特徴
ビタミンB1、B6、B12配合剤。
専門医コメント
神経性食欲不振症、Refeeding症候
用法・用量
通常成人1日1回10mLを緩徐に静脈内注射する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
禁忌
本剤及びチアミンジスルフィドに対し過敏症の既往歴のある患者。
適応
湿疹・皮膚炎群、口唇炎・口角炎・口内炎のうち、本剤含有ビタミン類の欠乏又は代謝障害が推定される場合
効果・効能
1). 本剤に含まれるビタミン類の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦など)。
2). 次記疾患のうち、本剤に含まれるビタミン類欠乏又はビタミン類代謝障害が関与すると推定される場合:神経痛、筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・末梢神経麻痺。効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック(0.1%未満)、アナフィラキシー(頻度不明):全身皮膚潮紅、そう痒感、血圧低下、胸内苦悶、呼吸困難、痙攣等があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(0.1%以上)発疹、(0.1%未満)そう痒感。2). 消化器:(0.1%以上)悪心・嘔吐。
3). 投与部位:(0.1%以上)局所疼痛。
重要な基本的な注意
特定の背景を有する患者に関する注意
相互作用
10.2. 併用注意:
レボドパ[レボドパの有効性を減じることがある(ピリドキシン塩酸塩がレボドパの脱炭酸化を促進し、脳内作用部位への到達量を減少させる)]。
妊婦・授妊婦
妊婦・産婦・授乳婦等への投与
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療中の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない]。2.授乳婦に投与する場合には授乳を中止させる[授乳中の投与に関する安全性は確立していない]。
小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
適用上の注意
14.1. 薬剤調製時の注意
本剤は、アミノ酸製剤と混合した場合、ビタミンの分解が促進されることがあるので注意すること。
14.2. 薬剤投与時の注意
静脈内投与により血管痛を起こすことがあるので、注射速度はできるだけ遅くすること。
保管上の注意
2〜8℃保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 ネオラミン・スリービー液(静注用)
有効成分 1アンプル10mL中
チアミンジスルフィド 50mg
ピリドキシン塩酸塩 100mg
ヒドロキソコバラミン酢酸塩
ヒドロキソコバラミンとして 1mg
添加剤 pH調節剤
等張化剤
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3.2 製剤の性状
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販売名 ネオラミン・スリービー液(静注用)
性状 淡紅色〜紅色の澄明な注射液
pH 3.0〜5.0
浸透圧比(生理食塩液に対する比) 約1
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薬効薬理
18.1 作用機序
18.1.1 チアミンジスルフィド
生体内でビタミンB1として作用する。チアミンはATP存在下にthiamine diphosphateに変換し、生理作用をあらわす。糖質、タンパク質、脂質代謝で、またTCAサイクルの関門として重要な位置を占めるピルビン酸の脱炭酸反応やTCAサイクル内のα‐ケトグルタル酸の脱炭酸反応に関与している。また、トランスケトラーゼの補酵素として五炭糖リン酸回路での糖代謝や核酸代謝にも関与している。
18.1.2 ピリドキシン塩酸塩
ビタミンB6である。生体内で主としてリン酸ピリドキサール(ビタミンB6の補酵素型)となって作用する。アミノ酸・タンパク代謝酵素群の補酵素として各種アミノ酸・タンパクの分解・生合成に重要な役割を果たす。また、脂肪代謝にも関与し、特に不飽和脂肪酸の生体内利用の際に必要とされる。
18.1.3 ヒドロキソコバラミン酢酸塩
ビタミンB12である。多くの代謝系に関与し、正常な発育、造血、神経組織のミエリン鞘形成などに重要な役割を果たしている。DNA合成過程で必要な葉酸を活性化することにより、間接的にDNA合成に関与するほか、メチルマロニルCoAからサクシニルCoAへの転換反応に関与することによって造血機能を促進する。また、還元型SH基の保護、メチオニン合成時の役割を介してタンパク合成にも影響を及ぼし、髄鞘の形成促進作用、グリア細胞での核酸・タンパク代謝を改善する。眼に対しては、酸素消費量を増し、ATP産生を増大させる。調節性眼精疲労を改善する。
18.2 神経再生における効果
ラットを用い、坐骨神経圧挫による神経障害の治癒過程に対するネオラミン・スリービー液の影響を電気生理学的方法で検討した結果、ネオラミン・スリービー液は圧挫神経の変性進行には影響を与えないが、神経支配の回復を促進すると考えられる。
18.3 アクリルアミド中毒神経炎に対する効果
18.3.1 チアミンジスルフィド、ピリドキシン塩酸塩、ヒドロキソコバラミン及びネオラミン・スリービー液はアクリルアミド中毒ラットの死亡を抑制するが、その作用はネオラミン・スリービー液が最も強いと考えられる。アクリルアミド中毒の異常症状の発現に対しては各ビタミン及びネオラミン・スリービー液は明らかな抑制作用を示さなかったが、アクリルアミド中止後の症状回復に対しては、4群ともに回復促進が認められ、特にネオラミン・スリービー液群において著明であった。
18.3.2 ラットの成長に伴う神経伝達速度の上昇に対するアクリルアミドの阻害作用に対し、ネオラミン・スリービー液は有意に抑制し(第4週)、また、アクリルアミド投与中止後の回復を促進した。
18.4 神経病理学的検索
ラットのアクリルアミド神経炎に対するビタミンB群の抑制効果を組織像の定量的研究により検討した結果、有髄線維の変形度及び髄鞘面積と有髄線維面積の比率においてネオラミン・スリービー液はアクリルアミドによる変化を有意に抑制し、有髄線維横断面積の分布、間質面積、単位面積中の変性有髄線維数及びシーワン細胞核数、電顕・光顕的観察、腰髄前角細胞内のRNA量においては抑制の傾向が認められた。
薬物動態
16.1 血中濃度
健康男子6名にチアミンジスルフィド(TDS)及びビタミンB1塩酸塩(B1‐HCl)を静脈注射し、血中ビタミンB1濃度を測定した。血中ビタミンB1値の持続時間はTDS投与群でB1‐HCl投与群に比して長かった。
全血中総ビタミンB1含量(静注におけるTDSとB1‐HClの比較)
6人のヒトの平均値と標準偏差を経過時間ごとに図示した。
<<図省略>>
16.5 排泄
健康男子6名にチアミンジスルフィド(TDS)及びビタミンB1塩酸塩(B1‐HCl)を静脈注射し、尿中ビタミンB1排泄量を測定した。尿中ビタミンB1排泄量はTDS投与群でB1‐HCl投与群に比して低かった。
総ビタミンB1尿中排泄曲線(静注におけるTDSとB1‐HClの比較)
<<図省略>>