特徴
ビタミンD3製剤。表皮細胞の増殖抑制作用
専門医コメント
ビタミンD3製剤は比較的落ち着いた状態の
用法・用量
通常1日2回適量を患部に塗擦する。なお、症状により適宜回数を減じる。
禁忌
本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者。
用法・用量に関連する注意
7.1. 1日の使用量はマキサカルシトールとして250μg(マキサカルシトール外用製剤として10g)までとする。
7.2. 本剤は、通常、使用後6週目までに効果が認められているので、治療にあたっては経過を十分に観察し、症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を継続しないこと。
腎機能用量
CCr<60・透析:通常用量を塗布してもマキサカルシトールのAUCは注射剤5μg投与時のAUCの10倍以上高くなり、高カルシウム血症・腎機能悪化になりやすいため腎機能低下症例への使用は推奨しない。使用する場合には定期的な血清カルシウム濃度、腎機能をモニターしながら投与すること
適応
尋常性乾癬、魚鱗癬群、掌蹠角化症、掌蹠膿疱症
効果・効能
尋常性乾癬、魚鱗癬群、掌蹠角化症、掌蹠膿疱症。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には使用を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. 高カルシウム血症(頻度不明):高カルシウム血症及び高カルシウム血症によると考えられる臨床症状(口渇、倦怠感、脱力感、食欲不振、嘔吐、腹痛、筋力低下等)があらわれることがあるので、異常が認められた場合には使用を中止し、血中カルシウム値、尿中カルシウム値等の生化学的検査を行い、必要に応じて輸液等の処置を行うこと〔8.1、8.2、9.1.1、9.2腎機能障害患者の項参照〕。11.1.2. 急性腎障害(頻度不明):血中カルシウム増加を伴った急性腎障害があらわれることがあるので、血中カルシウム値及び腎機能を定期的に観察し、異常が認められた場合には使用を中止し、適切な処置を行うこと〔8.1、8.2、9.1.1、9.2腎機能障害患者の項参照〕。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 皮膚:(1%以上)皮膚そう痒、皮膚刺激、紅斑、皮膚剥脱、(0.1〜1%未満)発疹、湿疹、接触皮膚炎、皮膚水疱、皮膚腫脹、皮膚疼痛、毛包炎、皮膚色素沈着、皮膚びらん、皮膚浮腫、皮膚熱感。
2). 腎臓:(0.1〜1%未満)尿中蛋白陽性、血中クレアチニン増加、増殖性糸球体腎炎、(頻度不明)尿路結石、BUN増加。
3). 代謝:(1%以上)血中カルシウム増加、(0.1〜1%未満)血中リン増加、Al−P増加、CK増加、尿中ブドウ糖陽性、血中アルブミン減少、血中カリウム減少。4). 消化器:(0.1〜1%未満)口渇、食欲不振、びらん性胃炎。5). 肝臓:(0.1〜1%未満)γ−GTP増加、AST増加、ALT増加、血中ビリルビン増加、尿中ウロビリン陽性。
6). 血液:(0.1〜1%未満)白血球数減少、白血球数増加、血小板数減少。7). 筋・骨格系:(0.1〜1%未満)背部痛。
慎重投与
1.高カルシウム血症及びその恐れのある患者[本剤の投与により更に血中カルシウム値を上昇させる恐れがある]。
2.腎機能低下している患者[血中カルシウム値を上昇させる恐れがある]。
重要な基本的な注意
8.1. 本剤は活性型ビタミンD3誘導体製剤であり、血中カルシウム値上昇する可能性があり、また、高カルシウム血症に伴い、急性腎障害の報告があるため、本剤の使用に際しては、血中カルシウム値及び腎機能(血中クレアチニン、BUN等)の検査を定期的(開始2〜4週後に1回、その後は適宜)に行うこと(なお、正常域を超えた場合には減量又は使用を中止すること)〔9.1.1、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1、11.1.2参照〕。
8.2. 皮疹が広範囲にある場合や、皮疹重症度が高く皮膚のバリア機能が低下して本剤の経皮吸収が増加する可能性のある患者では、高カルシウム血症が発現しやすく、急性腎障害に至る可能性もあるため、本剤を少量から使用開始し、観察を十分に行い、血中カルシウム値及び腎機能の検査を定期的に行うこと〔9.1.1、9.2腎機能障害患者の項、11.1.1、11.1.2参照〕。
8.3. 本剤の密封療法(ODT)における安全性は確立していない。(特定の背景を有する患者に関する注意)
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 高カルシウム血症及びそのおそれのある患者:本剤の使用によりさらに血中カルシウム値を上昇させるおそれがある〔8.1、8.2、11.1.1、11.1.2参照〕。
腎機能障害患者
腎機能障害患者:血中カルシウム値を上昇させるおそれがある〔8.1、8.2、11.1.1、11.1.2参照〕。
相互作用
10.2. 併用注意:
1). ビタミンD及びビタミンD誘導体(アルファカルシドール、カルシトリオール、カルシポトリオール等)、PTH製剤(テリパラチド、アバロパラチド酢酸塩)[高カルシウム血症があらわれるおそれがある(相加作用)]。
2). カルシウム製剤<経口>(乳酸カルシウム水和物<経口>、炭酸カルシウム<経口>等)[高カルシウム血症があらわれるおそれがある(本剤は腸管でのカルシウムの吸収を促進させる)]。
高齢者
使用が過度にならないように注意すること(一般に生理機能が低下している)。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には使用しないことが望ましい(動物実験(ラット)では胎盤を通じて胎仔へ移行することが認められている)。(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(周産期及び授乳期の静脈内投与試験(ラット)において、1.1μg/kg/日投与で出生仔体重増加抑制がみられ、また、分娩後哺乳中のラットに静脈内投与したとき、乳汁中への移行を示唆する報告がある)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
過剰投与
13.1. 症状
過量投与時、高カルシウム血症が発現する可能性がある(高カルシウム血症の主な症状は、口渇、倦怠感、脱力感、食欲不振、嘔気、嘔吐、腹部膨満感、腹痛、頭痛、めまい、筋肉痛、筋力低下等である)〔14.1参照〕。
13.2. 処置
過量投与時、直ちに使用を中止すること(血中カルシウム値、尿中カルシウム値等の生化学的検査を行い、必要に応じて輸液等の処置を行うこと)。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
誤用(内服等)防止のため、薬剤の保管に十分注意させること。特に、小児の手のとどかない所に保管させること。万一、誤って内服した場合には、高カルシウム血症等の全身性の副作用があらわれることがあるので、医療機関を受診するなど、適切な処置を受けるよう指導すること〔13.1参照〕。
14.2. 薬剤使用時の注意
14.2.1. 使用部位
(1). 本剤は患部にのみ使用し、正常皮膚部位には使用しないこと。(2). 皮膚以外の部位<眼・粘膜>には使用しないこと。14.2.2. 使用時:本剤に触れた手で傷口等に触れないように注意すること。14.2.3. 使用後:本剤塗擦後は手をよく洗うこと。
その他の注意
15.2. 非臨床試験に基づく情報
15.2.1. 光苛酷試験において、本剤は紫外線(太陽光線を含む)により分解された。
15.2.2. がん原性試験においてラット(F344/DuCrj)に1日1回24カ月間経皮投与した結果、副腎において褐色細胞腫の発生頻度が増加した。一部、副腎被膜への浸潤を示す例が認められたが、副腎近隣組織への浸潤や遠隔転移を示すものはなかった。また、マウスでは1日1回18カ月間経皮投与で発がん性は認められなかった。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 マキサカルシトール軟膏25μg/g「CH」
有効成分 1g中
マキサカルシトール 25μg
添加剤 白色ワセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、無水エタノール
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3.2 製剤の性状
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販売名 マキサカルシトール軟膏25μg/g「CH」
色調・剤形 白色半透明の軟膏剤
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薬効薬理
18.1 作用機序
ビタミンD受容体に結合し、表皮角化細胞に対する分化誘導作用や異常増殖抑制作用、IL‐6の分泌抑制作用を示すことにより、尋常性乾癬に対して有効性を発揮する。
18.2 受容体親和性
マキサカルシトールは、ヒト表皮角化細胞のビタミンD受容体に対して親和性を示した(in vitro)。また、ヒト・ビタミンD結合蛋白との親和性はカルシトリオールより低く、表皮角化細胞の細胞核内により多く移行することが認められた(in vitro)。
18.3 表皮角化細胞に対する増殖抑制作用
マキサカルシトールは、ヒト表皮角化細胞の増殖を抑制した(in vitro)。さらに、尋常性乾癬患者の皮膚を用いた器官培養系においても、表皮角化細胞の増殖を抑制し、表皮肥厚を改善した(in vitro)。また、尋常性乾癬患者への外用により表皮におけるDNA合成ならびに核分裂を低下させ、細胞増殖の異常亢進を抑制することが示唆された。
18.4 表皮角化細胞に対する分化誘導作用
マキサカルシトールは、表皮角化細胞の分化マーカーであるインボルクリンmRNAの発現を促進した(in vitro)。また、尋常性乾癬患者への外用により、有棘層より上位で発現する分化型ケラチンを増加させるとともに表皮細胞分化マーカーであるロリクリンの発現を誘導した。
18.5 サイトカイン、リンパ球等に対する作用
マキサカルシトールは、IL‐1α刺激によるヒト表皮角化細胞のIL‐6の分泌を濃度依存的に抑制し、サクシニル・コンカナバリンAで刺激したマウスの脾臓リンパ球の増殖を濃度依存的に抑制した(in vitro)。また、尋常性乾癬患者への外用により多形核白血球やTリンパ球等の炎症細胞の浸潤を減少させた。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 尋常性乾癬患者125例にマキサカルシトール軟膏(マキサカルシトールとして25μg/g)1回適量(7gまで)を1日2回26週間塗擦したところ注1)、24例に血清中マキサカルシトール(50.4〜744.0pg/mL)を検出したが、他は検出限界(50pg/mL)以下であった。
16.1.2 尋常性乾癬患者4例にマキサカルシトール軟膏(マキサカルシトールとして50μg/g注2))4gを1日1回3日間塗擦したところ、得られたパラメータは次のとおりであった(外国人データ)。
表 薬物動態学的パラメータ
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Tmax(h) Cmax(pg/mL) AUC(pg・h/mL) t1/2(h)
1日目 3.0 591±285 4177±2369.1 3.9
3日目 3.5 475±188 2452±1218 2.2
平均±標準偏差
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16.2 吸収
健康成人男子12例の左前腕内側部にマキサカルシトール軟膏を塗布(38mg)し、塗布8時間後(定常状態)における角質内薬物濃度を測定した。その結果、角質内薬物濃度は、11.1±3.4μg/gであった。
16.4 代謝
ラット腎ミトコンドリアを用いた代謝試験において、マキサカルシトールは活性型ビタミンD3の代謝酵素であるCYP24により代謝されると考えられた(in vitro)。ヒトP450発現系を用いた代謝試験において、マキサカルシトールはCYP3A4によって代謝された(in vitro)。
16.5 排泄
尋常性乾癬患者4例に[3H]マキサカルシトールを用いた試験では、塗擦6時間後に拭き取った軟膏中に42.6%の放射能が検出され、また、塗擦168時間までに排泄された放射能は、尿中に投与量の15.2%、糞中に11.4%であった。血清中には未変化体及びO‐脱アルキル体が認められたが、尿及び糞中には未変化体は認められなかった(外国人データ)。
注1)本剤の1日最大使用量は10gである。
注2)本剤の承認規格は25μg/g軟膏である。
16.8 その他
16.8.1 生物学的同等性試験
マキサカルシトール軟膏25μg/g「CH」とオキサロール軟膏25μg/gをそれぞれ健康成人男子背部に単回経皮投与した時の皮膚薬物動態学的試験を実施した。同等性評価パラメータである定常状態における角層中マキサカルシトール量を測定し、90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された。
16.8.2 暴露量試験
マキサカルシトール軟膏25μg/g「CH」とオキサロール軟膏25μg/gをそれぞれウサギ損傷皮膚に単回経皮投与し、得られた各採血時間の血漿中マキサカルシトール濃度から求めたAUCについて比較検討したところ、平均値の差の90%信頼区間の上限がlog(1.25)を下回り、マキサカルシトール軟膏25μg/g「CH」の血漿中暴露量はオキサロール軟膏25μg/gと比較して『同等以下』であった。