特徴
鉄剤の錠剤、顆粒剤。
専門医コメント
経口鉄剤の中で最も使用されている薬剤であ
用法・用量
通常成人は、鉄として1日100〜200mg(2〜4錠)を1〜2回に分けて食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
禁忌
2.1. 鉄欠乏状態にない患者[過量投与にならないよう注意する(過剰症を起こすおそれがある)]。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
鉄欠乏性貧血
効果・効能
鉄欠乏性貧血。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 消化器:(5%以上)悪心・嘔吐、(0.1〜5%未満)上腹部不快感、胃痛・腹痛、下痢、食欲不振、便秘、胸やけ、(0.1%未満)腹部膨満感。2). 過敏症:(0.1〜5%未満)発疹、(0.1%未満)そう痒感、(頻度不明)光線過敏症。
3). 肝臓:(0.1〜5%未満)AST上昇、ALT上昇等、(0.1%未満)Al−P上昇等。
4). 精神神経系:(0.1%未満)頭痛、めまい。
5). その他:(0.1%未満)倦怠感、浮腫。
慎重投与
1.消化性潰瘍、慢性潰瘍性大腸炎、限局性腸炎等の胃腸疾患のある患者[病態を悪化させることがある]。
2.発作性夜間血色素尿症の患者[溶血を誘発し病態を悪化させることがある]。3.鉄含有製剤投与中(鉄剤投与中、MRI用肝臓造影剤投与中等)の患者[鉄過剰症を起こす恐れがある]。
重要な基本的な注意
8.1. 本剤投与中は、適宜血液検査を実施し、過量投与にならないよう注意する。(特定の背景を有する患者に関する注意)
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 消化性潰瘍、慢性潰瘍性大腸炎、限局性腸炎等の胃腸疾患のある患者:病態を悪化させることがある。
9.1.2. 発作性夜間血色素尿症の患者:溶血を誘発し病態を悪化させることがある。
9.1.3. 鉄含有製剤投与中(鉄剤投与中、MRI用肝臓造影剤投与中等)の患者:鉄過剰症を起こすおそれがある。
相互作用
10.2. 併用注意:
1). セフジニル<経口>[セフジニルの吸収を約10分の1に阻害することがあるので、3時間以上間隔を空けて本剤を投与すること(相手薬剤と高分子鉄キレートを形成し、相手薬剤の吸収を阻害する)]。
2). キノロン系抗菌剤<経口>(塩酸シプロフロキサシン<経口>、ノルフロキサシン<経口>、トスフロキサシントシル酸塩水和物<経口>、スパルフロキサシン<経口>等)[抗菌剤の吸収を阻害することがある(相手薬剤と高分子鉄キレートを形成し、相手薬剤の吸収を阻害する)]。
3). テトラサイクリン系抗生物質<経口>[相互に吸収を阻害する(相手薬剤と高分子鉄キレートを形成し、相互に吸収を阻害する)]。
4). 甲状腺ホルモン製剤<経口>(レボチロキシンナトリウム水和物<経口>、リオチロニンナトリウム<経口>等)[チロキシンの吸収を阻害するおそれがある(相手薬剤と高分子鉄キレートを形成し、相手薬剤の吸収を阻害するおそれがある)]。5). 制酸剤[鉄の吸収を阻害することがある(in vitro試験において、pHの上昇により、難溶性の鉄重合体を形成することが報告されている)]。6). タンニン酸を含有する食品[鉄の吸収を阻害するおそれがある(in vitro試験において、タンニン酸と高分子鉄キレートを形成することが報告されている)]。
高齢者
減量するなど注意すること(一般に高齢者では生理機能が低下している)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
臨床検査結果に及ぼす影響
潜血反応で偽陽性となることがある。
過剰投与
13.1. 症状
過量投与時、主な症状は胃粘膜刺激による悪心、嘔吐、腹痛、血性下痢、吐血等の消化器症状である(また、頻脈、血圧低下、チアノーゼ等がみられる)、重症の場合は、昏睡、ショック、肝壊死、肝不全に至ることがある。
13.2. 処置
過量投与時、服用初期には催吐、胃洗浄が有効である(その他に下剤、鉄排泄剤(デフェロキサミン)等の投与を行う)。過量投与時、血圧低下や循環虚脱があらわれた場合には、昇圧剤、輸液等による対症療法を行う。
適用上の注意
14.1. 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜に刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
15.1.1. 本剤の投与により便が黒色を呈することがある。15.1.2. 本剤の投与により歯又は舌が一時的に着色(茶褐色等)することがあるが、その場合には、重曹等で除去する。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
15.2.1. 動物実験において、大量のアロプリノールとの併用で肝の鉄貯蔵量が増加したとの報告がある。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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有効成分[1錠中] クエン酸第一鉄ナトリウム 470.9mg
(鉄として50mg)
添加剤 カルナウバロウ、結晶セルロース、酸化チタン、ステアリン酸Mg、デンプングリコール酸Na、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース
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3.2 製剤の性状
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外形 <<図省略>> <<図省略>> <<図省略>>
剤形 フィルムコーティング錠
性状 白色
直径(mm) 10.1
厚さ(mm) 5.5
重量(mg) 約546
識別コード SW 344
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薬効薬理
18.1 作用機序
吸収された鉄は血漿トランスフェリンと結合し、体内を循環する。トランスフェリンに結合した鉄は骨髄にて赤芽球にとりこまれ、ヘモグロビン合成に利用される。
18.2 胃酸分泌に影響されることなく血清鉄を上昇させる
健康なラット及びウサギ並びに貧血ウサギにおいて、クエン酸第一鉄ナトリウムは硫酸鉄水和物あるいはフマル酸第一鉄とほぼ同等の血清鉄上昇効果を示した。イヌにおいて、クエン酸第一鉄ナトリウム錠は食後投与でも血清鉄の上昇を示した。
さらに、クエン酸第一鉄ナトリウムの血清鉄上昇効果は、胃酸分泌を抑制したラットにおいても認められ、胃酸の影響を比較的受けにくい。
18.3 ヘモグロビンと貯蔵鉄の回復により貧血状態を改善する
鉄欠乏食で飼育した瀉血貧血ラットに、クエン酸第一鉄ナトリウム30mg/kg/日を18日間連続投与した後、顕著なヘモグロビン回復効果が認められた。また、肝臓及び脾臓中の鉄含有量がそれぞれ対照に比べて有意に上昇し、貯蔵鉄補充効果が認められた。さらに血清鉄及び血清鉄飽和率の低下並びに総鉄結合能の上昇を改善した。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 血清鉄濃度
健康成人男子18名に、クエン酸第一鉄ナトリウム錠2錠(鉄として100mg)を食後単回経口投与した時の血清鉄の推移は投与1時間後から上昇がみられ、3〜4時間後にピークに達し、12時間後に投与前値に復した。
クエン酸第一鉄ナトリウム錠2錠を食後経口投与後の血清鉄濃度
Δ:投与前値に対する増加分
<<図省略>>
経口投与時の薬物動態パラメータ
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ΔCmax(μg/dL) tmax(hr) ΔAUC(μg・hr/dL)
69.0±12.7 3.9±0.5 605±161
(Mean±S.E.、n=18)
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クエン酸第一鉄ナトリウム錠投与24時間後の血清鉄濃度が投与前より低下しているが、これは他の鉄剤でも同様にみられる現象で、生理的な日内変動の範囲内にあり、血清中の鉄の貯蔵鉄プールへの移行が高まったことによるものと考えられる。
16.1.2 生物学的同等性試験
クエン酸第一鉄Na錠50mg「サワイ」とフェロミア錠50mgを健康成人男子にそれぞれ2錠(鉄として100mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、血清鉄濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された。
各製剤2錠投与時の薬物動態パラメータ
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Cmax(μg/dL) Tmax(hr) T1/2(hr) AUC0−12hr(μg・hr/dL)
クエン酸第一鉄Na錠50mg「サワイ」 244±44 3.4±1.5 6.6±2.0 2351±474
フェロミア錠50mg 240±68 3.6±1.1 6.5±3.3 2271±635
(Mean±S.D.)
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<<図省略>>
血清中濃度ならびにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.3 分布
16.3.1 胎児への移行
クエン酸第一鉄ナトリウムは動物実験(妊娠ラット)において、血中、胎盤、胎児、羊水中への吸収、移行が類薬(硫酸鉄水和物)に比べて良好であった。
16.3.2 乳汁中への移行
血中から乳汁中への鉄の移行については、血中のトランスフェリン鉄が乳汁中へ移行した後、ラクトフェリンとなる。なお、クエン酸第一鉄ナトリウムは、動物実験(授乳ラット)において、乳汁中への移行が類薬(硫酸鉄水和物)に比べて良好であった。