特徴
高浸透圧性脱水作用による速やかで強力な頭
専門医コメント
急性緑内障発作や高眼圧を呈する緊急症に対
用法・用量
通常、成人1回200〜500mLを1日1〜2回、500mLあたり2〜3時間かけて点滴静注する。
投与期間は通常1〜2週とする。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
脳外科手術時の脳容積縮小の目的には、1回500mLを30分かけて点滴静注する。眼内圧下降及び眼科手術時の眼容積縮小の目的には、1回300〜500mLを45〜90分かけて点滴静注する。
禁忌
2.1. 先天性グリセリン代謝異常症、先天性果糖代謝異常症の患者[重篤な低血糖症が発現することがある]〔8.1参照〕。
2.2. 成人発症2型シトルリン血症の患者〔8.2参照〕。
腎機能用量
CCr<60:水・ナトリウム過剰に注意しながら投与
透析患者では血液透析中に100〜400mL
適応
眼内圧降下を必要とする場合、 脳外科手術時の脳容積縮小、 頭蓋内亢進・頭蓋内浮腫の治療など
効果・効能
1). 頭蓋内圧亢進、頭蓋内浮腫の治療。
2). 頭蓋内圧亢進、頭蓋内浮腫の改善による次記疾患に伴う意識障害、神経障害、自覚症状の改善:脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)、脳内出血、くも膜下出血、頭部外傷、脳腫瘍、脳髄膜炎。
3). 脳外科手術後の後療法。
4). 脳外科手術時の脳容積縮小。
5). 眼内圧下降を必要とする場合。
6). 眼科手術時の眼容積縮小。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用
11.1. 重大な副作用
11.1.1. アシドーシス(頻度不明):乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので、症状があらわれた場合には炭酸水素ナトリウム注射液等を投与するなど適切な処置を行うこと。
その他の副作用
11.2. その他の副作用
1). 泌尿器:(0.1〜5%未満)尿潜血反応陽性、(頻度不明)血色素尿、血尿、尿意。
2). 消化器:(0.1〜5%未満)悪心、(頻度不明)嘔吐。3). 代謝異常:(頻度不明)低カリウム血症、高ナトリウム血症、非ケトン性高浸透圧性高血糖。
4). その他:(0.1〜5%未満)倦怠感、(頻度不明)頭痛、口渇、腕痛、血圧上昇。
慎重投与
1.心臓機能障害、循環器系機能障害のある患者[循環血液量を増すことから心臓に負担をかけ、症状が悪化する恐れがある]。
2.腎障害のある患者[水分、塩化ナトリウムの過剰投与に陥りやすく、症状が悪化する恐れがある]。
3.尿崩症の患者[本症には適切な水分、電解質管理が必要であり、本剤の投与により電解質等に影響を与え、症状が悪化する恐れがある]。
4.糖尿病の患者[非ケトン性高浸透圧性昏睡が現れることがある]。
重要な基本的な注意
8.1. 新生児の脳浮腫等の脳浮腫、原因不明の意識障害に対し、本剤を投与する際には、血糖値、血中乳酸値を測定し、糖新生系の異常、特にフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ<FBPase>欠損症の可能性が疑われる場合には投与しないこと。さらに、本剤投与中、投与後においては、血糖低下傾向がないこと、及び意識障害に代表される神経症状、脳浮腫の悪化が生じないことを確認し、悪化がみられた場合は、このような患者への本剤の投与は中止すること。FBPase欠損症の新生児、FBPase欠損症の乳児、FBPase欠損症の幼児に対して、脳浮腫あるいは代謝不全から誘発される脳浮腫予防のために本剤を投与して神経障害(痙攣、頻呼吸、嗜眠等)があらわれ、死亡したとの報告がある〔2.1参照〕。
8.2. 成人発症2型シトルリン血症(血中シトルリンが増加する疾病で、繰り返す高アンモニア血症による異常行動、意識障害等を特徴とする)が疑われた場合には、本剤を投与しないこと。成人発症2型シトルリン血症の患者に対して、脳浮腫治療のために本剤を投与して病態が悪化し、死亡したとの報告がある〔2.2参照〕。8.3. 急性の硬膜下・硬膜外血腫が疑われる患者には、出血源を処理し、再出血のおそれのないことを確認してから本剤を投与すること(血腫の存在を確認することなく本剤を投与すると、頭蓋内圧の下降により一時止血していたものが再び出血することがある)。
8.4. 本剤には塩化ナトリウムが含まれているので、食塩摂取制限の必要な患者に投与する場合には注意すること〔3.1参照〕。
8.5. 乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので注意すること。(特定の背景を有する患者に関する注意)
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1. 心臓機能障害、循環器系機能障害のある患者:循環血液量を増すことから心臓に負担をかけ、症状が悪化するおそれがある。
9.1.2. 尿崩症の患者:本症には適切な水分、電解質管理が必要であり、本剤の投与により電解質等に影響を与え、症状が悪化するおそれがある〔3.1参照〕。9.1.3. 糖尿病の患者:非ケトン性高浸透圧性昏睡があらわれることがある。(腎機能障害患者)
9.2.1. 腎障害のある患者:水分、塩化ナトリウムの過剰投与に陥りやすく、症状が悪化するおそれがある〔3.1参照〕。
高齢者
本剤投与に際しては水・電解質異常に留意し、慎重に投与すること(一般に高齢者では生理機能が低下していることが多い)。
適用上の注意
14.1. 全般的な注意
14.1.1. 眼科手術中に尿意を催すことがあるので、術前に排尿しておくことが望ましい。
14.1.2. 使用時には、感染に対する配慮をすること。14.1.3. 注射針や輸液セットのびん針は、ゴム栓の刻印部(凹部)に垂直にゆっくりと刺すこと(斜めに刺した場合、削り片の混入及び液漏れの原因となるおそれがある)、また、針は同一箇所に繰り返し刺さないこと。
14.1.4. 寒冷期には体温程度に温めて使用すること。14.2. 薬剤投与時の注意
14.2.1. 原則として、連結管を用いたタンデム方式による投与は行わないこと(輸液セット内に空気が流入するおそれがある)。
14.2.2. 容器の目盛りは目安として使用すること。14.2.3. 残液は使用しないこと。
取扱い上の注意
20.1. 液漏れの原因となるので、強い衝撃や鋭利なものとの接触等を避けること。20.2. 次の場合には使用しないこと。
・ 外袋内や容器表面に水滴や結晶が認められる場合には使用しないこと。・ 容器から薬液が漏れている場合には使用しないこと。
・ 性状その他薬液に異状が認められる場合には使用しないこと。・ ゴム栓部のシールやキャップがはずれている場合には使用しないこと。
保管上の注意
室温保存。
組成・性状
3.1 組成
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容量(1袋中) 300mL
有効成分 濃グリセリン 30g
果糖 15g
添加剤 塩化ナトリウム注1) 2.7g
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電解質濃度(mEq/L)
Na+ Cl−
154 154
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注1)[8.4、9.1.2、9.2.1 参照]
3.2 製剤の性状
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性状 無色澄明の液
pH 3.0〜6.0
浸透圧比(生理食塩液に対する比)注2) 5.5〜6.6
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注2)本剤を6倍希釈して測定し、希釈倍数を乗じて求めた。
薬効薬理
18.1 作用機序
〈頭蓋内圧下降(頭蓋内圧亢進、脳浮腫等)〉
グリセリンの高浸透圧性脱水作用に基づき脳水分量を減少させ、頭蓋内圧下降作用を示すとともに脳浮腫の消失、脳局所血流量の増加、さらには脳組織の代謝を亢進させる。
〈眼内圧下降(緑内障、白内障等)〉
頭蓋内圧下降の場合と同様に浸透圧差による脱水作用が考えられるが、その他、前房水及び硝子体液の産生に対し抑制的に働くこと、また一部には房水の隅角又は虹彩面からの排出促進をになっていること等が考えられている。
18.2 薬理作用
〈ヒトにおける作用〉
18.2.1 頭蓋内圧又は眼内圧下降を必要とする患者に濃グリセリン・果糖注射液を静脈内投与した結果、濃グリセリン・果糖注射液は速やかで強い頭蓋内圧下降作用、眼内圧下降作用を示した。
18.2.2 脳卒中の患者に濃グリセリン・果糖注射液又は、glycerinを投与し、局所脳循環を測定したところ、虚血状態から正常状態への血流増加作用がみられ、充血部位から虚血部位への血流再分配作用も認められた。
18.2.3 脳卒中の患者にglycerinを投与したところ、脳浮腫形成における悪循環因子すなわち脳細胞内のエネルギー産生障害因子とされる遊離脂肪酸の減少をもたらすなど脳代謝に関与することが認められた。
〈動物における作用〉
18.2.4 ネコ及びウサギにglycerinを静脈内投与したところ、いずれも脳脊髄液圧下降作用が認められた。
18.2.5 ウサギに濃グリセリン・果糖注射液を静脈内投与したところ、前房内圧及び硝子体内圧の下降作用が認められた。
18.2.6 イヌの硬膜外baloon法及びcold‐injury法により作成した脳障害モデルに濃グリセリン・果糖注射液を静脈内投与したところ、増加している脳水分量の減少をはじめ、脳血流量増加、脳酸素消費量増加、脳組織代謝改善等の作用が認められた。
18.2.7 ネコの実験的脳虚血モデルに濃グリセリン・果糖注射液を静脈内投与し、生理学的・組織学的に検討した結果、脳虚血性障害に対し保護的に作用することが認められた。
薬物動態
16.3 分布
ラットの静脈内14C‐glycerin投与による全身autoradiographyでは、放射能はほぼ全身にわたり分布し、血中・肝における速やかな消失とは異なり脳への移行及び消失は遅れを示した。
16.5 排泄
ラット、ウサギの静脈内14C‐glycerin投与試験の結果、投与した放射能の65%が14CO2として48時間までに呼気中に排泄された。このときの尿中排泄量はラットで13%、ウサギで9%、糞中排泄量は両者ともごくわずかであった。またラットにおける24時間までの胆汁中への排泄率は0.36%であった。