特徴
予防投与可能な持続型のG-CSF製剤。
専門医コメント
発熱性好中球減少症(FN)を予防する目的
用法・用量
通常、成人にはがん化学療法剤投与終了後の翌日以降、ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)として、3.6mgを化学療法1サイクルあたり1回皮下投与する。
禁忌
2.1. 本剤の成分又は他の顆粒球コロニー形成刺激因子製剤に過敏症の患者。2.2. 骨髄中の芽球が十分減少していない骨髄性白血病の患者及び末梢血液中に骨髄芽球の認められる骨髄性白血病の患者〔8.4、11.1.4参照〕。
用法・用量に関連する注意
がん化学療法剤の投与開始10日前から投与終了後24時間以内に本剤を投与した場合の安全性は確立していない。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
癌化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制
効果・効能
がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制。
効果・効能に関連する注意
5.1. 臨床試験に組み入れられた患者における発熱性好中球減少症発現のリスク等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと〔17.1.1、17.1.2参照〕。5.2. 本剤を使用する際には、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)〔8.1、9.1.1、9.1.2参照〕。
11.1.2. 間質性肺疾患(0.5%):肺臓炎、肺障害等の間質性肺疾患が発現又は間質性肺疾患増悪することがあるので、発熱、咳嗽、呼吸困難及び胸部X線検査異常等が認められた場合には、副腎皮質ホルモン剤の投与等を考慮し、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。
11.1.3. 急性呼吸窮迫症候群(頻度不明):急速に進行する呼吸困難、低酸素血症、両側性びまん性肺浸潤影等の胸部X線異常等が認められた場合には、呼吸管理等の実施を考慮し、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。11.1.4. 芽球の増加(頻度不明):急性骨髄性白血病において、芽球増加を促進させることがある〔2.2、8.4参照〕。
11.1.5. 脾腫(0.3%)・脾破裂(頻度不明):脾臓の急激な腫大が認められた場合には、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと〔8.3参照〕。11.1.6. 毛細血管漏出症候群(頻度不明):低血圧、低アルブミン血症、浮腫、肺水腫、胸水、腹水、血液濃縮等が認められた場合には、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。
11.1.7. Sweet症候群(頻度不明)。
11.1.8. 皮膚血管炎(頻度不明)。
11.1.9. 大型血管炎(大動脈炎症、総頸動脈炎症、鎖骨下動脈炎症等の炎症)(頻度不明):発熱、CRP上昇、大動脈壁肥厚等が認められた場合には、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 皮膚:(5%以上)発疹、(1〜5%未満)じん麻疹、紅斑、皮膚そう痒症、(1%未満)多形紅斑、皮膚剥脱。
2). 筋・骨格:(5%以上)背部痛、関節痛、筋肉痛、(1〜5%未満)骨痛、四肢痛、(1%未満)筋骨格痛。
3). 消化器:(1〜5%未満)下痢、便秘、腹痛、腹部不快感、悪心、嘔吐、口内炎。
4). 肝臓:(5%以上)ALT上昇、AST上昇、(1〜5%未満)肝機能異常、血中ビリルビン増加、γ−GTP増加。
5). 血液:(5%以上)白血球増加、好中球増加、リンパ球減少、(1〜5%未満)貧血、血小板減少、白血球減少、(1%未満)単球増加。
6). 代謝及び栄養:(1〜5%未満)電解質異常(カリウム異常、カルシウム異常、リン異常、クロール異常、ナトリウム異常)、高血糖、食欲減退。7). 精神神経系:(5%以上)頭痛、(1〜5%未満)味覚異常、めまい、異常感覚、(1%未満)感覚鈍麻、不眠症。
8). 呼吸器:(1%未満)口腔咽頭痛、咳嗽、呼吸困難。9). 腎臓:(頻度不明)糸球体腎炎。
10). その他:(5%以上)LDH上昇、発熱、倦怠感、Al−P上昇、(1〜5%未満)潮紅、浮腫、CRP上昇、疼痛、胸痛、(1%未満)血中アルブミン減少、尿酸増加、注射部位反応(注射部位疼痛を含む)。
重要な基本的な注意
8.1. 過敏症等の反応を予測するために、使用に際してはアレルギー既往歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと〔9.1.1、9.1.2、11.1.1参照〕。8.2. 本剤投与により骨痛、背部痛等が発現することがあるので、このような場合には非麻薬性鎮痛剤を投与するなどの適切な処置を行うこと。8.3. 本剤投与により脾腫、脾破裂が発現することがあるので、血液学的検査値の推移に留意するとともに、腹部超音波検査等により観察を十分に行うこと〔11.1.5参照〕。
8.4. 急性骨髄性白血病患者では本剤投与により芽球増加を促進させることがあるので、定期的に血液検査及び骨髄検査を行うこと〔2.2、11.1.4参照〕。8.5. 海外観察研究において、がん化学療法(単独又は放射線療法との併用)とともにペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)又はフィルグラスチム(遺伝子組換え)が使用された乳癌又は肺癌患者では骨髄異形成症候群又は急性骨髄性白血病のリスクが増加したとの報告がある。本剤と骨髄異形成症候群又は急性骨髄性白血病の因果関係は明らかではないが、本剤の投与後は患者の状態を十分に観察すること。8.6. 本剤の使用にあたっては、主な副作用、使用時の注意点、廃棄方法等を患者等に対して十分に説明し、理解を得た上で使用を開始すること。適用後、本剤による副作用が疑われる場合や、デバイスの破損、故障等が発生した場合には、速やかに医療機関に連絡をするよう、患者等に指導すること。
特定の背景を有する患者に関する注意
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 薬物過敏症の既往歴のある患者〔8.1、11.1.1参照〕。9.1.2. アレルギー素因のある患者〔8.1、11.1.1参照〕。
高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能(造血機能、肝機能、腎機能等)が低下している)。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
適用上の注意
14.1. デバイス装着前の注意
14.1.1. デバイスの使用にあたっては、必ず取扱説明書を熟読すること。14.1.2. デバイスの装着は、がん化学療法剤投与終了後に実施すること。14.1.3. 使用する30分前にデバイスを冷蔵庫から取り出し、外箱に入れたままの状態で室温に戻すこと。
14.1.4. 使用前に薬液が無色で澄明であり、異物がないことを機器本体の薬液確認窓から確認し、異常が認められる場合には使用しないこと。14.2. デバイス装着時の注意
14.2.1. 本剤を投与する際、必ず付属の穿刺部を使用すること。14.2.2. 腹部に穿刺・装着すること。
14.2.3. 皮膚に損傷・発疹・ざ瘡等のある部位、ベルト周り、屈伸等により圧迫される部位、体側面、肋骨の上、凹凸のある部位等への穿刺・装着はしないこと。14.2.4. 軟膏等を塗布した皮膚や、体毛が多い部分にデバイスを装着しないこと。
14.3. その他
14.3.1. 本剤の投与が正常に完了しなかったことが確認された場合には、本剤の再投与又は他の顆粒球コロニー形成刺激因子製剤の投与に切り替える等の適切な処置を行うこと。
取扱い上の注意
20.1. デバイスの包装が破損している場合、デバイスや付属の穿刺部にひびや破損がある場合は使用しないこと。
20.2. デバイスを床に落下させたり、硬いものに強くぶつけたりする等デバイスに強い衝撃が加えられた場合には使用しないこと。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
15.1.1. 本剤の国内臨床試験において、悪性リンパ腫患者での骨髄異形成症候群発現が報告されている(0.3%、2/632例)。
15.1.2. 国内の医療情報データベースを用いた疫学調査において、本剤の投与後に血小板減少<5.0×10の4乗/μL未満>のリスクが増加したとの報告がある。15.1.3. 本剤の国内臨床試験において、本剤に対する抗体産生が報告されている。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
顆粒球コロニー形成刺激因子が、in vitroあるいはin vivoで数種のヒト膀胱癌細胞株に対し増殖促進傾向及び骨肉腫細胞株に対し増殖促進傾向を示したとの報告がある。
保管上の注意
2〜8℃に保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 ジーラスタ皮下注3.6mgボディーポッド
容量 1筒 0.36mL
有効成分 ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え) 3.6mg
添加剤 D‐ソルビトール 18mg
氷酢酸 0.216mg
水酸化ナトリウム 適量
ポリソルベート20 0.0144mg
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3.2 製剤の性状
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販売名 ジーラスタ皮下注3.6mgボディーポッド
色・性状 無色澄明の液
pH 3.7〜4.3
浸透圧比 約1(生理食塩液対比)
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薬効薬理
18.1 作用機序
本剤は骨髄中の好中球前駆細胞に存在する顆粒球コロニー形成刺激因子受容体に結合し、好中球前駆細胞から好中球への分化を促し、末梢血中の好中球数を増加させると推察される。
18.2 薬理作用
18.2.1 好中球前駆細胞の分化促進作用
in vitroコロニー形成試験において、ヒト由来のCD34陽性細胞及びマウス由来の骨髄細胞を本剤存在下で培養することにより、好中球前駆細胞の分化が促進された。
18.2.2 好中球減少に対する作用
シクロホスファミド投与により末梢血の好中球減少が誘導されたマウスに本剤を投与することにより、好中球減少が抑制された。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
(1)肺癌患者
がん化学療法施行後の肺癌患者に本剤30、60及び100μg/kg注)を単回皮下投与したときの血清中濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりであった。Cmax及びAUC0−∞は投与量比以上に増加し、本剤の薬物動態は非線形性を示した。
肺癌患者に単回皮下投与したときの血清中濃度推移(平均値+標準偏差)
<<図省略>>
肺癌患者に単回皮下投与したときの薬物動態パラメータ
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投与量 30μg/kg 60μg/kg 100μg/kg
被験者数 6 6 6
tmax(h) 36.0(8.0、48.1) 47.6(8.0、263.1) 46.8(24.0、141.3)
Cmax(ng/mL) 18.5±14.0 74.2±63.5 157.0±127.3
AUC0−∞(ng・h/mL) 1285±520 5497±4704a) 13364±9187
t1/2(h) 57.4±38.7 44.8±21.1a) 38.4±10.5
平均値±標準偏差(tmaxは中央値(最小値、最大値))
a)n=5
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(2)悪性リンパ腫患者
がん化学療法施行後の悪性リンパ腫患者に本剤1.8、3.6及び6.0mg注)を単回皮下投与したときの血清中濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりであった。Cmax及びAUC0−∞は投与量比以上に増加し、本剤の薬物動態は非線形性を示した。
悪性リンパ腫患者に単回皮下投与したときの血清中濃度推移(平均値+標準偏差)
<<図省略>>
悪性リンパ腫患者に単回皮下投与したときの薬物動態パラメータ
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投与量 1.8mg 3.6mg 6.0mg
被験者数 10 9 9
tmax(h) 110.9(60.2、134.8) 109.8(61.5、113.8) 64.3(13.0、110.6)
Cmax(ng/mL) 47.7±40.5 96.8±64.8 249.2±163.6
AUC0−∞(ng・h/mL) 6177±5818 13393±9349 32501±24807
t1/2(h) 16.9±4.4 29.3±13.5 27.5±7.4
平均値±標準偏差(tmaxは中央値(最小値、最大値))
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
16.1.2 反復投与
悪性リンパ腫患者に、本剤1.8、3.6及び6.0mg注)を化学療法1サイクルごとに単回皮下投与したときの血清中トラフ濃度は、化学療法2〜4サイクルにおいていずれの投与量でも定量下限値(0.2ng/mL)未満であった。
注)本剤の承認用量は1回3.6mgである。
16.3 分布
16.3.1 組織移行性
雄性ラットに125I‐ペグフィルグラスチム100μg/kgを単回皮下投与したとき、甲状腺に高い放射能が認められた。甲状腺を除き、全体として放射能の組織への移行性は低かった。
16.8 その他
本剤の消失には、好中球及び好中球前駆細胞に発現している顆粒球コロニー形成刺激因子受容体を介して本剤が細胞内へ取りこまれ、細胞内分解を受ける経路が寄与していると推察される。