代謝物の薬理作用はニトレンジピンに比し、極めて弱い。
16.4.2 チトクロームP450の分子種はCYP3A4である。[10.参照]
16.5 排泄
健康成人に本剤10mgを経口投与したとき、投与量の52.4%が48時間までの尿中に排泄された。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎実質性疾患ないしは高血圧症患者で重篤な肝障害がない24例に1日1回本剤10mgを単回及び8日間経口投与した。1日目及び8日目の血漿中未変化体濃度の推移及び薬物動態パラメータは、腎機能正常群と腎機能低下群の間に有意な差はみられなかった。[9.2.1参照]