特徴
SLAMF7という蛋白質に結合するヒト化
専門医コメント
多発性骨髄腫に用いられる。抗体医薬ではあ
用法・用量
〈レナリドミド及びデキサメタゾン併用〉
通常、成人にはエロツズマブ(遺伝子組換え)として1回10mg/kgを点滴静注する。28日間を1サイクルとし、最初の2サイクルは1週間間隔で4回(1、8、15、22日目)、3サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)点滴静注する。〈ポマリドミド及びデキサメタゾン併用〉
通常、成人にはエロツズマブ(遺伝子組換え)として、28日間を1サイクルとし、最初の2サイクルは1回10mg/kgを1週間間隔で4回(1、8、15、22日目)、3サイクル以降は1回20mg/kgを4週間間隔(1日目)で点滴静注する。
禁忌
2.1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
用法・用量に関連する注意
7.1. 本剤と併用する抗悪性腫瘍剤の投与に際しては、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、投与すること。
7.2. 本剤単独投与での有効性及び安全性は確立していない。7.3. 本剤投与時にあらわれることがあるinfusion reactionを軽減させるために、本剤の投与前に、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン等)、H2受容体拮抗剤(ラニチジン等)及び解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン等)を投与し、また、本剤と併用するデキサメタゾンは、経口投与(28mgを本剤投与の3〜24時間前に投与)と静脈内投与(デキサメタゾンリン酸エステル8mg(デキサメタゾンとして6.6mg)を本剤投与の45分前までに投与完了)に分割して投与すること〔8.1、11.1.1、17.1.1、17.1.2参照〕。
7.4. 本剤は0.5mL/分の投与速度で点滴静注を開始し、患者の忍容性が良好な場合は、患者の状態を観察しながら、投与速度を段階的に上げることができる(ただし、投与速度は5mL/分を超えないこと)。
[10mg/kg投与時の投与速度]
1). 10mg/kg投与時の第1サイクル(初回投与):投与開始0〜30分は投与速度0.5mL/分、投与開始30〜60分は投与速度1mL/分、投与開始60分以降は投与速度2mL/分。
2). 10mg/kg投与時の第1サイクル(2回目投与):投与開始0〜30分は投与速度3mL/分、投与開始30分以降は投与速度4mL/分。3). 10mg/kg投与時の第1サイクル(3及び4回目投与):投与速度5mL/分。
4). 10mg/kg投与時の第2サイクル以降:投与速度5mL/分。[20mg/kg投与時の投与速度(ポマリドミド及びデキサメタゾン併用時、第3サイクル以降)]
1). 20mg/kg投与時の投与速度(ポマリドミド及びデキサメタゾン併用時、第3サイクル以降)1回目投与:投与開始0〜30分は投与速度3mL/分、投与開始30分以降は投与速度4mL/分。
2). 20mg/kg投与時の投与速度(ポマリドミド及びデキサメタゾン併用時、第3サイクル以降)2回目投与以降:投与速度5mL/分。
7.5. 本剤投与によりinfusion reactionが発現した場合には、次のように、本剤の投与中止、中断、投与速度の変更等を行うこと〔8.1、11.1.1参照〕。
1). *Grade4のinfusion reaction:直ちに本剤の投与を中止すること。
2). *Grade3のinfusion reaction:直ちに本剤の投与を中断し、原則、再投与しないこと。
3). *Grade2のinfusion reaction:直ちに本剤の投与を中断し、Grade1以下に回復の場合は投与速度0.5mL/分とし再投与でき、患者の忍容性が十分確認された場合は30分ごとに0.5mL/分ずつ本剤の投与速度を上げることができるが、infusion reactionが発現した投与回では発現した投与速度を超えないこと(本剤の再投与後に、infusion reactionが再発現した場合には、直ちに本剤の投与を再中断し、中断日に再投与しないこと)。4). *Grade1のinfusion reaction:回復するまで本剤の投与速度を0.5mL/分とすること(本剤の投与速度を0.5mL/分とし、患者の忍容性が十分に確認された場合には、30分ごとに0.5mL/分ずつ本剤の投与速度を上げることができる)。
*:NCI−CTCAE v4.0によりGradeを判定。7.6. デキサメタゾンの投与を延期又は中止した場合には、infusion reactionのリスクを考慮した上で、本剤の投与の可否を判断すること〔11.1.1参照〕。
腎機能用量
腎機能正常者と同じ
適応
再発又は難治性の多発性骨髄腫
効果・効能
再発又は難治性の多発性骨髄腫。
効果・効能に関連する注意
5.1. 本剤による治療は、少なくとも1つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。
5.2. 臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。特に、少なくとも2つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者へのポマリドミド及びデキサメタゾン併用による投与については、他の治療の実施についても慎重に検討すること。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. Infusion reaction(42.9%):発熱、悪寒、高血圧等のinfusion reactionがあらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与中止等の適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること〔7.3、7.5、7.6、8.1参照〕。11.1.2. 感染症:肺炎(7.9%)等の重篤な感染症があらわれることがある。11.1.3. リンパ球減少(9.8%)〔8.2参照〕。11.1.4. 間質性肺疾患(0.8%)。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 全身:(10%以上)疲労(25.9%)、末梢性浮腫、発熱、無力症、(10%未満)胸痛。
2). 消化器:(10%以上)下痢、便秘、悪心。
3). 免疫系:(10%未満)過敏症。
4). 血液:(10%以上)好中球減少(27.2%)、血小板減少、貧血。5). 眼:(10%未満)白内障。
6). 精神・神経系:(10%以上)不眠症、(10%未満)気分変化、感覚鈍麻。7). 感染症:(10%未満)帯状疱疹、鼻咽頭炎、上気道感染。8). 代謝:(10%以上)高血糖。
9). 皮膚:(10%未満)寝汗。
10). 筋骨格:(10%以上)筋痙縮。
11). 呼吸器:(10%未満)咳嗽、湿性咳嗽。
12). その他:(10%未満)体重減少、皮膚有棘細胞癌、基底細胞癌。
警告
本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。
重要な基本的な注意
8.1. Infusion reactionがあらわれることがあるので、本剤の投与は、重度infusion reactionに備えて緊急時に十分な対応のできる準備を行った上で開始すること。Infusion reactionは、本剤の初回投与時に多く報告されているが、2回目以降の本剤投与時にもあらわれることがあるので、本剤投与中は患者の状態を十分に観察すること〔7.3、7.5、11.1.1参照〕。8.2. リンパ球減少等があらわれることがあるので、本剤の投与開始前及び投与中は定期的に血液検査を行い、患者の状態を十分に観察すること〔11.1.3参照〕。(特定の背景を有する患者に関する注意)
生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性及びパートナーが妊娠する可能性のある男性:妊娠する可能性のある女性及びパートナーが妊娠する可能性のある男性には、本剤投与中及び本剤投与後一定期間、適切な避妊を行うよう指導すること〔9.5妊婦の項参照〕。
高齢者
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下している)。
妊婦・授妊婦
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(生殖発生毒性試験は実施されていない(本剤がヒトSLAMF7特異的で動物実験が実施できないため))〔2.2、9.4生殖能を有する者の項参照〕。
授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(本剤のヒト母乳中への移行に関するデータはないが、ヒトIgGは母乳中に移行することが知られている)。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
臨床検査結果に及ぼす影響
本剤は、ヒト化IgGκモノクローナル抗体であることから、血清中Mタンパクの血清蛋白電気泳動法及び免疫固定法の両方で検出される可能性があり、この干渉が、IgGκ型多発性骨髄腫患者において、完全奏効の評価及び完全奏効からの再発の評価に影響を及ぼす可能性があることに注意すること。
適用上の注意
14.1. 薬剤調製時の注意
14.1.1. 18G以下の注射針を装着した注射筒を用いて、17mLの注射用水で溶解し、25mg/mLの濃度とすること。
14.1.2. バイアルを立てた状態でゆっくりと溶液を回転させて溶解し、穏やかに数回反転させる(バイアルは振とうせず、激しく撹拌しないこと)。14.1.3. 完全に溶解した後、5〜10分間静置する。溶解液は無色〜微黄色の澄明〜乳白光を呈する液であり、溶解液に微粒子や変色がないか目視で確認すること(微粒子又は変色が認められた場合には使用しないこと)。
14.1.4. 患者の体重から計算した必要量をバイアルから抜き取り、通常、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈すること。
1). 体重50kg未満:希釈液量150mL。
2). 体重50kg〜90kg:希釈液量250mL。
3). 体重90kg超:希釈液量350mL。
14.1.5. 用時調製し、調製後は速やかに使用すること(また、残液は廃棄すること)。
14.2. 薬剤投与時の注意
14.2.1. 希釈液の全量を、輸液ポンプを用いて、0.22ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与すること。14.2.2. 他の薬剤<注射用水・生理食塩液・5%ブドウ糖注射液を除く>等との配合又は混注はしないこと。
取扱い上の注意
外箱開封後は遮光して保存すること。
その他の注意
15.1. 臨床使用に基づく情報
再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした国際共同第3相試験(CA204004試験)及び国際共同第2相試験(CA204125試験)において、本剤に対する結合抗体がそれぞれ299例中45例(15.1%)、53例中19例(35.8%)で検出され、そのうち中和抗体発現がそれぞれ19例、2例で認められた。
保管上の注意
凍結を避け、2〜8℃で保存。
組成・性状
3.1 組成
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販売名 エムプリシティ点滴静注用400mg
成分 1バイアル中の分量
有効成分 エロツズマブ(遺伝子組換え) 440mg
添加剤 クエン酸ナトリウム水和物 21.5mg
クエン酸水和物 3.17mg
精製白糖 660mg
ポリソルベート80 4.40mg
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本剤はマウスミエローマ(NS0)細胞を用いて製造される。
本剤は調製時の損失を考慮に入れ、1バイアルからエロツズマブ(遺伝子組換え)400mgを注射するに足る量を確保するために過量充填されている。
3.2 製剤の性状
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販売名 エムプリシティ点滴静注用400mg
外観 白色〜微黄白色の塊又は粉末(凍結乾燥製剤)
pH 5.7〜6.3(25mg/mL 日局注射用水)
浸透圧比(生理食塩液に対する比) 約0.5(25mg/mL 日局注射用水)
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薬効薬理
18.1 作用機序
エロツズマブは、ヒトSignaling Lymphocyte Activation Molecule Family Member 7(SLAMF7)に結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。SLAMF7は多発性骨髄腫細胞に高発現することが報告されている。
エロツズマブは骨髄腫細胞膜上のSLAMF7に結合し、Fc受容体を介したナチュラルキラー(NK)細胞との相互作用により抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられる。また、エロツズマブはNK細胞に発現するSLAMF7との結合によりNK細胞を直接活性化する作用を有することが報告されている。
18.2 抗腫瘍作用
エロツズマブはヒト骨髄腫由来OPM2細胞株を移植したマウスにおいて、腫瘍の増殖を抑制した。
薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
多発性骨髄腫患者8例に本剤10mg/kgをレナリドミド及びデキサメタゾンと併用投与したときの血清中濃度推移及び血清中濃度から算出した薬物動態パラメータを次に示す(外国人における成績)。
図1:単回投与時の血清中エロツズマブ濃度推移(平均値+標準偏差)
<<図省略>>
表1:単回投与時の薬物動態パラメータ
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Cmaxa(μg/mL) Tmaxb(h) AUC(0−T)a(μg・h/mL) AUC(INF)a(μg・h/mL) T‐HALFa(h) CLTa(mL/h/kg) Vza(mL/kg)
217(24) 3.23(2.9−4.9) 39559(28) 46401(39) 147(66) 0.215(46) 59.4(30)
a:幾何平均値(変動係数%)、b:中央値(最小値−最大値)
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16.1.2 反復投与
再発又は難治性の日本人多発性骨髄腫患者3例に本剤10mg/kgをレナリドミド及びデキサメタゾンと併用で毎週投与したときの静脈内投与後の血清中濃度と血清中トラフ濃度推移を次に示す。
図2:反復投与時の血清中エロツズマブ濃度推移(平均値+標準偏差)
<<図省略>>
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
多発性骨髄腫患者で腎機能が正常(CrCL90mL/min以上)な患者8例、重度腎機能障害(CrCL30mL/min未満)患者7例及び末期腎不全(CrCL30mL/min未満で血液透析を実施)患者8例に、本剤10mg/kgをレナリドミド及びデキサメタゾンと併用投与したときの本剤の薬物動態を評価した結果、腎機能が正常な患者と、重度腎機能障害及び末期腎不全患者との間に、臨床的に重要な薬物動態の違いは認められなかった(外国人における成績)。