特徴
日本で開発されたOAB治療薬で国内では最
専門医コメント
1日1回の内服であること、増量が可能で
用法・用量
通常、成人にはコハク酸ソリフェナシンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10mgまでとする。
禁忌
2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 尿閉を有する患者[排尿時の膀胱収縮が抑制され、症状が悪化するおそれがある]〔11.1.3参照〕。
2.3. 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがある]〔11.1.7参照〕。
2.4. 幽門部閉塞、十二指腸閉塞又は腸管閉塞している患者及び麻痺性イレウスのある患者[胃腸の平滑筋の収縮及び運動が抑制され、症状が悪化するおそれがある]〔11.1.5参照〕。
2.5. 胃アトニー又は腸アトニーのある患者[抗コリン作用により消化管運動が低下するため症状が悪化するおそれがある]。
2.6. 重症筋無力症の患者[抗コリン作用により筋緊張の低下がみられ症状が悪化するおそれがある]。
2.7. 重篤な心疾患の患者[期外収縮等の心電図異常が報告されており、症状が悪化するおそれがある]〔11.1.4、17.3.1参照〕。2.8. 重度肝機能障害患者(Child−Pugh分類C)〔9.3.1参照〕。
用法・用量に関連する注意
7.1. 中等度肝機能障害患者(Child−Pugh分類B)への投与は1日1回2.5mgから開始し、慎重に投与し、投与量の上限は1日1回5mgまでとする。軽度肝機能障害患者(Child−Pugh分類A)への投与は1日1回5mgから開始し、増量に際しては副作用発現に留意し、患者の状態を十分に観察しながら慎重に行うこと〔9.3.2、9.3.3、9.8高齢者の項参照〕。
7.2. 重度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)への投与は1日1回2.5mgから開始し、慎重に投与し、投与量の上限は1日1回5mgまでとする。軽度及び中等度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min以上かつ80mL/min以下)への投与は1日1回5mgから開始し、増量に際しては副作用発現に留意し、患者の状態を十分に観察しながら慎重に行うこと〔9.2.1、9.2.2、9.8高齢者の項参照〕。
7.3. 高齢者では1日1回5mgから投与を開始し、増量に際しては副作用発現に留意し、患者の状態を十分に観察しながら慎重に行うこと〔9.8高齢者の項参照〕。
腎機能用量
CCr<30・透析:1日1回2.5mgから開始し、慎重投与。最大1日1回5mg
適応
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
効果・効能
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁。
効果・効能に関連する注意
5.1. 本剤を適用する際、十分な問診により臨床症状を確認するとともに類似症状を呈する疾患(尿路感染症、尿路結石、膀胱癌や前立腺癌など下部尿路における新生物等)に留意し尿検査等により除外診断を実施し必要に応じて専門的な検査も考慮すること。5.2. 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者では、それに対する治療(α1遮断薬等)を優先させること。
5.3. 過活動膀胱の症状を明確に認識できない認知症又は過活動膀胱の症状を明確に認識できない認知機能障害患者は本剤の投与対象とはならない。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。11.1.2. 肝機能障害:AST上昇、ALT上昇、γ−GTP上昇、Al−P上昇、総ビリルビン上昇(各0.1〜5%未満)等を伴う肝機能障害があらわれることがある。
11.1.3. 尿閉(頻度不明)〔2.2、9.1.1、9.1.2参照〕。11.1.4. QT延長、心室頻拍(Torsades de Pointesを含む)、房室ブロック、洞不全症候群、高度徐脈(いずれも頻度不明)〔2.7、9.1.3、10.2、17.3.1参照〕。
11.1.5. 麻痺性イレウス(頻度不明):著しい便秘、腹部膨満等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと〔2.4参照〕。11.1.6. 幻覚・せん妄(頻度不明)。
11.1.7. 急性緑内障発作(頻度不明):眼圧亢進、嘔気、頭痛を伴う眼痛、視力低下等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、直ちに適切な処置を行うこと〔2.3参照〕。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 血液及びリンパ系障害:(0.1〜5%未満)白血球数増多、白血球数減少、血小板数増多、血小板数減少。
2). 心臓障害:(0.1〜5%未満)狭心症、上室性期外収縮、心室性期外収縮、(頻度不明)徐脈、心房細動、頻脈、動悸。
3). 耳及び迷路障害:(0.1〜5%未満)回転性めまい。4). 眼障害:(0.1〜5%未満)霧視、眼調節障害、乾性角結膜炎、視力低下。5). 胃腸障害:(5%以上)口内乾燥(28.3%)、便秘(14.4%)、(0.1〜5%未満)腹部不快感、腹部膨満、腹痛、下腹部痛、上腹部痛、下痢、消化不良、硬便、胃炎、萎縮性胃炎、舌炎、悪心、胃不快感、口内炎、舌変色、(頻度不明)嘔吐、胃食道逆流性疾患、口の感覚鈍麻。
6). 全身障害及び投与局所様態:(0.1〜5%未満)胸部不快感、胸痛、倦怠感、発熱、(頻度不明)浮腫。
7). 感染症:(0.1〜5%未満)膀胱炎、尿路感染、気管支炎、鼻咽頭炎、上気道感染、尿沈渣陽性。
8). 代謝及び栄養障害:(0.1〜5%未満)CK上昇、尿酸上昇、総コレステロール上昇、K上昇、尿糖陽性、(頻度不明)食欲減退。
9). 筋骨格系及び結合組織障害:(0.1〜5%未満)関節痛、背部痛、側腹部痛、(頻度不明)筋力低下。
10). 神経系障害:(0.1〜5%未満)浮動性めまい、味覚異常、頭痛、傾眠、(頻度不明)認知機能障害。
11). 精神障害:(0.1〜5%未満)不眠症。
12). 腎及び尿路障害:(0.1〜5%未満)排尿困難、膿尿、排尿躊躇、クレアチニン上昇、BUN上昇、尿蛋白陽性。
13). 呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(0.1〜5%未満)咳嗽、鼻乾燥、咽頭不快感、(頻度不明)発声障害。
14). 皮膚及び皮下組織障害:(0.1〜5%未満)皮膚乾燥、湿疹、皮膚そう痒症、発疹、蕁麻疹、(頻度不明)血管浮腫、多形紅斑、剥脱性皮膚炎。15). 血管障害:(0.1〜5%未満)潮紅、高血圧。
重要な基本的な注意
8.1. 眼調節障害(霧視等)、傾眠が起こることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う作業に従事する場合には注意させること。
8.2. 本剤投与により効果が認められない場合には、漫然と投与せず、適切な治療を考慮すること。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 排尿困難のある患者(下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)又は排尿筋収縮障害等):本剤投与前に残尿量測定を実施し、必要に応じて専門的な検査を考慮し、また、投与中も十分に観察を行い、排尿困難の増悪を来していないかを定期的に確認すること〔11.1.3参照〕。
9.1.2. 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者:抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある〔11.1.3参照〕。9.1.3. QT延長症候群患者:過量投与に注意すること〔11.1.4、17.3.1参照〕。
9.1.4. 潰瘍性大腸炎のある患者:中毒性巨大結腸があらわれるおそれがある。9.1.5. 甲状腺機能亢進症の患者:抗コリン作用により頻脈等の交感神経興奮症状が悪化するおそれがある。
9.1.6. 認知症又は認知機能障害のある患者:抗コリン作用により、症状を悪化させるおそれがある。
9.1.7. パーキンソン症状又は脳血管障害のある患者:症状の悪化あるいは精神神経症状があらわれるおそれがある。
腎機能障害患者
9.2.1. 重度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満):血中濃度が上昇するおそれがある〔7.2、16.6.1参照〕。9.2.2. 軽度腎機能障害又は中等度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min以上かつ80mL/min以下):血中濃度が上昇するおそれがある〔7.2、16.6.1参照〕。
肝機能障害患者
9.3.1. 重度肝機能障害患者(Child−Pugh分類C):投与しないこと(血中濃度が過度に上昇するおそれがある)〔2.8、16.6.2参照〕。9.3.2. 中等度肝機能障害患者(Child−Pugh分類B):血中濃度が上昇するおそれがある〔7.1、16.6.2参照〕。
9.3.3. 軽度肝機能障害患者(Child−Pugh分類A):血中濃度が上昇するおそれがある〔7.1、16.6.2参照〕。
相互作用
本剤は、主として肝の薬物代謝酵素CYP3A4により代謝される〔16.4参照〕。10.2. 併用注意:
1). 抗コリン作用を有する薬剤(抗コリン剤、三環系抗うつ剤、フェノチアジン系薬剤、モノアミン酸化酵素阻害剤)[口内乾燥、便秘、排尿困難等があらわれるおそれがある(抗コリン作用が増強されるおそれがある)]。
2). アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール)〔16.7.1参照〕[口内乾燥、便秘、排尿困難等があらわれるおそれがあるので、減量するなど注意すること(これらの薬剤はCYP3A4を強力に阻害し、併用により本剤の血中濃度が上昇する可能性がある)]。
3). リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン[本剤の作用が減弱する可能性がある(これらの薬剤はCYP3A4を誘導し、併用により本剤の血中濃度が低下する可能性がある)]。
4). QT延長を起こすことが知られている薬剤〔11.1.4、17.3.1参照〕[QT延長があらわれるおそれがあるので、過量投与に注意すること(これらの薬剤によりQTが延長している患者に本剤が過量投与された場合、本剤のQT延長作用が相加的に作用する可能性がある)]。
高齢者
肝機能、腎機能が低下していることが多い〔7.1−7.3、16.6.3参照〕。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物実験で乳汁中移行が報告されている)。
小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした国内の臨床試験は実施していない。
過剰投与
13.1. 症状
過量投与時、尿閉、散瞳、肝機能障害等。
13.2. 処置
過量投与時には、胃洗浄又は活性炭を投与し、次にアトロピン過量投与の場合と同様の処置を行う。また、過量投与時、尿閉に対しては導尿等、過量投与時、散瞳に対してはピロカルピン投与等、各症状に応じて適切な処置を行う。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
14.1.1. PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
14.1.2. 本剤をかみ砕かないで服用するよう患者に指導すること(本剤をかみ砕いた際にマスキング粒が壊れ、有効成分由来の刺激性を感じる可能性がある)。14.1.3. 本剤は舌の上にのせて唾液を浸潤させると崩壊するため、水なしで服用可能である(また、水で服用することもできる)。
14.1.4. 本剤は寝たままの状態では、水なしで服用させないこと。(取扱い上の注意)
本品はアルミ袋により品質保持をはかっているので、アルミ袋開封後は湿気を避けて保存すること。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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有効成分(1錠中) 添加剤
ベシケアOD錠2.5mg コハク酸ソリフェナシン アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アメ粉、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ソルビン酸、ポリソルベート80、マクロゴール、D‐マンニトール、メチルセルロース、リン酸二水素ナトリウム、pH調節剤
2.5mg
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3.2 製剤の性状
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剤形 色 外形・大きさ・重量
ベシケアOD錠2.5mg 口腔内崩壊錠 白色 表 裏 側面
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直径 厚さ 重量
約7.0mm 約3.8mm 約0.13g
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薬効薬理
18.1 作用機序
膀胱平滑筋において、ムスカリンM3受容体拮抗作用を示すことにより、膀胱の過緊張状態を抑制し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する。
18.2 ムスカリン受容体に対する親和性
ヒトムスカリン受容体を用いた結合実験において、ムスカリンM3受容体に対する親和性はムスカリンM1、M2、M4及びM5受容体に対する親和性より高かった(in vitro)。
18.3 ムスカリン受容体拮抗作用
18.3.1 ラット及びモルモット膀胱平滑筋標本を用いた摘出実験において、カルバコール刺激による収縮に対して濃度依存的かつ競合的な拮抗作用を示した。また、ラット及びカニクイザルの膀胱平滑筋細胞及び顎下腺細胞において、カルバコール刺激による細胞内カルシウム濃度上昇に対して濃度依存的な抑制作用を示したが、顎下腺よりも膀胱平滑筋に対する抑制作用がそれぞれ3.6倍及び2.1倍強かった(in vitro)。
18.3.2 麻酔ラットにおいて、カルバコール刺激による膀胱内圧上昇及び唾液分泌に対して用量依存的な抑制作用を示した。膀胱内圧上昇及び唾液分泌をそれぞれ30%及び50%抑制する用量で比較すると、唾液分泌よりも膀胱内圧上昇に対する抑制作用がそれぞれ6.5倍及び3.7倍強かった(in vivo)。
18.4 排尿機能に対する作用
麻酔ラットの膀胱内圧測定試験(シストメトリー)において、用量依存的な膀胱容量増加作用を示した。また、無麻酔脳梗塞ラットにおいて、排尿圧及び残尿量に影響を及ぼすことなく、用量依存的な膀胱容量及び排尿量増加作用を示した。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性にベシケア錠を絶食下単回経口投与したときのCmax及びAUCは、投与量にほぼ比例して上昇した。Tmax、t1/2及びCL/Fの平均値は各用量間でほぼ一定であった。
単回投与時のパラメータ
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投与量(mg) 例数 Cmax(ng/mL) Tmax(h) AUCinf(ng・h/mL) t1/2(h) CL/F(L/h)
5 12 6.54±2.41 5.50±1.17 314.57±110.61 38.03±7.48 13.68±5.81
10 12 14.87±3.41 5.67±0.78 751.65±255.96 40.28±9.21 11.04±3.46
20注) 12 25.94±4.01 5.67±1.15 1,191.59±316.94 36.94±8.51 13.57±3.74
40注) 12 53.09±9.18 5.33±1.23 2,535.55±613.92 40.55±13.17 12.54±2.89
80注) 12 100.31±27.54 4.08±1.78 4,144.65±1,571.57 34.20±4.79 16.43±6.17
(平均値±標準偏差)
注)国内で承認された本剤の1日最高投与量は10mgである。
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16.1.2 反復投与
健康高齢・非高齢男女にベシケア錠10mgを1日1回28日間反復経口投与したときの血漿中濃度は、非高齢者では投与後1〜2週間で、高齢者では投与後2〜3週間で定常状態に達した。また、反復投与により血漿中濃度は単回投与時に比べ2〜4倍に上昇した。
反復投与時のパラメータ
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対象 例数 Cmax(ng/mL) Tmax(h) AUC24h(ng・h/mL) t1/2(h) CL/F(L/h)
非高齢男性 15 34.47±11.12 3.9±1.1 624.71±226.48 44.0±10.1 13.76±5.20
非高齢女性 14 37.57±18.31 5.2±1.4 732.82±375.83 39.2±9.1 12.83±5.71
高齢男性 16 52.89±23.47 4.6±1.6 1,091.27±493.88 71.1±28.3 8.60±4.68
高齢女性 16 53.82±10.27 5.6±1.8 1,095.61±213.19 61.3±13.1 7.18±1.69
(平均値±標準偏差)
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16.1.3 過活動膀胱患者
第II相試験において、母集団薬物動態解析により推定した過活動膀胱患者におけるCL/Fの母集団平均値は、男性が6.95L/h、女性が5.76L/hであった。母集団推定値から予想される10mg投与時の定常状態におけるAUC24hは、男性が1,085ng・h/mL、女性が1,309ng・h/mLであり、ベシケア錠を10mg投与したときの血漿中濃度は健康高齢者とほぼ同じと考えられた。
16.1.4 生物学的同等性試験
非高齢健康成人男性に2×2クロスオーバー法にてベシケアOD錠5mgとベシケア錠5mgをそれぞれ水とともに単回経口投与した場合、投与後4時間に最高血中濃度に達する。血中消失半減期は、約48時間であった。ヒトにベシケアOD錠及びベシケア錠を経口投与した場合、それぞれの剤形で血漿中未変化体濃度の推移はほぼ同じであり、生物学的に同等である。
<<図省略>>
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投与量 Cmax(ng/mL) Tmax(h) AUCinf(ng・h/mL) t1/2(h) CL/F(L/h)
ベシケアOD錠5mg 7.35±2.19 3.8±1.2 380.43±170.68 48.3±18.2 12.68±10.22
ベシケア錠5mg 7.46±2.73 4.1±1.2 358.23±133.57 47.7±11.6 14.88±18.50
(平均値±標準偏差)
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16.2 吸収
ベシケア錠10mgを単回経口投与したときの絶対バイオアベイラビリティは88%であった(外国人データ)。ベシケア錠5mgを食後に投与したときのCmax及びAUCは絶食時とほぼ同じであり、食事の影響は認められなかった。
16.3 分布
静脈内投与時の定常状態における分布容積は600Lであった(外国人データ)。血漿蛋白結合率は96%であり、主結合蛋白はα1‐酸性糖蛋白質であった。
16.4 代謝
本剤は肝臓において、主としてCYP3A4によって代謝され、一部CYP1A1、2C8、2C19、2D6及び3A5並びにグルクロン酸抱合酵素も代謝に関与していた。本剤を経口投与後、未変化体の他に薬理学的に活性のある代謝物4R‐水酸化体と、活性がない3種の代謝物N‐グルクロン酸抱合体、N‐酸化体及び4R‐水酸化‐N‐酸化体が血漿中及び尿中に認められた。血漿中では大部分が未変化体として存在し、4R‐水酸化体の薬効への寄与は未変化体よりも低いと考えられた。未変化体及びこれら4種の代謝物は、本剤10mg投与時に予想される曝露レベルにおいて、CYP1A1/2、2C9、2C19、2D6及び3A4の代謝活性に影響を及ぼさなかった。[10.参照]
16.5 排泄
14C標識体10mgを単回経口投与した後、投与量の69.2%の放射活性が尿中に、22.5%が糞中に回収された。尿中では投与量の15%未満が未変化体として排泄され、17.8%がN‐酸化体、8.9%が4R‐水酸化‐N‐酸化体、そして8.3%が4R‐水酸化体としてそれぞれ排泄された(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
軽度(クレアチニンクリアランス50〜80mL/min)から中等度(クレアチニンクリアランス30〜49mL/min)の腎機能障害を持つ患者では、ベシケア錠10mg投与時のAUCは健康成人と比べてそれぞれ1.4倍及び1.3倍高かった。重度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)を持つ患者では、健康成人と比べてAUCが2.1倍高かった(外国人データ)。[9.2.1、9.2.2参照]
16.6.2 肝機能障害患者
中等度(Child‐Pugh分類B)の肝機能障害を持つ患者では、ベシケア錠10mg投与時のAUCは健康成人と比べて1.6倍高く、t1/2は2倍に延長した(外国人データ)。[9.3.1−9.3.3参照]
16.6.3 高齢者
健康高齢者(65〜75歳)にベシケア錠10mgを投与したときのCmax及びAUCは、非高齢者(21〜34歳)と比べて1.5〜1.8倍高く、t1/2は1.4〜1.6倍に延長した。[9.8参照]
16.7 薬物相互作用
16.7.1 ケトコナゾール
ベシケア錠10mgをケトコナゾール200mg及び400mgと併用したとき、コハク酸ソリフェナシンのAUCinfは併用によりそれぞれ2倍及び2.8倍に上昇した(外国人データ)。[10.2参照]